春を告げる山の恵みをいくつご存じか?

sansai1.jpg冬の厳しい信州にも、ようやく空気の温む日が増えてきました。天気の良い休日にはスタッドレスタイヤを履きかえる人の姿も多く見られます。いよいよ本格的な春の訪れ間近です。山々の雪が融けるにしたがって、信州の豊かな大地から新しい生命の息吹が次々と聞こえてくる季節が到来します。そして雪が消えるとすぐに山菜の季節に突入です。そこで、今回は本格的な春の到来を目前に、信州の大自然の贈りものである山の幸、野の幸を紹介しましょう。

実際どこでも良いのですが、あなたが信州の地に降り立ち、そこでぐるりと四方を見まわしてみると、必ずどこかに山が見えます。まさにマウンテン・カントリーの信州は、名実共に山菜の王国とされ、古くからわたしたちのご先祖は、けして全部を採り尽くしたりはせずに、山菜・きのこなど四季折々に自生する山の幸に親しんできました。それが山の掟だったのです。全部を採り尽くせば来年の春にはもうそこには生えてこなくなります。信州の山の春は寂しいものになるでしょう。山菜を求めて山にはいるときには、必ず来年のために子孫をいくつかそのまま残してくることを忘れないようにしてください。ではこれから代表的な信州の山菜を紹介していきますが、さてあなたはいくつ名前をご存知でしょうか? またいくつ味をご存知でしょうか?

山の雪が融けるとそこには

  • フキ フキはキク科の多年生植物です。雪のない地域では2月から採取でき、葉は夏まで採取できます。冬の長い信州で最初に春の訪れを感じさせてくれる山菜で、平地から山地まで幅広く生息しています。雪解けとともに真っ先に姿をあらわす春の使者のフキノトウは、フキみそ・酢の物・天ぷらなどで、茎は煮物やきゃらぶきで、葉柄も天ぷらなどにして食べます。来年のために絶対に根は残してあげてください。

  • コゴミ フキノトウに続いてすぐに芽を吹くのがコゴミ。別の名前をクサソテツといいます。ワラビやゼンマイと同じシダの仲間で、クセがなくて、風味も口当たりもよく、アク抜きをする必要がありません。天ぷら・ごま和えなどで食べると淡泊でおいしいです。群れをつくっていっせいに芽生えてきます。必要なだけをとりましょう。全部採り尽くすのはやめましょう。

  • タラノメ タラノキ(ウコギ科)の枝の先端についた新芽を「タラノメ」として食します。若い枝には刺が目立つので、手袋をしたり、鎌を使って採取する人もいます。タラノキは成長が早く高さは2〜4メートルほどになります。新芽が出るのは4月から1カ月ほど。寒い地方など5月〜6月頃に採取できるところもあります。枝を切り落とすと翌年の成長に影響するので、芽だけを取るようにすることが重要です。タラノキをいじめないように心配りが必要です。食べ方は天ぷらが一般的なほか、和え物や卵とじにして食べることも。

  • コシアブラ タラノキと同じウコギ科の植物で、枝先の新芽の葉が開ききらないものを摘んで食べます。名前の由来は「濾し油」で、この木から樹脂を取り、濾して塗料に用いたことからついた名前だと言われています。高さは16〜20メートルにもなり、山麓から標高2000メートルほどの高地の雑木林などに自生しています。暖かいところでは4月に、普通は5月〜6月が芽吹きの時期です。やはり、天ぷらにして食べるのが一般的かな。

  • ワラビ 山の幸の代表格ともいえる存在。日本列島各地の日当たりの良い山野に自生しています。ウラボシ科の多年草植物で、暖かいところでは3月下旬から取れますが、5〜6月の採取が一般的です。これも必ずいくつかは山にそのまま残してくること。若い茎を食しますが、アクの強い山菜なので、食べるには重曹や木灰を使ってアク抜きすることが必要になります。アク抜きはワラビに含まれる中毒成分を取り除く意味も。ワラビの毒は、プタキロサイドという物質で発ガン性もありますが、アク抜き処理をすることでプタキロサイドはほとんど分解されます。アクを抜いたワラビは、煮物やおひたし、漬物、味噌汁の実などとして食べます。ちなみにインターネツトで読める無料の百科事典ウィキペディアによればワラビ餅の名前の由来もこのワラビからきたものだそうです。

  • ウド ウコギ科の植物でヤマウドと呼ばれることも。暖かいところでは3月の終わりから取れ、通常は5〜6月に取ることが多いです。若い葉は天ぷらなどにし、茎はみそ汁に入れたりゴマ和えにするなどします。「ウドの大木」という言葉はこのウドからきています。ウドは成長が早くすぐに大きくなるが、成長した茎は硬く食用に向かず、ほかに用途のないところから、体ばかり大きくて役にたたない者の例えとして使われたようです。ウドは生命力が強いので多少は深いところから折っても大丈夫。

  • ゼンマイ ゼンマイ科の多年生草木。湿ったところを好んで自生します。だから太いものは沢沿いの急斜面や崖などの危険なところに生えている場合が多いので、ひとりで採りに行くのは避けてください。誰もがそのユニークな渦を巻いた形状で記憶しているはず。食べるところは、まだ葉が開く前の若葉と茎の部分。葉が開いたあとは、繊維が硬くなり食べられなくなります。暖地では4月から取れ、通常は5月〜6月が採取の時期です。綿毛を取り、先端の葉の部分も取り、軸だけにしてから、木灰や重曹を加えたお湯でゆでてアク抜きをし、その後、太陽光にあててよく干した保存用のものを戻して食べます。

  • ネマガリタケ 標高600〜1800メートルほどの山に群生しています。5月中旬から6月末までが旬の時期。昨年5月の当ブログにも書きましたが、ネマガリタケとサバの缶詰を使ったみそ汁は「誰がこの組み合わせを考えたのだろう?」というくらいの絶品なのです。是非とも味わっていただきたいと心から願う次第。また、採れたてをを炭火で焼いて、みそなどを付けて食べるのもいけます。

さて、ここで挙げたのは山菜のほんの一例。春の山里には数百もの山菜が育っています。一方でその種類の豊富さは、見た目が山菜と似ている毒性を持つ植物を採取してしまう危険性の高さを示すものでもあります。あらかじめ山菜採りの注意時事項などをよく確認し、くれぐれも山の恵みを採り尽くすような??未来を自分で摘んでしまうような??愚かな真似はしないで、春の山の鳥のさえずりなど堪能しつつ、信州の大地の春の喜びをお楽しみください。

arrow2.gif フリー百科事典ウィキペディア「山菜」の項

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