食育・健康

野山の旬をいただく~春編~ 「仙人」と食べる摘草料理

野山の旬をいただく

摘んだばかりの3種の野草。タンポポ、よもぎ、ヤブカンゾウ

地域それぞれに、その土地特有の農作物が育ち、また、その土地を形成する野山、川、海が、自然の恵みをもたらしてくれます。そして、その土地ならではの食べ物や気候風土は、そこに住む人たちの体質や気質とも深く結びついています。
八ヶ岳が望める標高1000mの南相木村で、野山から旬のものが採れるのを待ちわび、初物を仏壇にあげて感謝し、さまざまな料理を工夫し、端境期に備えて加工、保存し、また、終りには名残り惜しんで大切に食べる・・・。そんな「あたりまえのくらし」を実践している"仙人"(愛称)を訪ねました。
南相木村で、子どもたちへの食農教育と自給菜園の普及に取り組んでいる"仙人"に倣う「野山の旬をいただく」は、5回シリーズでご紹介します。

「春は苦味を盛れ」
芽吹きを味わい、健やかな身体をつくる

「野山の旬をいただく」シリーズでは、身近で気軽に旬を感じ楽しめる野草に注目し、その効能や食べ方を中心に、"仙人"の知恵と活用術を教えていただきます。
第1回目は春。「芽吹きを食べる」がテーマです。昔から「春は苦味を盛れ」、「夏は酸味を盛れ」、「秋は辛味を盛れ」、「冬は熱と油を盛れ」と言われていることを知っていますか。
冬に貯えられたエネルギーが一斉に芽吹く春。春の野草を代表するフキノトオウ、タンポポ、ヨモギなどには苦味があり、葉緑素、ミネラル、ビタミン、そして酵素が豊富に含まれています。「フキ、ウド、ヨモギなどの苦味食材には、身体の熱を冷まし、春の陽気の上昇によるトラブルを防いでくれる作用があります。また、苦味は春眠の身体を活性化し、新陳代謝を促し、紫外線も防いでくれます」と"仙人"。「春は苦味を盛れ」の意味を改めて学びます。

旬の発見・感動・感謝を味わう野草料理3種

"仙人"宅の周りに自生していた「タンポポ」「よもぎ」「ヤブカンゾウ」を摘んで調理していただきました。

野山の旬をいただく

野山の旬をいただく

タンポポのお浸し

●タンポポ
「タンポポ食べられるんですか」という声が聞こえてきそうですが、「タンポポ」は、葉、花はもちろん根の部分まで、すべて食用になります。薬草としても利尿、貧血、黄疸、神経症、血液の浄化に効果があるとされています。花からは黄色や緑色の染料もとれます。
"仙人"は、葉と花は生でサラダにしたり、茹でてお浸しやあえもの、天ぷらなどにして食べ、根は乾燥させてたんぽぽコーヒーにして楽しんでいます。また、偶然聞いた話から、タンポポの花弁からタンポポワインが作れることを知り、タンポポワインもつくっていました。2年前に作ったタンポポワインをいただくと・・・。ワインは酢に変わりはじめていましたが、タンポポ色は変わらず。タンポポの香りが残り、酸味が利いたさわやかな味が印象的でした。ビンの中では今も発酵が続いており、「発酵する様子を観察するのが大好きなの」と目を輝かせる"仙人"です。

野山の旬をいただく

タンポポワインから酢へ、発酵がすすむ

野山の旬をいただく

タンポポワイン

●よもぎ
「よもぎ」は草餅・団子などの和菓子に使用される馴染みがある野草です。全国各地の野原や河川の土手などに自生し、旬は3月から5月です。古くから食用だけでなく、生薬として用いられており、漢方では「艾葉(ガイヨウ)」と呼ばれ、食べる、飲む、浸ける、香りをかぐ、お灸のもぐさにするなど、万能薬とされてきました。

野山の旬をいただく

生命力あふれるよもぎ

"仙人"おすすめの食べ方は、芽吹いたばかりの柔らかい葉を天ぷらにする「よもぎの天ぷら」と「ヨモギ餅」です。揚げたての天ぷらは、よもぎの香りとほのかな苦みがおいしい!
もう一つのおすすめ「よもぎ餅」は、「よもぎを茹でて冷凍しておいても、新しいヨモギが芽吹くと捨ててしまう」という声から考案しました。
「よもぎ餅」は、米粉と白玉粉によもぎを混ぜて、おにぎり大の団子にしたもの。芽吹いたばかりの柔らかいよもぎの時季に作り、それを冷凍しておきます。食べたい時に、冷凍の「よもぎ餅」を解凍して、食べやすい大きさに丸め、きな粉や小豆あん、ごまだれ、イグサだれに付けて食べてもよし。草餅、かしわ餅、おしるこ、あんみつなどにも使えます。
「ヨモギ餅」の作り方は、「編集部員のつぶやき」に掲載しています。

●ヤブカンゾウ(和名)
古名を「ワスレグサ」。夏の山野を代表する花「ニッコウキスゲ」と同じユリ科の多年草で、日当たりの良い原野に自生し、やぶ地に生えることからヤブカンゾウと呼ばれています。野原に生えている「ノカンゾウ」も食べられます。

野山の旬をいただく

ヤブカンゾウ

若芽が3~5cmほどの長さになったら土の中の白い部分から採取して、さっと茹で、酢味噌和えか酢味噌マヨネーズで食べるのが"仙人"のおすすすめ。「白い部分は特にぬめりがあっておいしい」と収穫のコツも伝授してくれました。

 
野山の旬をいただく

ヤブカンゾウの酢味噌マヨネーズ

今回は、3種類の野草の活用を紹介しました。旬の野草には、優れた効能があります。身近に自生している食べられる野草を探し、旬の発見・感動・感謝を味わってみませんか。
次回は、梅雨を乗り切るための野草料理などをご紹介します。

この記事を書いた人

さくら

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