先月3月15日。安倍首相は、環太平洋戦略的経済連携協定(以下、TPP)交渉参加を表明し、関係国との事前協議がすすめられています。当ブログ「長野県のおいしい食べ方」にも係わりが大きいので、一度考察してみたいと思います。
そもそもTPPとは何が目的なのでしょうか。一般的には物品市場アクセス(物品の関税の撤廃・削減)やサービス貿易のみではなく、非関税分野(投資、競争、知的財産、政府調達等)のルール作りのほか、新しい分野(環境、労働等)を含む高いレベルの自由化を目標とする包括的協定といわれています。テレビや主要新聞紙上では、農産物の物品市場アクセス分野の関税問題のほか、一部で国民皆保険制度維持に課題があるとの報道ばかりが目立つ程度ですが、ブログをはじめとしたインターネットの世界では、多くの危険性が指摘されています。
国内の農家を応援するのは差別?
特に、米国が裁判で負けなし、といわれる不平等条項であるISD(投資家対国家の紛争解決)条項は、海外の投資家が損害を被ったとして国が訴えられるということが、現に米韓FTAでも起きており、韓国で混乱が起きています。
身近な例としては、「学校給食の地産地消は、米国の輸入農産物を差別して排除しているから問題がある」という指摘もされています。国内産業を振興するような政策は不平等、と訴えられることが起こりうるのです。
一人ひとりが安心できる暮らしを
そのような状況を考えると、「国益」という概念は何なのかを考える必要があります。いかに「国益を守ります」と美辞麗句を並べられても、国益とは海外投資家や輸出産業の利益のことであり、国民一人ひとりの安心できる生活のためではないと思ってしまうのはおかしなことでしょうか?
しかも米議会調査局(CRS)のTPP報告書では、2月22日の共同声明で安倍首相が交渉参加の根拠とした「聖域ない関税撤廃ではないことが明確になった」という部分に関しては記述がないようです。仮に交渉参加が米国などに認められたとしても、残る交渉は現時点で本年(2013年)9月の1回のみ。日本の主張が認められる可能性があるのか疑問があります。
国民も含めた協議を
協定内容は、合意まで開示されず交渉妥結後4年間は対外秘扱いということですから、内容を開示して国民的議論を、ということも期待薄の感は否めませんし、そもそも秘密ということがおかしいと思います。国民不在で知らないうちに決められることは許されません。医療格差をもたらし、世界に名だたる食の安全基準レベルを下げ、自動車などの環境基準レベルを下げるような、国民の健康を脅かすTPPは認められるものではありません。
また、現在でも森林や水源を海外投資家が購入していることについて問題視される中で、投資の自由化が進めば、この先どうなるかは容易に想像できるでしょう。我々の命のレベルを下げることには断固として拒否してもらわなくてはなりません。それができないなら直ちに交渉撤退をすべきだと思います。