とにかくたくさん雪が降りました。強い冬型の気圧配置の影響で、大学入試センター試験がおこなわれた週末の土日は、全国的にも大雪が降るなどの荒れ模様で、県北部の長野市でも5年ぶりに30センチを越える積雪となりました。野沢温泉、信濃町、飯山など北信州で積雪が1メートルを超えています。それまでの長野市内は、新年に少しだけ雪が降った程度で、まとまった雪にはならず、「今年はどうしたものか?」と思っていた矢先のこと、土曜日の県内はほぼ一日中雪が降り続き、明けた日曜、青空が覗いていた外では、駐車場の車が雪にすっぽりと覆われて、小山が出来ていました。そして辺り一面真っ白な雪は、太陽に照らされて目を開けているのも眩しい程でした。しかしようやく止んだと思っていた雪もまた午後からザンザンと容赦なく降り積もり、積雪によって車線や停止線などがわからない道路は、危険な状態でした。翌、月曜日の朝、外は前日よりさらに増えている雪の多さにただもう唖然とするばかり。いつものように通勤のためバスを待っていても、車はのろのろ運転で道路は渋滞、やっと到着したバスは、満員で乗ることが出来ず、仕方なく歩こうにも、明け方までの冷えたり融けたりを繰り返した道はボコボコと凹凸して歩きづらく、また電線にまで積もった雪は音もなく突然落下してくるので、下ばかりを見て歩くわけにもいきません。信号機から垂れ下がった氷柱は、30センチ近くもの長さとなって、一層の寒さを感じさせました。この大荒れのなか、受験された方達は、大変お疲れ様でした。またこの数日間、朝から晩までいたるところで雪かきが行われていましたが、週末は何度も雪かきをした人が多かったことでしょう。お疲れ様でした。とあるホームセンターでは多く仕入れておいた雪かきが完売となってしまったほど、雪かきがよく売れたそうです。しかし雪かきをしても、持って行く場所が足りないほどまだまだあるの大量の雪には困ったものです。
大雪に見舞われた15日は小正月でもあり、県北部の野沢温泉村では道祖神祭りや、県中部の松本市では三九郎(さんくろう)祭りなど、各地で「どんど焼き」が行われました。これは五穀豊穣、無病息災を願うものですが、また場所によっては繭玉(まゆだま)をつくるところもあるでしょう。米の粉を捏ねて、食紅などで色を付け、小判や鳥などに形作ったものを、どんど焼きに焼いて食べるのですが、養蚕の盛んだった地域では、いい繭ができますようにとの願いを込めて行われたようで、いずれにしても繭玉は、年の初めに豊かな1年や家内安全への祈りを込めた行事です。ちなみに三九郎では、その火で焼いた繭玉を食べると、1年間無病息災で過ごせると言われています。そうして正月の行事も終われば、早くも農作業が気になる頃となります。
それにしても今年は随分と寒く感じます。「毎年こんなに寒かったかしら?」と思い、周りの人に聞いてみると、ほとんどの人が昨年よりも寒さを感じているようです。そんな中、長野地方気象台から出された発表によると、昨年の12月までは平年より暖かい日が続いていたものの、年末から強い寒気が入り一転して厳寒となり、各地で平年より1度以上低くなっているということでした。しかもこの寒さ、今後もさらに続く見通し。そして明日20日は1年でもっとも寒い時期とされる大寒を迎えます。さらに降雪量については、北部や中・南部の平地では、平年と比べて降雪量は少ないものの、飯山市や白馬など北部の山沿いでは反対に、平年より雪が多くなっています。スキーなど山にお出掛けの方は、例年と少し違う状況に気をつけてください。
雪が舞い踊る先週13日、アフリカ・マリ共和国に米を送る発送式が行われました。これはJA長野県グループと県労農会議とが、一般市民や子ども達が農業体験に参加することで自然や農業の大切さに理解を深め、また食料不足に苦しむ人々を支援しようと毎年おこなっている「国際協力田」という運動で、これによってつくられた7トンを含む計11トンが援助米として出発していきました。米はこれから3ヶ月かけてマリ共和国に届けられます。
果物王国の信州では、早くもリンゴをはじめ、ブドウや桃など果樹の剪定の講習会が各地で行なわれています。今年の収穫に向けた最初の作業となるこの剪定は、品質の向上や生産の安定にかかわる重要な作業です。農家の方は4月頃までその剪定作業を行うことになります。
寒さ厳しい毎日、漬け物の入る樽の表面にも薄く氷が張っている状態ですが、しかしその寒さがあるからこそ漬け物が傷まず、おいしい漬け物が食べられるわけで、寒さを避けて家にいる時間が長い今の時期は、お茶を飲みながら野沢菜やたくあんなど、ついつい漬け物が進みます。いえ、漬け物が美味しいからついついお茶をする時間が長くなるのかもしれません。県内には各地にいろいろな漬け物がありますが、一番知られているのが県北部を中心に作られる”野沢菜漬け”でしょう。また最近健康食として注目されているが、木曽地方の塩を使わないで作られる蕪菜の漬け物”すんき漬け”。前の代の漬け菜をすんきの種として仕込み、乳酸発酵した酸っぱいのが特徴のこの漬け物、そのまま食べたり、また味噌汁や蕎麦の具としても食べられます。さらに、大人の味の漬け物といえば、県北西部は北安曇郡小谷村の”コショウ漬け”でしょうか。これは野菜を塩水に漬けたものですが、ピンク色をした外見からは想像出来ない、名前と同じコショウ味。実は村では唐辛子のことを”コショウ”と呼んで、この漬け物を作る際には必ずコショウが入れられるのだそうで、またきれいなピンク色は、大根などの野菜と一緒に入れる赤蕪の色が野菜に移って色付くのだそうです。しかし他の場所で同じように漬けたとしても、なぜかこの美味しさにはならないそうです。
寒に入ったこの時期、信州ではこの寒さを利用して昔から各地域でいろいろな保存食が作られきました。諏訪や茅野などを中心に作られる寒天、また県内各地で作られているのが、大根を風通しの良い外の日陰に吊るしながら、大根が凍ったり溶けたりを繰り返して作り上げる凍み大根、そして大町や安曇、諏訪などで作られる凍りもち、また佐久市で作られる凍み豆腐など、農家では作ったものを無駄にしないように、そしてまた野菜がない時季でも、加工を施し保存を可能にしたものをいかに美味しく食事に取り入れるかという工夫に知恵を絞り、それが現在までも見習って作られるというほどに、先代の知恵は凄いものです。
戸隠では「雪中酒」造りが始まりました。これは戸隠の観光協会と酒販店や飲食店などが、雪深い環境を生かした味わいを観光客に楽しんでもらおうと始めたもので今年で5年目。酒米「美山錦」を原料とした特別本醸造と純米吟醸の1升瓶約500本と4合瓶約1500本は、神事の後、しめ縄りをして雪に埋められました。この辛口の原酒は、温度が一定な雪の中で低温熟成が進み、まろやかな味になるそうです。4月下旬より、地元の酒販店で販売、旅館や飲食店などで提供されるとか。
早春を彩る鮮やかな花が出荷を迎えています。県東部の佐久穂町では濃黄色の花を付ける「レンギョウ」が出荷の最盛期を迎えています。これは露地栽培した枝を温室で加温して開花させたもので、職員がつぼみの膨らみ具合を確認しながら出荷されていきます。関東や関西方面を中心に2月下旬まで出荷が行われます。またオレンジやピンクなどのアルストロメリアの花は、県南部の茅野市を中心に栽培されているものですが、花が少ないこの時期、部屋をパッと華やかに明るくしてくれます。
今年もまた長野では、「長野灯明まつり」が2月5日(土)から2月13(日)まで行われます。これは長野オリンピックを記念して2004年より開催されたもので、今年で8回目。祭りは午後6時より、日が落ちて辺りが暗闇に包まれる中を五輪の五色の色で善光寺がライトアップされます。また今年は汁の振る舞いやお茶のサービスもありますので、寒さ厳しい時期ですが、ライトに浮かび上がる幻想的な光景をお楽しみ下さい。
*巻頭のカバー写真を入れ替えました。雪に覆われた先週の北安曇郡小谷村で。午前中まで降り続いていた雪もようやくお昼ごろには止んで、広がった青空に気分も軽くなりました。光があふれて辺りが見渡せるようになって、これほど降ったのかと、ちょっと驚きました。
●先週「長野県のおいしい食べ方」を発行した翌日、大陸から寒気団が流れこんで、信州を厳しい冷え込みが包み込み、諏訪湖がこの冬初めての全面氷結となりました。地元では3年ぶりの御神(おみ)渡り出現に期待が膨らんでいます。連日の寒さで氷の厚さは最大で13センチにまでなっていて、氷のせり上がりが見られはじめているそうです。湖面全体が凍って氷が山脈のように盛り上がる御神渡り。過去5年間で御神渡りの出現はまだ2度で、06年は1月9日、08年は同月30日に発生しました。この冬、諏訪の神さまは目を覚まされるでしょうか?
明日20日は満月。冬至を過ぎての最初の満月です。冬至を過ぎての最初の満月を、アメリカ先住民は「狼の月」と呼んできました。集落からさほど離れていないところでお腹をすかした狼が月に向かって吠える季節なのです。20日はまた二十四節気のひとつ大寒。江戸時代の暦の解説書である暦便覧には「冷ゆることの至りて甚だしきときなれば也」と書かれています。大寒とは、一年でもっとも寒い時期という意味。小寒から数えて15日後とされており、小寒から大寒までの15日間と大寒から立春までの15日間の合計30日間を「寒の内」といいます。今週の暦の前半にもありますように、この時期の寒気を利用して食物(凍り豆腐、寒天、酒、味噌など)を仕込む頃です。寒さのピークもあと15日とされますし、春の来ない冬はないとも言われますが、雪の多い信州ではこれからは春の訪れをひたすら待つ日々が続きます。
25日は日本最低気温の日です。1902年(明治35年)、北海道の旭川地方気象台で夜中の午前2時頃に-41.0℃という日本の最低気温を記録したことによります。ちなみに信州各地の最低気温を調べてみました。松本市では1900年1月27日(明治33年)に-24.8℃、長野市では1934年1月24日(昭和9年)に-17℃、諏訪市では1947年2月18日(昭和22年)に-23.1℃、飯田市では1954年1月27日(昭和29年)に-16.5℃、軽井沢では1936年3月1日(昭和11年)に-21.0℃という記録があります。昨日18日の諏訪市の最低気温は朝7時20分で-3.5℃でした。来週の26日は下弦の月。
信州の冬になくてはならないのがコタツです。こういう寒い日にはコタツが一番です。薪ストーブなどというものが広まりを見せている最近はそうでもないのかもしれませんが、それでもコタツは長野県人には欠かすことのできない冬の暖房器具。コタツに入って、お茶なんかすすりつつ、野沢菜漬けを少しずつつまみ、なんとなくぬくぬくしているのはとてもよろしいのですが、そのうち何をするのも面倒くさくなって、ぐずぐずしているうちに1日が終わってしまうこともないわけではありません。だからでしょうか、信州の年長者たちはコタツのことを「ズクなし箱」とか「ズクなし袋」などと呼びます。ズク? で、今回はこの「ズク」について研究してみます。
信州語の代表でもある「ズク」については、信州に暮らしたことのない人は全く知らないかもしれませんが、一度でも信州に住んだり友だちのいる人は必ず知っています。「ズク」という言葉が文化のなかにあるのは信州以外にもあるようですけれど、もしズクがなにかまったく知らないのなら、この機会に覚えてください。たとえば信州にある代表的なラジオ局にSBCラジオがあり、信州をドライブしながらラジオを聞いているとウイークデイの朝9時過ぎからお昼まで「坂ちゃんの、ずくだせ、エブリデイ」という情報番組をやっています。なんとなくわかるのは、信州語でズクというのは「元気」とか「気力」とか「やる気」とか「勇気」とかいう意味であるらしいことです。元気も気力もやる気も勇気も「気」という言葉が鍵となる言葉で、これは目に見えないものでありまして、出せと言われてもそう簡単にはズクをあからさまに目に見える形のあるものとしてお見せすることができません。ズクは信州文化圏で使われる信州語の代表ですから、当然広辞苑にも長野県方言の「ずくなし」【ずく無し】という用語として「役に立たない者。怠け者。不精者」と定義されています。わかりやすく言い換えますと、ズクのない人間は「役立たず」であり、「怠け者」で、「無精なやつ」ということですが、しかしここにもズクについては直接的に説明されていません。インターネットの百科事典であるウィキペディアには「ズク」のことを「しばしば共通語による定義ができないとされる名詞」と見事に表現されています。「億劫がってなにかをやりだそうとしない状態」のことを「ずく無し」というと。また信州語の研究家が調べたところによると、「日本刀など作る工程で砂鉄に木炭を混ぜ高温で溶かした地金に炉(釜)底などにできた鉄塊などを混ぜるのだけれど、これがもともとズクと呼ばれ、この『ズク』を加えることによってよりハガネが強くなり名刀になることが知られている」との調査報告もあります。この古代製鉄法の「たたら製鉄」の世界の用語が残されたものではないかと。これはいかにもありそうではありますが、確認のとれたものではありません。そして信州の古くからの言い伝えに「ズクと根気はなによりの宝」というものがあり、ズクの大切さを教えています。体がどれだけ大きくてもズクのない人間はだめと言うことを「ズクなしの大カンガラ」というとものの本にはありました。カンガラというのは昔の農機具の「鍬柄(くわがら)」で、人間の足に似て見えることから「デカ足」を意味していて、「大足にはズクがない」ということらしいです。またある人に言わせると、ズクには種類があり、「大きな仕事となると精を出すけれど、どうでも言い細かい仕事には無精になること」を「大ズク」、反対に「細かい仕事となると一生懸命になる」のを「小ズク(こずく)がある」と言います。「大ズクありの小ズクなし」なんて、うまいことを的確に言ったりします。小ズクのある人間に、大ズクがあるとは限らないし、逆もまたあるでしょう。そういえば長野駅のお土産屋さんなどで売られているまんじゅうに「こずくまんじゅう」という黒糖饅頭がありました。ズクを出してここまでズクについて書いてきましたが、やはりコタツで温まっているとズクが抜けていくようです。
長野県の冬の気象の特徴 長野地方気象台のウェブサイトより
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