突然ですが「28.4万ヘクタール(ha)」とは、いったいどのくらいの面積なのか、想像できますか? ちなみに1ヘクタールは「100メートル×100メートル」で、それはおよそサッカーフィールドの1.5倍くらい。よく例えられる東京ドーム1個分は、46,755平方メートル(m2)。1ヘクタールは10,000平方メートルなので、28.4万ヘクタール=28.4億平方メートルになります。28.4億 ÷46,755=60,742個ほど・・・うーん・・・(ーー;)失礼しました。かなり広いことが伝わればよしとしたいと思います。で、先月4月に農林水産省からその「28.4万ヘクタール」という興味深い数字が示されました。
耕作放棄地の程度まで目で見て調べた
この28.4万ヘクタールという数字は、日本全国で作物を育てられる環境にあるにもかかわらず耕作をしていない、いわゆる「耕作放棄地面積」のすべてをあわせたものを示しています。調査は2008年の夏に全国の市町村と農業委員会が協力して「初めて」おこないました。これまでは農林水産省が5年ごとに実施している農林業センサス(国勢調査)において「農作物が過去1年以上作付けされず、農家が数年間のうちに作付けをする予定がないと回答した田畑や果樹園」を「耕作放棄地」と定義していました。しかし今回の調査の特徴は、一筆(農地の単位)ごとに農地の状態は違うので、実際にその土地を目で見て、
(1)草刈りなどをすれば耕作可能[緑]
(2)基盤整備すれば農業利用できる土地[黄]
(3)森林・原野化し、農地に復元不可能な土地[赤]
の3段階に分類し、耕作放棄地の程度を分かりやすく記述しているところです。
日本の耕作放棄地 都道府県別集計表 図をクリックで拡大
長野県をはじめ地方の山間地では、農地の荒廃は大きな課題。われらの信州では、(1)(2)(3)の合計が約1万5000ヘクタールと、荒れた農地が鹿児島県の約2万ヘクタールに次いで2番目に多くあります。主な理由は、農業を行なう担い手の不足や地域の過疎化、鳥獣被害、農畜産物の価格低迷などなどがあげられるでしょう。
長野県の農業者も動きはじめている
しかし、ここ数年、「食」について、業界のみならず消費者など国民みんなの関心が高まっていて、農業に関しても追い風が吹いていることを、地域や生産者も肌で感じています。今回の現地調査では、広大な面積が耕作放棄地だとわかった一方で、そこには草刈りなどや基盤整備すれば農業利用できる土地も多くあることがわかりました。
今県内では、各地区で荒れた農地を再生させようとの活動の輪が広がっています。長野県の北部に位置する飯山市では、遊休農地(荒廃地)でヒマワリを育てています。中心になってこのプロジェクトに取り組むのは、JA北信州みゆき。ヒマワリで、「景観を楽しみ」「種から食用油」「茎などを細かく砕いてキノコ培地(ばいち)や畑の土壌改良材に利用」と、まさに「農地再生の3段活用」を計画しています。
北信の中野市ではJAの若手農業者が中心になり、市内の遊休荒廃農地を整備し、トウモロコシをつくって収穫した一部を学校給食に提供し、地元の小中学生に味わってもらう予定になっています。長野市では、地域のお母さんたちが遊休農地でコンニャクをつくり「手作りこんにゃく」として販売したり、浅川地区遊休農地活性化委員会が栽培した大豆から、みそ造りをしたりと、さまざまな取り組みがあります。東信の長和町では「きくいも研究会」のみなさんが、体にいいキクイモを遊休荒廃農地で育てています。また、南信の飯田市など県下各地で、荒廃地へソバを植えて収穫祭やソバ打ち体験なども行なわれています。
農業が地域を変えていく可能性
小規模ながらいずれも、地域にある資源の農地を有効に利用しようと考え、農地・地域・農家・行政などが連携し、新しくスタートを切っています。今後は、さらに農業が起爆剤となり、農家だけでなく地域住民を巻き込んだ展開へ力を入れていくことでしょう。
あわせて参考にしたい
●平成20年度耕作放棄地全体調査(耕作放棄地に関する現地調査)の結果について 農林水産省プレスリリース 平成21年4月7日