連載※長野県南佐久郡川上村で高原野菜を生産する野菜農家の新海岩夫さん(56歳)が、月々の農事を綴ります。
川上村のレタス畑
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まもなくレタスの出荷がはじまって作期の半分が過ぎようとしています。野菜の価格の低迷は相変わらずで、生産者同士の会話にはなんともいえない重いものを感じます。川上村は冷涼な気候を生かしたレタス作りによって、村を築きあげてきたといっても過言ではありません。若者の農業への定着率や、生まれてくる子供の出生率もチョット前までは2人を超えていて、全国でもまれに見る農業でも食っていける、数少ない村でした。
しかし、今は後継者へ農業経営を引き継ぐのをためらうようになってきています。今年のような野菜の価格の低迷も将来へ不安を残すひとつの要因だからです。伸び続ける輸入野菜の増大、野菜の消費の変化、100円ショップなどに代表される流通構造の変化もあって、以前とは違うものを感じているからでしょう。市場ではなく、一部の企業がブロッコリーの相場を作っているとも言われています。国は食料自給率を上げるといっていますが、今このように産地がゆれていて、本当に安心・安全の食料が将来にわたって消費者の皆様に届くのでしょうか?
とはいえしかし、産地では黙々と朝まだ暗いうちからレタスの出荷作業にはげんでいます。8月はお墓参り(お彼岸ではなく8月に先祖の墓参りをします)、そしてお盆と故郷への帰省の人たちを交え親族が一同に会して、つかの間の夏を過ごします。お墓参りやお盆には、よく盆花と呼ばれる草花を取りに行ったものですが、今では買ったお花で間に合わせるようになってしまいました。寂しさを感じるところです。
その盆を境に、レタスの定植が終わろうとしています。盆を過ぎてから植えると、はやくも霜の被害に遭いかねませんし、成長が不思議と遅れてしまいます。たった1日と思うのですが・・・。今は盆までにはレタスの定植をすませようと、猫の手も借りたいほどのいそがしい毎日を送っています。なにはともあれ後半に期待を持ちながら、精一杯がんばろうと、農家魂を発揮しています。
▽長野県の気候・夏の特徴(長野地方気象台)