大樹の農事録

高温障害とスズメのいたずらで大波乱の苗づくり

北アルプスをのぞむ安曇野市は、1等米比率日本トップクラスの長野県を支える米どころ。25歳でお米農家を継いだ安田大樹さんは、おいしいお米を作り続けることが「ふるさと安曇野の景観を守り、地域を楽しくしていくことにつながる」と考えました。

こんにちは。いよいよ農繁期突入です。
農繁期もあれば農閑期もある! このメリハリのある1年が農業の楽しさでもあり、飽きない要因でもあります。
頑張るときは頑張る! 休むときは遊ぶ!
二十四節気を感じながら、自然の流れとともに1年を過ごす。
今年もいっちょやりますよ!

安曇野、水田の満月

 

写真はミニバスの練習帰りに息子と見た満月。
日本人は月を様々な名前で呼びますね。お月見なんて文化があるくらい日本人は月を意識して日々共に暮らしてきました。
所変われば、アメリカの先住民も各月の満月に名前を付けていたようです。ちなみにこの写真は4月の満月なので、彼らの呼び名では「ピンクムーン(桃色月)」。いかにも春っぽくて素敵な名前です。月の満ち欠けは農事暦としても使われていたようで、月が日本人以外にも生活の一部として親しまれてきたことがよくわかります。

付かず離れず夜を照らす月を見ていると哀愁を感じます。無性に月見酒をしたくなりました。

 

大失敗からの経験値

さて、田植えの準備といえば苗づくり。今年は大きくなった子供たちも立派にお手伝いをしてくれました。

苗づくり

 

そのおかげで今年の種まきは順調に進んでいたと思いきや、、、、
とんでもない大失敗をしてしまいました。のんきに月見酒なんて飲んでる場合じゃない!

苗づくり、種まきをしてから一週間

 

この写真は、種まきをしてから一週間後、被覆材を取った後の状態です。
ハウスの中央、土が茶色く見えている部分がありますね。これは蒔いた種が発芽していないところです。
原因は「高温障害」。
暑い日の種蒔きで、播種後に被覆材をかけるのが遅すぎたため、育苗箱の温度が高くなりすぎて種が熱中症になってしまったのです。特にハウスの中央の一番気温が高くなる部分に顕著に発芽不良の症状が出ていることが分かります。
発芽時にこうなってしまうと、もうムラのない平らな苗は作れません。生育も遅れてしまいます。この先どれだけの苗が使いものになるか分からないので、思い切って300枚の苗を蒔き直す決断をしました。
蒔き直しの決断と同時に田植え準備の計画もすべて見直しです。ほんとショック。
30万円の損失で経験値を30万獲得しました。と同時に名言も舞い降りてきました。

「経験値は勝った時でなく、負けた時にこそより多く得られるものである」by ひろき

 

空からの刺客

デリケートな苗に、更に追い打ちをかけるかのように、スズメもいたずらをしてきます。
スズメさんはまだ芽を出したばかりの苗を抜いて種を食べてしまうんです。当然食害にあった苗は売り物になりません。

スズメ

 

このスズメ集団、思ったより馬鹿なので網で結構簡単に捕まります。手で握ると驚くほど軽くて暖かい。
右下の奴は悪い顔してますねー。

「今度来たら夜のおつまみにしてやろうか!!!」



『スズメの串焼き』

スズメの串焼き

 

これは近所のおじさんちで食べたリアルスズメ。春スズメは美味しくないので食べませんが、冬の寒スズメは脂がのっていて結構美味しいんですよ。
これ以上悪さをするようなら本気でこの状況を再現しなければなりません。

捕まえたスズメを子供に見せて「殺して今晩のおかずにしてやる!」と言ったら子供3人に全力で怒られる父。

「じゃあ、唐揚げのニワトリはいいの? 焼肉は牛さんとか豚さん殺してるんだよ?」と問う父。

困った顔で考える子供達。

しばらく考えて出した答えが、「誰かが殺したやつはいいけど、自分で殺すのは嫌!」「だからこのスズメは逃がして!」

ん~、そういう方向にもっていきたかったんじゃないんだけどな~。でもこれが素直な答えなんでしょう。短い会話でしたが、調理されたものしか目にすることのない現代において、物を食べるときに少しでも「命」を感じることができるようになったでしょうか。
一次産業に携わる者として、消費者の皆様には素材の生きていた時の姿や、生産の苦労を少しでも想ってもらえると嬉しいです。

 

農繁期の滋養強壮に

素材と言えば春の野草も食べごろを迎えております。

ノビル

 

このネギのような葉っぱ。何だか分かりますか?

正解は「野蒜(のびる)」という野草。

ノビル

 

引っこ抜くと小さな玉ねぎのようなものがついています。コマも味見をしています。
この野蒜はここら辺の地域では「ねんぶる」の愛称で親しまれています。私も小さいころからよく田んぼの畔から抜いてきては食べていました。
大人になってからはあまり食べなかったのですが、子供に「食べられる草だ」と教えたら面白がって大量に収穫してきたため、久しぶりに食べてみることに。
今回は酒好きのお隣さんに、簡単で美味しいと教わった食べ方を試してみました。

ノビル

 

まず、収穫したねんぶるは根を切り落とし、薄皮を剥いで水でしっかり洗います。
次に、沸騰したお湯に球根部分を15~20秒程泳がせます。

ノビル

 

完成です(笑)

ノビル

 

自家製の味噌をちょいと付けて、カリッ♪ といただきましょう!
ねんぶるは玉ねぎとラッキョウの間のような味です。匂いもネギに似ています。
生で食べると辛味が強いのですが、さっと茹でることで辛味が抑えられ甘味が強く感じられました。そこに味噌のコクと塩気が効いて、もう抜群のアレ! 自分の語彙力の無さが憎い!
これは焼酎や日本酒との相性が最高なわけですよ。

この他にも醤油漬けや天ぷら等にしても美味しいらしいので、余裕があれば試してみたいと思います。
しかし、ねんぶるは栄養満点なだけに食べすぎ注意です。よく似た有毒性の草もあるのでお腹を壊さないように注意しましょう。ちなみに私は一度痛い目にあっています。。。

そんなわけで、いつも通りステイホームな米農家のGWは過ぎてゆきます。早く山菜食べたいな。
この先のトラブルも山菜野草パワーで乗り越えていきます!
それではまた次回。

この記事を書いた人

安田大樹さん

北アルプスをのぞむ安曇野市は、1等米比率日本トップクラスの長野県を支える米どころ。25歳でお米農家を継いだ安田大樹さんは、おいしいお米を作り続けることが「ふるさと安曇野の景観を守り、地域を楽しくしていくことにつながる」と考えました。

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