大樹の農事録
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大樹の、安曇野うまい米づくり農事録 第6回

皆様こんにちは。朝が寒くなり、早くも冬用毛布を出したこちら地方です。でも昼間は暑い。本当この時期は何を着ていいか迷いますよね。

安田さん農事録

 

朝のひんやりとした空気は安曇野の大地に露を降ろします。朝起きてこの空気を浴びると「今年も収穫の季節だなぁ」と気合が入るわけです。
というわけで、4月の種まきから約6か月の時を経て、とうとう稲刈りのスタートです!!!

 

適期作業はいいものづくりの基本

安田さん農事録

 

見事に黄金色に実った稲。今年も最後まで丁寧に収穫します。
稲刈りのタイミングを計るにはいくつか方法があります。一つ目は「積算温度(1日の平均気温の合計値)」です。コシヒカリの場合、出穂後から積算温度が約1000℃が収穫時期になります。平均気温が25℃とすれば出穂後40日が収穫時期ということですね。
二つ目は帯緑色籾歩合での判断。これは一つの稲穂の中に緑色の籾が何粒あるかで判断する方法です。1本の茎には約100粒の籾が付いているのですが、登熟につれ穂先から順に黄色く実ってきます。まだ緑色が残る籾が10粒(約1割)に達した時が刈りはじめ適期。全体が黄色くなってしまうと刈り遅れです。
刈り始めるのが早いと未熟粒と呼ばれ、水分が多く乾燥に時間がかかります。逆に遅くなれば玄米にひびが入る胴割れ米の危険が増えてしまうのです。刈りはじめ適期から10日くらいの間が収穫時期と言えるでしょうか。
そのため積算気温が1000℃近くになると、毎日そわそわ米の色を確認し稲刈りの予定を立てるのです。

 

感謝と喜びの収穫

近年は異常気象や極端気象が当たり前になってきました。丹精込めて育てたものが、台風や風で収穫に至らないということは珍しいことではありません。その為、無事収穫を迎えられることは農業者にとって何よりの喜びです。
今年も「異常気象は当たり前」の考えで災害に強い稲づくりを進めてきたので、風雨で倒伏する圃場も少なくいい立ち姿になりました。

安田さん農事録

 

短期間に沢山収穫しなければならないので、収穫はお馴染みの「コンバイン」で行います。これが高いんですな!! 最新のものは1600万円くらい。うちのは6条刈りの中では安いタイプですが1000万以上します。排ガス規制で農業機械の値段は右肩上がり! 更に消費税増税ときたもんだから溜まったもんじゃない。。。1000万円の機械を買うのに消費税が100万円て! 離農のタイミングに機械の故障を挙げる人は沢山いるんですよ。トラクターにトレーラーつけてコンバイン乗せて移動してたら普通に家が建つ金額になります。でも機械がないと土地利用型の農業はできません。なるべく丁寧に長く効率よく使うしかないですね。
収穫した籾は乾燥させて水分を14%くらいにしなければいけないので、乾燥機がいっぱいになったらその日の収穫作業は終了になります。

 

乾燥調製作業は意外と知らない?

田んぼでコンバインが動いているのは見たことがあると思います。ではコンバインから出された籾はどうなるのか知っていますか?

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これは私が地域の農地の担い手となることを決意し、「一生農業を仕事にしていくんだ」という覚悟をもって新設した乾燥調製施設です。田園風景に工場的な外見は避けたかったので、北アルプスの深緑と残雪や雲をイメージして緑と白にしました。地元の人からも「見ていて落ち着く」「安心できる色」等と好評で嬉しいです(#^^#)
中身はというとこんな感じ↓

安田さん農事録

 

機械だらけですね。ここでは、まず左奥の乾燥機で収穫した生籾の水分を14.5%まで乾燥させます。次に籾殻を剥いて玄米の状態にする「籾摺り」をして、グレーダーで大きな粒だけを網で選別し、石抜き機で石を取り除きます。そして前回の記事にも挙げた色彩選別機でカメムシの被害粒や不良米、異物を一粒単位ではじき出します。

安田さん農事録

 

上の写真は色選を通る前のお米。下は通った後です。赤丸の不良米をはじいて良品のみにしてくれる優れものです。
そして計量器で計って袋詰めして、初めて出荷できる状態になります。農家から農協やお米屋さんに出荷する段階では玄米出荷が基本なんですよ。その後精米作業をして初めて普段見かける白いお米になるんです。こんなに機械を使っているって知っていましたか? 一日中畑で土や木に触れているのを農業のイメージとして持っている方も多いはず。土地利用型農業は機械なくしてできないので、農業と工業のハイブリットのような側面もあるかもしれません。

 

稲刈りが終わると

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稲刈り後の田んぼには哀愁が漂います。ん~~、感慨深いものがありますね。
今年の稲刈りは遅いスタートでしたが、順調に収穫することができました。9月は雨が平年の1割程度しかなく、後半は少し焦りましたね。今年の反収は安曇野市ではやや少なめの10俵/10aくらい。10.5俵は取りたかったのですが、量より質ということで。めでたく全て1等米を取ることが出来ました!
ここらでほっと一息といきたいのですが、この後すぐに麦まき準備が始まります。麦まきが終われば大豆の収穫か。そうこうしていれば今年も終わりですね(;´∀`)

収穫の秋! これから長野県は本当においしいもので溢れかえります♪ 新米に、新蕎麦、ブドウ、リンゴ、カキ、栗、雑キノコ、そして美味しいお酒! これからどんどん山も色付いてきます。是非長野県へ直接来て頂いて、紅葉と美味しい食べ物、空気、匂いまでご自身の五感で存分に味わってみてはいかがでしょうか?
「長野県のおいしさを五感で味わう。」 何かのキャッチフレーズになりそうですね(笑)
視覚情報過多の現代社会、長野県へ来て使っていない五感に刺激を与えましょう!

 

農事録番外編
長野県のおいしいおつまみ:10月

秋です。私はここでは新さんまを紹介したいくらい魚が大好きです。しかし、長野県は海なし県。新鮮な海魚が食べられる海沿いの県が羨ましくてなりません。
9月もおいしいおつまみが沢山ありますが、長野県民ということでこれを紹介せずにはいられない!
くらえ! 長野県が誇る高級食材!「イナゴの佃煮」だ!

安田さん農事録

 

安田さん農事録

 

はい! ギャグではありません(うちの場合)。これほどまでに素材本来の姿を活かした調理法があるでしょうか。なんて食欲をそそるフォルムなのでしょう。通としては、足はあえてつけたまま唇に引っかかる食感を楽しみたいですね♪
長野県の昆虫食文化は有名なところではありますが、悲しいことに現在では米農家でもない限り食卓にイナゴが登場する家庭は少ないでしょう。昆虫食は家庭の味から珍味に形態を変えました。私が小学生の頃は、稲刈りについていっては種籾袋の中にぎゅうぎゅうになるまでイナゴを捕獲しては「佃煮にして♪」と親にせがんだものです。おんぶイナゴを捕った時はテンションが上がったな。
10月の運動会のお弁当には必ず入っていました。更に言えばお弁当にイナゴが入っている人はヒーローでした!「うわー安田虫食ってるぅー」なんて言う不届きものは一人もいなかった。それが今や【閲覧注意】だとか、罰ゲーム的な扱いを受ける様にまでなってしまうとは。エビみたいなもんでしょうに! 時代は変わりゆくものですね。
イナゴとはそもそも「稲子」と書きます。文字通り稲が育てた子供のようなもの。9月になれば黄金色の稲の中を元気な稲子がぴょんぴょんと跳びまわります。是非捕獲して佃煮にしてみて下さい。インスタ映えすること間違いなしですよ。
基本的に昆虫は肉や魚よりもビタミンやミネラルが多く、高タンパク質が摂取できる上にコレステロール値が低い超優良食材です。この他にも有名どころでは「蜂の子」「ざざ虫」「蚕の蛹」等がありますが、中でもイナゴは美味しい入門虫食材です。世界的にも昆虫食が見直されてきています。グラム単価で考えれば秋刀魚の何十倍にもなる超高級食材ですよ。
長野県の居酒屋でイナゴの文字を見かけたらちょっと頼んでみて下さい。抵抗がある人はエビだと思って食べましょう。エビを食べる時よくよく観察しながら食べますか? 箸でとってすぐ口に入れますよね? それと同じ感覚です。観察せずに食べましょう。

ということで熱く語り過ぎました。「長野県民はやっぱり虫好きなんだ。」というイメージを持たれても逆に県内から批判が来そうなのでここら辺で退散します。
では10月もお楽しみに。

この記事を書いた人

安田大樹さん

北アルプスをのぞむ安曇野市は、1等米比率日本トップクラスの長野県を支える米どころ。25歳でお米農家を継いだ安田大樹さんは、おいしいお米を作り続けることが「ふるさと安曇野の景観を守り、地域を楽しくしていくことにつながる」と考えました。

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