12月上旬、木曽路から新酒の便りが届きました。
江戸時代から300余年の歴史を誇り、当時は中山道の宿場町として栄えた須原宿(県西南部の大桑村)。「木曽路はすべて山の中である」と言われるとおり、周囲を山々に囲まれて、水も空気も美味しい木曽は、もとより銘酒の里でもありますが、その中で、木曽谷最古の造り酒屋として今も営みを続ける老舗の蔵元・西尾酒造で、今年も清酒「木曽のかけはし」ができあがったというのです。
この「木曽のかけはし」、じつはこれまで何度もさまざまな賞に輝いている銘酒のなかの銘酒で、今年もまた、関東信越国税局酒類鑑評会において吟醸酒の部、燗酒の部の両方でともに優秀賞を、さらには長野県清酒品評会において県知事賞を受賞した逸品です。
西尾酒造のある木曽郡大桑村は、東に南駒ケ岳をはじめとする中央アルプスの山々が連なり、面積の96%を山林が占めています。この緑に包まれた環境の中で西尾酒造は伊奈川渓谷からの水と、そして県内産の良質な酒米とを原料に、腕の良い杜氏たちによって、美味しいお酒が造られるのです。
蔵元を訪れた日も、蔵の前には何台もの宅急便の車が停車してはつぎつぎとお酒が積み込まれて発送されていく様子に、人気の程がうかがえました。蔵元・西尾酒造のおかみさんは、代々築かれてきた長い歴史の重みを受けとめ、気を引き締めるように話します。
「酒造りは毎年毎年が真剣勝負。信用は一瞬で落ちるもの、だから絶対に気を抜くことは出来ない。使用したい酒米の値段がとても高く、全然儲けにならない時もあったが、それでもこだわって、常に最高のものを目指して頑張ってきたので、今につながっている。」
「木曽のかけはし」という名前を戴くお酒には、純米大吟醸から本醸造、生原酒までさまざまな種類がある中で、とりわけ人気のあるのはどぶろく風味の「杣酒(そまざけ)」です。この名前からもわかるように、「杣人(そまびと)」と呼ばれた「山と共に、そして山の木々と共に生きた人たち」に愛されてきたというお酒を再現した、にごり酒です。瓶の中で発酵し続けているというだけあって、口に含んだとき最初に舌にピリッとくる感覚には驚かされますが、サラッとしていて、辛口で、飲み易いと感じるお酒です。
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図は歌川広重作「木曽海道六拾九次之内須原」 |
その昔、中山道は木曽路の宿場町を歩いた旅人が、この地でひと時の旅の疲れを癒すために口にしたであろうこのお酒を、これからの年末年始、いにしえの旅人たちに思いを馳せながら、ちびりちびりと味わいたいと思うのでありました。
アクセス:
西尾酒造株式会社
木曽郡大桑村須原893
TEL 0264−55−3002
FAX 0264−55−3412
*ホームページ等はありません