野菜

キャベツの収穫は、積雪150cmのその下から

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あるフランス料理人は、一口食べた時からその美味しさに魅せられたといいます。
それは採れる期間が短いうえに、もともと数は少なく、どれだけ採れるかも定かではない絶品の野菜のこと。その野菜とは「冬に採れるキャベツ」です。
取材スタッフが職場で「行ったらどうしても買って来い」と言われ、手に入れようにも店先に並ぶそばからすぐに売り切れてしまうというあんばい。
その実態を探るべく(というより採れたてを一口食べたいがため)、北安曇郡の北端、新潟県糸魚川市と隣接する、白銀の小谷(おたり)村にやって来たのでした。

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キャベツが「雪の中に眠ってる」って、どういうこと?
辺り一面、雪、雪、雪!!真っ青な空の下、真っ白な銀世界が広がる小谷村のある朝のこと。大人の胸の高さほど積もった雪の中に切り開かれた道を進む人たちの姿がありました。それぞれが大きなスコップを持っている姿から察するに、どこかへ雪かきに行くようにも見えます。
cab-sori.jpg「いやいや、これからキャベツの収穫に行くんだよ」
これから収穫ですか!?(?_?)雪の中、ハウスも見当たらないけど・・・と思ったら、ある場所を指差し、
「ここに埋まってるから掘るよ!!」
指し示されたのは積雪150cmほどもあろうかという雪原でした。

そうそう。お目当てのキャベツというのは、雪の中に眠っているんだと聞きました。雪中甘藍(せっちゅうかんらん)と呼ぶのだそうです。甘藍とは、キャベツやハボタンの和名ですね。
お邪魔したのは、南小谷駅の東側に位置する伊折(いおり)の集落営農組織、伊折農業生産組合の畑です。この日は雲ひとつ無い青空で、絶好の収穫日和。ところで「雪の中に眠っている」とは、どういうことでしょうか。雪中リンゴや雪中貯蔵酒のように、雪の中で貯蔵したキャベツでしょうか。


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除雪機が畑の中に突入し、通路を作っていきます。そして切り開かれた雪の中に、組合の方々が分け入っていき、元気よくスコップで雪を掘り始めました!!
「ここにあったよ!!」との声に駆けつけてみると、雪の中から緑色の物体が。おお、キャベツを発見!!まだ根が付いており、どうやら貯箱入れて貯蔵していたのではなく、育った状態のまま雪に埋もれていたようですね。

ところで除雪機がいきなり畑に侵入して大丈夫?キャベツが眠っているんでしょ!?と心配してしまったあなた、ご安心下さい。道の部分でさえ30cmほどの雪が踏み固められているくらいですから、除雪機は畑に入っていっても地表から30cmほどのところを進んでいくので、キャベツを傷つけることはありません。それにしてもメンバーは御年70〜80歳とのこと、元気です。


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キャベツが見つかったら、先ず周りの雪を掻き分け、隙間から包丁を差込んで収穫します。カチコチに凍っているのかと思いきや、しっとりとしていて弾力がありました。"買ってきたキャベツを間違えて冷凍庫に入れちゃった状態"とは全く違います。半分に割ると、芯の辺りがほんのり黄色くなっていて「この真ん中辺りがおいしいんだよ。食べてみて」との声。待っていましたとばかりに、採れたての雪中甘藍、まずは一口頂きます。


そのまま食べても飽きない「生のキャベツ」の秘密
cab-10.jpgパリッ、シャキシャキッ。ものすごく歯ごたえが良く、みずみずしくて、食べているのが気持ちいいほど。そして、本当に甘いんです!!キャベツをそのままバリバリ食べてても飽きないなんて、想像できますか?

この甘さの秘密は、やっぱり雪の中で眠っていたことにありました。キャベツは収穫されずに雪に埋もれることで、凍ってしまわないように自身のアミノ酸を糖分に変えるんだそうです。甘みが増す理由は、こうして糖分が増えていたからなんですね、納得です。雪の中は、外の気温が何度であろうとも常に0℃前後に保たれているので、キャベツは凍らずに生き続け、甘味が増していくのです。

その証拠に、このキャベツを雪の降り始めた早い段階で収穫して食べてみたところ、どこにでもある普通のキャベツだったそうです。逆に、3月頃までの長期間雪の中に眠らせておくと、かえって味は落ちてしまうという話も聞きました。つまり、雪中甘藍は1月〜2月初頭の短期間のみ味わえる、季節限定キャベツなんです!!

そして数にも制限があります。雪の中の収穫作業は大変。しかも育てた全てが収穫できるわけではなく、雪の中でダメになってしまうものや、ネズミ等に真ん中のおいしいところだけ食べられてしまうものも多いとか。この日も、「ああ、これはダメだな」というキャベツもありました。


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大変だけれど、楽しく!助け合い!そして喜ばれる!
それにしても、どうしてこんな大変な野菜を作っているのでしょうか。食べる側としては、とっても嬉しい限りなんですが・・・。
「50年くらい昔までは農家が自宅用に作っていたみたいなんだけど、その後はずっと作られてこなかったんだ、大変だからね。でも、生産組合で冬に出荷できるものを、と思って7年前に再開したんだよ。これだけおいしいから皆さんに食べてもらいたいしね」と語るのは、伊折農業生産組合の高橋正宏(たかはし・まさひろ)さん。
高橋さんは、組合長の藤原信夫(ふじわら・のぶお)さんと二人で2003年にこの組合を作りました。過疎化が進む伊折の集落をなんとかしたいという想いからです。個人個人がばらばらにやってた農業が、生産組合が作られたことで皆で助け合いながらできる仕組みに生まれ変わりました。今では集落の全員が組合に参加し、様々な作物の生産・販売を"助け合いながら無理なく"行っています。


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そんな皆さんのお茶飲み会にお邪魔しました。もちろん収穫したての雪中甘藍も並びます。雪中甘藍は、そのままでももちろんおいしいのですが、茹でると甘みが強調されて絶品です!組合の方々は、鍋に入れて食べるのが一番おいしいとも話してくれました。

現在、組合では棚田のオーナー制度、学校の農業体験学習など、外部との交流も積極的に行っています。「過疎化が進んだ集落は沢山あるから、モデルケースになれればいいね。今度は農家民宿やレストランみたいなことが出来ないか考えているんだ。それに、ここで取れた農産物のおいしさを生かした料理方法をもっと考えたいんだけど・・・。後は、"雪中甘藍"って何のことか分からないよね?もっと売っていくためには良いネーミングも必要だよ」と、高橋さんのお話からは更に前進しようという意気込みが伝わってきます。この組合は"楽しくやる"ことがモットーのようで、助け合いながら無理なく、楽しく活動し、それが前進につながっているようです。そこが、集落が元気になる秘訣なのかもしれません。


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さて、雪中甘藍は伊折ともう1箇所で栽培されており、小谷村内の2箇所で一玉300〜350円で購入できます。ただし、時期や数に限りがあるため、事前に確認した方が良いでしょう。

雪中甘藍を購入できるお店

《 JA大北おたり生活店舗 》
〒399-9422 北安曇郡小谷村大字千国乙10351‐6
電話 : 0261‐82‐2224
地図

道の駅 小谷
〒399-9601 北安曇郡小谷村北小谷1861−1
電話 : 0261−71−6000
営業時間 : 午前10時〜夜9時

小谷村は、栂池高原、白馬乗鞍温泉、白馬コルチナの3つのスキー場を抱え、隣接する白馬村とともにウィンタースポーツの聖地として有名です。お越しの際には是非、通に大人気の、甘くておいしい期間数量限定の雪中甘藍をチェックしてみてください!!

小谷村観光情報

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農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

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