雨の中ブロッコリーの成長の具合を確かめる水澤さん
個々の農家の技術指導はもとより、その経営から地域全体を見渡した調整役まで、JAの中核を担う営農技術員に女性の姿が見られるようになってきました。JAに営農指導者組織が設立され、今年で70周年。JA長野県営農指導者会議によると本年度、県内14JAなどに所属する営農技術員は662人。このうち女性は1割に届きませんが、新卒者を中心に採用が増えつつあります。2人の若手に志望の動機、日々の仕事の様子をうかがいました。
JA長野八ヶ岳南相木営農センター
水澤萌子さん
「毎日、満員電車に乗って職場に通うような将来をイメージできませんでした」
高校まで東京・池袋で育った水澤さん。都会脱出は信州大学農学部への進学から始まりました。
大学では乳牛を中心に酪農を学びました。そのまま農業分野での就職を考えているときに営農技術員の存在を知り、JA長野八ヶ岳のインターンシップ(就労体験)に参加。川上村で一面に広がるレタス畑を見て、野菜栽培に興味を持ち、昨年、同JAに入りました。隣の南相木村にある同営農センターに配属され、ハクサイやレタスなど野菜農家の支援に携わっています。
毎年が新たな挑戦
狭い山道も軽ワゴンですいすいと
「1年目は何も分からず、最近になってようやく農家から相談を受けるようになりました」と目を細めます。
「野菜に限りませんが、農業は生き物相手ですから、天気を含めた環境次第でいいものができたり、できなかったり。毎年が新たな挑戦です。面白い仕事だと思います」
夏場は高原野菜の出荷最盛期。水澤さんも午前中は農家から出荷される野菜の荷受け作業を手伝い、午後に農家の畑を回って出来具合を確かめる毎日です。
「とにかく、いろいろなものを見て回るのが勉強です。一番知っているのが現場の農家ですから」
村内に借りた家も周りには畑が広がり、午前3時ごろにはトラクターの音で目が覚めるときも。
「私自身もそうでしたが、スローライフ的なイメージで農業を始める人がいますが、種まきから定植、防除、出荷まで、思っていた以上にせわしないものです。その辺りのギャップが就農した方が続けられない原因の一つかもしれません」
奥深い農業、頼られる存在に
水澤さんは、今年になってから自分でも畑を借りて作っています。
「1a(アール)にも満たない面積ですが、農家なら値段が安くても出し続けなければいけません。厳しい面ですね。ひょう害でサニーレタスに被害が出たときは、『出荷できないかなぁ』と肩を落とす農家の言葉に思わずうなずいてしまい、先輩から『わずかでも出荷できるよう前向きな提案をするように』とアドバイスされました。気遣いの大切さを学びました」
男性が目立つ農業現場ですが、「奥さんが手伝っている例も多く、女性だからと違和感はない」とのこと。
「野菜の病気や生育の遅れなどの原因は一つではありません。経験を積んで一日でも早く農家から頼られる存在になりたいと思います」