1985年、昭和60年に、環境省が日本全国の名水100選(昭和の名水100選)を発表してから20年以上が経過した今年6月、同省から「平成の名水100選」が発表されました。
環境省では今回の選定について「昭和の名水100選が発表されてから今日までに水をめぐる環境が変化し、水のある暮らしや風景の復権を強く求められる情勢となっていることから、水環境保全の推進を目的に、特に地域住民による主体的かつ持続的な保全活動が行われているものを選んだ」としています。
自然豊かなわれらが長野県には名水のイメージをもたれている方も多いかと思いますが、県内では昭和の名水100選で3箇所が、今回の100選では4箇所が選ばれ、計7箇所の環境省認定の名水があります。
そこで、当「長野県のおいしい食べ方」では、今回の平成の名水100選で選ばれた信州の4つの名水「観音霊水(飯田市)」「まつもと城下町湧水群(松本市)」「木曽川源流の里 水木沢(木祖村)」「龍興寺清水(木島平村)」を巡りレポートする不定期の連載をお届けすることにしました。長野県のおいしい水を求める旅、その第1回目は飯田市南信濃に湧きいずる「観音霊水」です。
そこは長野県の最南端
飯田市南信濃は静岡県と隣接する長野県の南の端に位置します。東京方面からは中央自動車道松川ICから、名古屋方面からは飯田ICから1時間ちょっと車を走らせると到着します。高速道路を降りてからの道は進むほどになかなか険しく細くなり、車1台分の幅しかない場所もあり、そこでは、工事用の信号を使って交互に通行します。
上村という地区を過ぎると南信濃に入ります。ほどなく観音霊水の案内板が見えてきますので指示に従って進むと給水場のある龍淵寺というお寺に到着します。
週末には行列のできる水場
駐車場に車を停め、寺に隣接する給水場に近づくと観音様と思われる像とカエルの置物などが置かれており、少し独特の雰囲気があります。給水場の横には、ここを訪れた人用の記帳ノートが用意されており、これまでに訪れた人たちの記帳ですでに数冊が積まれていました。中を見てみると水の感想や「おいしい水をありがとう」といった感謝の言葉が並べられています。取材当日は平日であいにくの雨模様だったこともあり、水を汲みにくる人はチラホラと見かける程度。しかし、地元の方に話を聞くと、週末には県外から水を汲みに訪れる人もいて、行列のできるほどの人気ということで、複数のマスメディアに取り上げられたり、Yahooジャパンのトピックスにも情報が掲載されるなどして、地元住民のほかに観光客などにも人気が飛び火したそうです。
日本でも珍しい硬度の高い水
観音霊水は地元住民で作る「観音霊水を愛する会」が保全管理をしており、毎日の給水場の清掃や月1回の水源地周辺の清掃や点検といった保全活動を行っているそうで、こうした点も今回の選定の大きなポイントとなったのではないでしょうか。その観音霊水を愛する会が作成した資料を見てみると、この水はカルシウム、マグネシウム、炭酸水素の含有量が豊富で弱アルカリ性の硬水。硬度は178.0で、これは国内の水では非常に高い数値だそうです。
さて、そうした知識を仕入れたところで、さっそく一口飲んでみると「すっきりしたまろやかな口当たり」でごくごくと飲めます。硬水という言葉のイメージから、やや飲みづらさがあるかと思っていましたが、そんなことはまったくありません。資料によると、この口当たりの良さも観音霊水の持ち味と書かれています。
なるほどこの水はおいしい!
給水場の裏手には盛平山という山があり、少し上ればちょっとした展望台になっています。ペットボトルに観音霊水を汲み、しばし歩いて南信濃の町を見下ろす展望台に登ってみます。あいにくの雨模様でしたが眼下に広がる雲の垂れ込めた景色を眺めながら飲む名水は、また一層とおいしく感じられました。
関連サイト:
観音霊水に関する問い合わせ先:
遠山郷観光協会(電話:0260−34−1071)
秘湯と秘境の里・信州遠山郷観光協会
参考サイト:
平成の名水100選
平成の名水100選から観音霊水のページ