青い山々。さわやかな風。清らかな水の流れ。信州の河川で初夏の風物詩と言えば、鮎。全国的な鮎釣りの解禁は6月1日になっていますが、高原の信州では水温があがって鮎が成長する6月中旬から7月にかけての解禁となります。
本格的に解禁です
県内のトップをきるのが天竜川下流域(下伊那地域)の下伊那漁協で、今年は6月9日に解禁となりました。次いで千曲川下流域の更埴漁協が6月16日に、そして順次、中流・上流まで解禁となるのは7月中旬までとなります。(長野県の解禁リストはこちら)
信州でのこの時期の鮎漁は、友釣りによるものが主流で、解禁を待ちかねた太公望が全国から訪れて、10メートル近い長い竿を操り「磯の大物、鮎の友釣り」といわれる当たりの引きを楽しみます。
なぜ鮎を放流するか
鮎は、年魚とも呼ばれるように、1年で成長して産卵し一生を終える魚で、川と海を行き来します。春から夏にかけて、幼魚から成魚までの間を川の中流域で過ごし、秋には下流に下って卵を産みます。卵から生まれた稚魚はさらに海まで下り、冬の間は沿岸で過ごします。そして7〜8cmに育った幼魚が春に川を上り、中流域で成長するのです。
しかしこのように鮎が自然に分布するには、川の状態が海まで自由に行き来できる必要がありますが、千曲川や天竜川は発電用ダムがあるため、毎年流域の16の漁業協同組合が鮎を放流しているのです。今年の放流量は約35トン、数では350万尾とのことです。
味も姿も土地ごとに異なる
放流する鮎の稚魚は琵琶湖から持ち込まれたものが多く、琵琶湖ではあまり大きくならないため「コアユ」と呼ばれていますが、河川に移植すると急速に「大アユ」に成長します。このほか県内の水産試験場で人工飼育された稚魚も放流されています。4月に放流する稚魚は体長8〜10cmですが、6月の解禁日になると17〜18cmに成長するというのですから、成長速度はかなりのもの。このことから鮎はサケと並んで、栽培漁業の優等生なのです。
成長した鮎は味も、姿形も、その地域特有のものがあるそうですから、各地の河川で釣りや味を楽しんでみてください。
釣ってよし食べてよし
関西では「アユ寿司」が有名ですが、信州では塩焼きにして食べるのが一般的です。焼くと香ばしいことから、別名「香魚」とも呼ばれますが、川藻を食べていることでこの香りがするというのは間違いで、実は不飽和脂肪酸が酵素によって分解された時の匂いなのだとか。いずれにしても、釣ってよし食べてよしの魚です。
千曲川中流域の佐久地区から千曲市までの「つけば小屋」では、ウグイに続き鮎の解禁から友釣りのオトリ鮎を販売したり、鮎料理を出します。川を眺めながら塩焼き、田楽、天ぷら、鮎刺しといった料理を楽しむことができますよ。また、鮎の内臓の塩辛である「うるか」は珍味として土産品にもなっています。
長野県漁業協同組合のホームページ
関連記事 長野県のおいしい食べ方アーカイブ:「千曲川の初夏の風物詩、それはつけば料理」(2007年05月23日)
参考図書 「信州の釣り」信濃毎日新聞社編 「千曲川の自然」中村浩志編著(信濃毎日新聞社)「信州ふるさとの食材」武田徹監修/長野県商工会連合会編(ほおずき書籍)