みなさんは、りんごをどうやって食べますか? まるかじり? 皮をむいて? そうですか、ふーん。この氷点下の季節、リンゴがどうしたって?? いやいや、今回はリンゴ大好きなみなさんが、まだまだご存知ないであろうもうひとつのりんごの味を、そう、その舌を必ずやうならせる一品を、今回はご紹介いたしましょう。
信州北部に位置する中野市で、常に根強い人気をほこる無添加の「りんごと野菜のペースト」が、それなのです。りんごと野菜をふんだんに使ったペーストなのですが、メインは蜜がたっぷりつまった信州中野産の「完熟ふじ」を贅沢に使っているところ!
この「りんごと野菜のペースト」ですが、つくっているのは、JA中野市女性部グループのひとつ、同市高丘地区の「手作り工房M&K」のみなさん。そう、みなさんはりんごや農産物を生産する奥様たちなのです。
ですから、材料は当然自家製のりんごや野菜たちを使います。安全・安心はもちろん、信州の屈指のりんご産地の完熟ふじを使ってるわけですから、味は保証付き!
この秘伝のペーストは、なににでもあうのが特徴。若い方にオススメするのなら焼肉のタレに。お年をめした方にはサラダのドレッシングになど使い方はさまざま。焼ナス、揚げナス、湯豆腐にもピッタリ。キノコやアスパラにかけたりすると、野菜の味をさらに楽しめてもくれます。
おいしいの声に支えられてロングセラーになりました
「手作り工房M&K」は、手作りを基本として地元産農産物の加工と販売、ヒマワリや蕎麦などを遊休地に栽培して、地域を明るく元気にしようと高丘地区の奥様12名が集まり1992年に活動をはじめたもの。活動開始からすでに、なんともう15年以上になります。
『高丘をひまわりの里』にしようとはじめた遊休地へヒマワリを栽培する活動は、今も毎年続けられています。夏にヒマワリが地域を包み、その咲きっぷりは実にみごと。同市から2001年にはグループの努力がたたえられ、「景観賞」を受賞しました。また、人々の目を楽しませた後は、ひまわりの種をヒマワリ油に加工し、主力商品として販売もしています。
現在「手作り工房M&K」では、加工品はリンゴジュースやジャム、リンゴと野菜のペーストなど、ラベルからはじまってすべて手作りの温かみのある17種類の商品を手がけています。冬にはペーストを作り、夏、秋にはジュースをつくったり、その季節の旬を加工しています。「ひとつひとつ、その時期にあったおいしいものを提供していきたい」と代表の小野沢ますみさん。
メンバーのひとり、宮沢和子さんは、この工房の発足は「生産する農産物のうち、小さな傷がついたり、小ぶりだったりするものをどのように付加価値をつけて販売していくかみんなで考えたことがきっかけ」と当時を振り返ります。そして、味は良いリンゴをいかして研究に研究をかさね、試行錯誤を繰り返した結果、ついに「りんごと野菜のペースト」が完成し、96年に商品化が実現したのです。
コクとまろやかさはふじのもの
今回、取材で訪れた中野市農協加工センターで、実際にペーストのつくり方を拝見することができました。センターのなかには、蜜がしっかりはいった完熟ふじばかりが約30キロほどすでに準備されていました。とても、よい香りがあたりにひろがっています。ついついりんごを、つまんでしまう場面も。完熟したふじだと、より一層コクが出てまろやかになるそうです。
材料はりんご、野菜、しょうが、ごま、ニンニクなどなど。つくり方は材料をすりおろし、醤油・砂糖などで味付けして煮込めばほぼ完了。あまり、手を加えず本来の味をいかすのだそうです。一番大事なのはその割合ですが、それはやはり企業秘密だとか(笑)。
たくさんの声を聞きながら作りあげた味
「はじめの5年ぐらいは手探り状態でした。大手スーパーに行って対面販売を根気強くつづけ、試食重ねてひとりでも多くの人に食べてもらいたかったんです」と宮沢さんは笑顔で話します。美味しいと言ってくれる人、ニンニクが多いと言う人など反応はさまざま。「消費者の方の声を聞くことがほんとに勉強になりました。それぞれの意見を大事にして、次の加工にどう反映するか検討しました。一般の人に受け入れてもらえる味にするのが大変だった」
それだけではありません。リンゴもタマネギも、野菜すべて、その味や甘みが毎年違い、これらを一定の味にまとめるのが難しいのです。品質と味にこだわる農家の奥様だから、ひとつひとつの作業が丁寧に行われていました。素材のすりつぶしの大部分は機械がやってくれますが、最後は人の目や手で念入りにチェックをしなくてはなりません。しかもメンバーは現在でも、大手スーパーへ積極的に行き対面販売を行っています。
愛され続けて今では年間2000本も!
商品化されて10年。中野市で愛される「りんごと野菜のペースト」は年々、本数が増えて、今では年間約2000本を製造するようになっています。お客さんはすっかりおなじみで、リピーターが多く、一度味わうとやみつきになるという声も聞こえます。
課題は、手作りなので企業のものよりコストがかかること。しかし、手作りの味のおいしさ、良さをたくさんの方に知ってもらいたいと、メンバーのみなさんは声をそろえます。最後にとっておきの食べ方を聞くと「カレーのかくし味に入れるとコクがましてさらにうまみがでるのよ」と教えてくれました。みんなが大好きなカレーです。実際につくってみると「りんごと野菜のペースト」はなんだか、母の持つかくし味みたいでした。
今回紹介した手作り工房M&Kの心のこもった一品は、信州中野インター近くの同JAの農産物直売所「オランテェ」にて販売中です。「
りんごと野菜のペースト」は300グラム、380円。手づくり工房M&K(電話)0269−26−6085 までご連絡いただければ、地方発送も可能です。