長野県ではニジマスの養殖が盛んです。年間の生産量は約1,500トン。静岡県に次ぐ2番目の生産量を誇ります。ニジマスは、年間を通じて水温が10度から15度で、夏でも冷たく、よく澄んでいて、流れが速く、酸素を多く含む渓流や湧水の水を好むために、北アルプスの湧水が豊富な安曇野市が、特にニジマスの有名な産地になっています。
信州のニジマスの豊かな味わい
ニジマスは、虹鱒と書き、サケ目サケ科に属する淡水魚。英語名も「Rainbow trout」で、北アメリカの太平洋東岸およびカムチャッカ半島が原産地です。日本には明治10年(1877年)に移入され、長野県では大正11年(1922年)にニジマスの養殖がはじまりました。一時は年間4,000トンを超える生産量がありましが、消費量が下がったために、生産量も減ってきています。
ニジマスは、クセがなく淡白な魚ですが、栄養バランスも良くて、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)が多く含まれています。ニジマスの料理と言えば、塩焼きが一般的ですが、これは20cm前後で120〜150gの1年もの。2年目は30〜40cmで400gになり、ムニエルやバター焼きなどに向きます。3年目になると、50〜60cmで1kgまでになり、刺身や燻製にして食します。一般のスーパーの流通には乗らず、飲食店やホテル・旅館の業務用にまわるため、信州を訪ねた折に食べて見ると良いでしょう。
ニジマスから生まれた信州サーモン
安曇野市明科にある長野県水産試験場では、この時期になるとニジマスの採卵作業がはじまります(写真)。飼育池で3年間飼育したメスのニジマスから卵を採り、オスのニジマスから採取した精子をかけて受精させるのです。
1匹のメスから3000個の小ぶりのイクラのような卵が採れます。受精後20日くらいで眼がわかる発眼卵(はつがんらん)になります。それから15日くらいでお腹に栄養をつけた稚魚になり、水の底でくらします。そこからさらに30日で、エサをとるようになります。試験場では、発眼卵やエサをとるようになった稚魚の状態で、養殖業者に出荷をします。
県水産試験場は、ニジマスのメスとブラウントラウトのオスを交配させた「信州サーモン」を2年前(平成16年)に実用化しました。信州サーモンは、卵を産まないメスのみの三倍体の染色体を持ち、産卵に要するエネルギーが失われず、そのまま旨味と栄養に凝縮された、信州ならではの食材として注目されています。
適度な脂はトロリととろける舌ざわりと豊かな味わいを醸し出します。クセがないので、刺身のほか、和洋中どんな料理にも適しています。こちらも、信州を訪ねた折にぜひ食べてみてください。
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