少し黒っぽくて、いかにも地粉で打ったという感じの打ちたてのうどん。これが「千曲うどん」です。「千曲」と書いて「ちくま」と読みます。日本で一番長い川である千曲川(信濃川)の流れる長野県千曲市で作られる「千曲うどん」は、地域特産の小麦であるユメセイキを原料に、市内の女性グループが挑戦して完成させたまさに夢のうどんです。連載6回目ののローカルフードは、地域のさまざまな人々が協力して取り組んだユメセイキのうどんにスポットを当ててみました。
夢のうどんができました
2003年12月に発足した「手づくり工房夢麺(ゆーめん)」という女性たちのグループでは、千曲市産石臼挽きユメセイキ100%を手打ちで仕あげる生うどん「信州の夢千曲うどん」を製造・販売しています。
メンバー19人が交替でうどんを打つのです。朝、仕込んだうどんを延ばすタンタンという音が工房に響き、次々と生うどんが仕上がります。太麺と細麺の2タイプがあり、それぞれ300グラムで1パック290円。1日に100食程度がJAちくま管内のA・コープ店で販売されます。
彼女たちのうどんは、地粉のユメセイキを使ったおいしいうどんとして、地域で確実にファンを増やしています。千曲うどんは、2004年に日本農業新聞主催の一村逸品大賞の金賞も受賞しました。
打ちたてのうどんを食べてほしい
夢麺は、うどんやそば打ち教室を定期的に開き、家庭での手づくりや地産地消(自分たちの生活する地域で生産されたものを食べること)も進めているほか、地元の小学校などで開かれるそば打ち教室などでの指導といったボランティア活動も積極的に行なっています。また、千曲市内を中心としたイベントなどにも出店し、ちくまうどんなどを直売することもあります。代表の小松たつ子さんは「工房で食堂を開き、打ちたてのうどんをみなさんに食べていただくことが夢」と話しています。
「夢麺」の千曲うどんは以下のところで取り寄せもできます。
手づくり工房夢麺 長野県千曲市内川794-47 JAちくま農産加工センター 電話 090-9357-2915 FAX 026-276-0286
ユメセイキという信州産小麦
ユメセイキは長野県農事試験場が開発。アミロース含有量が少なく、もち性でんぷんの割合が高いため、もちもち、つるつるとした食感が特徴です。01年に県の奨励品種として普及に移しました。これより先00年にJAちくまが5ヘクタールの試験栽培をはじめ、06年には60ヘクタールに拡大しました。
千曲市、長野市、JA全農長野、JAちくま、JAグリーン長野、長野県製粉協同組合、柄木田製粉株式会社、長野農業改良普及センターが04年にユメセイキ産地化推進会議を発足。地元で生産される「ユメセイキ」などを用いて、讃岐うどんや稲庭うどんなどのように、地域特産を目指しています。ご当地うどんとしてふさわしい親しみやすい名称を募集して「信州の夢 うどん」と決め、商標登録をしました。この「信州の夢 うどん」の認証制度を設け、消費者の信頼を高めることで、その需要の拡大と定着を図り、小麦の産地化と地産地消を進めています。
粉食は信州のライフスタイル
信州といえば一方でそばが有名ですが、長野県はうどんやおやきといった小麦粉の消費も非常に高いのです。総務省の平成17年度家計調査によると、小麦粉の購入金額は1世帯当たり全国平均447円ですが、長野市は946円と群を抜いています。これは、粉物を家庭で調理して食べることが日常化しているという状況を端的に示しています。
都市階級・地方・都道府県庁所在市別1世帯当たり年間の品目別支出金額(全世帯・勤労者世帯)2005年(総務省家計調査データ・Excel のファイル)
ユメセイキのうどんが食べられる店 あんずの里物産館
ユメセイキについての詳しい情報は 柄木田製粉株式会社ウェブサイト「麺匠からきだ」へ。