ここ数年で「グリーンツーリズム」という言葉をしばしば耳にするようになりました。グリーンツーリズムとは、休日や余暇を利用して、緑豊かな農山村地域でその自然・文化・人々との交流を楽しみ、ゆったり充実した時間の過ごす、そうした旅のカタチのことです。ただ単に自然を満喫するためだけでなく、農山村の体験をはじめとして地域の生活や文化にふれること、特に地域の人々とふれあいながら、人間らしい生活や暮らしの魅力を再発見することにあります。現在全国各地で、都市部を中心とする自然回帰志向のニーズと農山村の皆さんの地域おこしなどのニーズを受けて、双方のかけ橋になっているのが、このグリーンツーリズムなのです。信州でもさまざまな、新しい形のグリーンツーリズムが提案されてきました。今回は、そのなかからちょっと素敵なホッとできる特別なところを紹介しましょう。これからのバケーション計画にぜひ入れてください。
なべくら高原の森の家で森の生活を
信州北部に位置する飯山市。そのまたさらに最北部、新潟県境に鍋倉山はあります。この山には雄大なブナ林が広がっていて、その中でも「森太郎」と呼ばれる大きなブナの木が日本の巨樹・巨木100選にも選ばれています。この鍋倉山の裾野に「なべくら高原森の家」はあります。6ヘクタールをこえる敷地をブナの森や自然そのままの渓谷などか取り囲み、建物にいても、素朴な季節感やダイナミックな自然を肌で感じることができます。5月の今は、ブナの新緑とまだ厚く残った白い雪が見事なグラデーションをみせてくれています。この「森の家」では年間を通じて自然そのものを体験することができます。そばうちやクラフトなど家族みんなで楽しめるものから、森の真ん中で心ゆくままのんびり過ごしたい方まで、常時スタッフが森の過ごし方をアドバイスしてしてくれます。また、体験によって地元市民インストラクターが地域の案内もしてくれます。
農作業体験は国有農場で
地元の素材や自然を活用した体験プログラムは300種類以上にものぼるほかにも、ブナやミズナラの森のなかの自然散策や森林の素材を活用したクラフト、目の前に広がる260ヘクタールもの国有農場で地域農家のみなさんとふれあいを通して農作業も体験できます。また、7月、8月には「森の学校」が開校し毎日野遊びを存分に楽しむことができます。
そば畑オーナーも募集中
なべくら高原ではそば畑のオーナーも募集しています。そばどころ信州ならではの人気企画です。でも、オーナーになったらいつもそば畑の管理をしなくちゃいけないの? と心配される方もいるかもしれませんが、ご安心。あなたのそば畑はなべくら高原そば百姓が管理してくれます。夏の種まき、秋の収穫・そば打ち体験はもちろん、ご自宅へおみやげとそば粉をお届けしますし、さらに、12月には「東京出張そば打ち」もあり、東京にいながらあなたのそば畑のそば粉でそば打ちを体験できるのです。ご家族と友人と一緒に、信州のそば味わってみませんか。
里山再生プロジェクトこらっせオラほ村
オラほ村は自由参加型のふるさと暮らし。四季とりどりの色を肌で感じることのできる日本の原風景のような村が舞台です。この美しい村にも時代の流れで村人はの多くはお年寄りに。なんとかこの美しい景観・農業・知恵を残したい、再生したい、そんな思いからオラほ村の活動はスタートしました。今年は今まで再生した畑に作物を栽培します。農業は種まき収穫だけではなく農作業とその間にも集落にのこる技術・知恵が集約されています。昔ながらの生活を通してふるさと暮らしを自発的にボランティアとして体験するのはいかがでしょう。参加費無料。5月28日(日)には畦草狩りが予定されています。
なべくら屋宅配便で飯山の味をお届け
「森の家」がとっておきの飯山旬の味を提供しています。なべくら高原は昼夜の温度差が大きく、適度な日照時間が農作物等をおいしく育ててくれるところです。野菜は「朝採り」を基本とし鮮度が抜群。少々不揃いな物もありますが、どれも農家の方が心をこめて作ったもので味は保障付き。また、春限定の雪の下で一冬寝かしたスノーキャロットなど、季節ならではの食材もありますので、一度チェックしてみるとよいかも。
今年は信州で森の生活を
なべくら高原「森の家」には、ここで紹介したもの以外にも、ブナの森保全活動や信越トレイルなど、まだまだ企画イベントが盛りだくさんあります。それと、なんと言っても素敵な笑顔のスタッフや暖かい住民のみなさんのおもてなしも魅力のひとつです。ウエブサイトでいろいろチェックして、質問があれば電話をかけて、これからの信州の森が一番美しくなる季節の計画をお立てください。
JAもグリーンツーリズムに積極的
このなべくら高原「森の家」がある飯山市にあるJAは、JA北信州みゆきです。そしてこのJA北信州みゆきは、グリーンツーリズムを全国でもいち早く取りいれてきたところでもあります。そこでこのJA管内での今現在の取り組みも紹介しておきましょう。管内は同季節草木の緑が日増しに色濃くなっていくことを実感できる地域です。現在は田植えやアスパラなど農作業が精力的に行われています。このJA北信州みゆきでは日本生活共同組合連合会と連携して取り組む農村都市交流事業「グリーンライフ」を行ってきました。主に都市部の生協組合員が飯山市内を訪れ、ブナ林散策やカヌー体験、野菜収穫など、自然と田舎暮らしを楽しんでいます。交流拠点となる管理をしてくださる岡山地区の方とグリーンライフ農園で自らが収穫した野菜を使って、みんなで一緒に昼食を楽しむこともあります。そのほか、自然体験教室や長期子ども体験村など、飯山市・地域が一体となって街の人たちを暖かく迎えいれています。
今回、北信州のちょっと素敵なホッとするところを、駆け足でご紹介しましたが、長野県の各地でさまざまな取り組みが行わてます。自分だけのグリーンツーリズムを発見しコーディネートしてみるのも新しい生活のスタイルかもしれません。ことさらに信州の有名な観光地でなくても、のんびりと農山村を満喫できる素敵なところを紹介しているサイトが長野県グリーン・ツーリズム協議会事務局が運営するグリンでる信州です。ぜひことあるごとにチェックしてみてください。グリンでる信州では、グリンツーリズム情報が満載された情報誌『グリンでる信州』2006年版を、ただ今希望者のみなさんに差しあげています。詳しくはグリンでる信州のウェブサイトで。
最後にグリーンツーリズムの歴史をすこし
グリーンツーリズムは欧州からはじまりました。イギリスでは、ルーラルツーリズムやサスティナブルツーリズムと、イタリア、スペイン、オーストリアでは、アグロツーリズムと呼ばれています。1930年に伝統的な農業国家フランスでバカンス法が制定化されて、週休以外に、長期の有休休暇が取れるようになり、市民の農山漁村への旅行がはじまりました。
日本では1992年に農林水産省が「新しい食料・農業・農村政策の方向」においてグリーンツーリズムを農村地域政策の一環として位置づけ、このとき「グリーンツーリズム」ということばも提唱されました。「緑豊かな農村地域において、その自然・文化・人々との交流を楽しむ、滞在型の余暇活動」というのが定義です。なお、日本ではグリーン・ツーリズムとして事業展開がはじまる以前から、都市と農山漁村との交流事業が各地で実施されていました。グリーンツーリズムと呼ばれていたかどうかは別にして、その趣旨に沿った取り組みは昔からあったようです。
そうだ、今年は農村へ行こう!
欧州では都市の人が農村に長期滞在してのんびりと過ごすというものでしたが、日本は都市と農村の距離が比較的近いことや、長期休暇がなかなか取りにくい労働環境のために、日帰りや短期滞在のスタイルが多いのが大きな特徴といえます。今はまだまだ、日本人の生活観・行動パターンに合ったグリーンツーリズムが模索されている状況にあります。さらに近年、スローフード、スローライフなど、効率万能、規格量産化に疑問視され、自然と人間のかかわりが縁遠くなってしまったことを考える人が増えているようで、こうした時代の動きを背景に、グリーンツーリズムに関心が高まってきたといえるでしょう。そして緑が豊かな信州はこのグリンツーリズムのメッカとして今後も独自の発展をし続けることでしょう。
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