長野県は「宇宙県」です。ご存知でしたか?
2年前(2016年11月)に「長野県は宇宙県」という宣言がされ、それに伴うイベント「長野県は宇宙県、スタンプラリー2018」が、今年も始まりました。
ところで「宇宙県」ってスゴいですよね。どういうことでしょうか。そこで、八ヶ岳山麓の南牧村にある国立天文台野辺山宇宙電波観測所にお伺いし、宇宙県についてお聞きしました。この観測所は、JR駅の中で日本一標高の高い小海線野辺山駅(標高1,345m)のほど近くにあり、周りは見渡す限り高原野菜の畑です。おいしいレタスと宇宙県の関係も気になるところです。
宇宙観測に欠かせない環境が整っている長野県
広大な敷地に点在する巨大なパラボラアンテナ(電波望遠鏡)に圧倒されながら観測所事務所へ。出迎えてくださったのは当観測所の広報を担当されている衣笠健三さんです。もっとも衣笠さんの肩書は「広報担当」ではなく「特任専門員 理学博士」で、科学者らしくとても筋道の通った語り口で、わかりやすく説明してくださる方でした(安心)。
「長野県は全体的に標高が高く気温が低いですよね。だから観測上じゃまになる水蒸気が少ないし、空気もきれいなので天文観測には最適なんですよ」と、衣笠さんの説明が始まりました。たしかにこの近くでは佐久市にあるJAXAの宇宙空間観測所が今話題の「はやぶさ2」の制御で有名ですし、木曽地域にも東大木曽観測所をはじめ複数の観測施設が存在しています。
宇宙県を宣言するに至った理由はいくつもあるのですが、その最たるものは、何といっても日本で一番宇宙に近い、つまり星空がきれいということに尽きるようです(長野県は都道府県の中で平均標高が日本一です)。
2回目の開催となった「長野県は宇宙県、スタンプラリー2018」は、昨年よりぐっと期間を延ばし2018年11月4日までの約3カ月半開催されています。「天文ファン以外にはなかなか広まらなくて」と苦笑する衣笠さんですが、夏休みには県外の方もたくさん参加されるということで、今年は盛り上がりを期待したいところです。できるだけ一般の方にも関心をもってほしいというのが衣笠さんの願い。
「スタンプラリーを通して、長野県が『宇宙県』と呼べるくらい素晴らしい環境だということを認識してほしいのと、これからも星空が見える環境を守っていく、といった意識が広まればいい」と衣笠さんは話します。なるほど宇宙県宣言の狙いはそこにありましたか。
宇宙に一番近い畑で育つ高原野菜
さて冒頭にもお伝えした通り、この観測所は広大な高原野菜畑の真ん中にあります。それは決して偶然ではありません。おいしい高原野菜の育つ環境と天文観測に最適な環境はまったく同じなのですね。
標高の高さゆえに夜の空気が澄み、冷涼だということは必然的に昼夜の寒暖差が大きい、ということでもあります。それはそのまま高原野菜の適地と重なります。
観測所のすぐ横の畑でレタスを生産している青木洋介さんにお話を伺ってみました。父親の跡を継いで生産者として15年のキャリアを持つ青木さんは、レタス・キャベツ・白菜などを生産していて、いままさにレタスの収穫がピークに差し掛かろうとしています。「収穫は午前3時から6時ころ。遅くとも9時までには終わらせます」と言う青木さん。「このところ暑い日が続いていたけれど、夜は少し寒いくらいなので、それは野菜の品質には明らかに関係しますね」と、説明します。畑には、そのままかぶりついてもおいしそうなレタスが一面に育っていました。
「県外で暮らした経験もありますが、ここは夜の星の数が全然違う」と言う青木さんですが、仕事を始める夜3時ころに星を見るかといえば、そうでもないようです。まあ、上を見ている暇はないですよね。
野辺山では夜が明ける前から大型のコンテナトラックが至る所に停車しており、ピーク時は毎朝200台くらいが集結するのだそうです。こうして早朝収穫された高原野菜は直ちに各地の消費地に運ばれます。
恵まれた自然環境と、熱意のある生産者、そして素早い流通システム、それらが合わさって私たちはシャキシャキの新鮮野菜を食べられるんですね。(つかはら)