空にはうろこ雲、そして朝晩はコオロギやスズムシなどの虫の声と、だいぶ秋の気配も漂ってきたこの頃です。が、日中は湧き上がる雲にセミの声と、まだまだ暑さも厳しいもの。そんな暑さでグッタリする体には復活のパワーを補給すべし!! それならば、滑らかな口溶けの冷た〜いソフトクリームが一番です!
県内各地を巡ってみれば、地形の変化に富んだ信州ですから、それはもう、その土地ならではの農産物や特産品を使った様々なご当地ソフトクリームにであえます。
ということで、今週と来週はソフトクリームを食べながら、信州の農産物や特産品をご紹介していきます。
それでは早速、ソフトクリームの旅に出発です! 前篇は、県の南部と中部(南信・中信)篇でお届けします。
※ジェラードも含みます。ただし、牛乳の味わいがストレートに楽しめるソフトクリームの王道・プレーンタイプのものは除きますのであしからず。
鮮度抜群!さやわかな高原の味
セロリのジェラート
暑さを逃れようと、やってきたのは八ケ岳高原の麓に広がる諏訪郡原村。ここは、およそ1,000メートル以上の標高と、冷涼な気候を利用してつくられる高原野菜の産地です。なかでも全国で生産量トップなのがセロリ! そんな原村でみつけたのが「セロリのジェラート」です。
薄緑色が目に優しくて、ほのかにそれとわかる爽やかな香り。シャキシャキとしたセロリ繊維と、ジェラートのシャリ感とが相まって、COOLな世界へと誘ってくれる、さっぱりとした食べ心地。
ちなみに一般には「セロリ」と呼ばれていますが、生産者をはじめこの地元では「セルリー」と呼んでいます。
販売は、日本で最初のペンション村となった原村の別荘地にある「robin(ロビン)」にて。
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信州ならではのトッピング
バッタソフト
後ろ髪を引かれる思いで涼しい高原を後にし、町場を目指してやってきたのは、県内でも最も大きな湖の諏訪湖。夏は花火大会、冬には御神渡りの舞台となる場所です。さて、ここで待ち受けるソフトクリームは、今回ご紹介するなかでもひと際異彩を放つもの。
・・・そびえ立つ白いクリームに、色も食感もまるでそれとはマッチしない何かが突き刺さっていますが、もしやこれは・・・。そう、これが、諏訪湖遊覧船乗り場の名物「バッタソフト」。ここでバッタと呼ばれるのは「イナゴ」のこと。つまり、ソフトクリームに突き刺さっているのは、正真正銘、イナゴの佃煮なのです! エイッ、とばかりに思い切ってかぶりつけば、ソフトクリームの甘さと佃煮のしょっぱさと、これはあの塩スイーツの原理と同じ。と思えば味的にはさほど驚きはありませんが、ただしこのビジュアル。世間ではゲテモノなどとも言われます・・・。
けれど、よくぞ信州の文化を伝えているではありませんか。なぜなら信州人は稲に発生するイナゴを取っては、それを佃煮にして食べていましたから。昔はこれを貴重なたんぱく源として摂取していたのですから、まさに海なし県ならではの知恵。ということで、信州人から言わせれば「有り!」のソフトクリームです(もちろん個人差はありますが)。
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とうもろこしの甘みを閉じ込めました!
とうもろこしのソフトクリーム
次に向かった先は、「木曽路はすべて山の中である」という島崎藤村『夜明け前』の書き出しにもある木曽。シンボルの"御嶽山"の麓にあって、木曽の奥座敷でもある標高1,000メートル以上に広がる開田高原は、真夏でも最高気温は30度いくかいかないか。さらに朝晩の気温は18度前後といいますから羨ましいばかりです。
そんな朝晩の涼しさと日中との温度差でつくられる野菜は味も濃くて甘みもたっぷり。なかでも夏の定番、絶品とうもろこしは、遠方からわざわざ買いに来る人も多いのだとか。そんな開田高原のご当地ソフトは、もちろん「とうもろこしのソフトクリーム」。淡い黄色に、ふわりととうもろこしの香り、あっさりした甘さで食べやすいソフトクリームです。
販売は、開田高原アイスクリーム工房で。
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とりたての色と風味を味わう
本ワサビのソフトクリーム
続いて中信地方へ。北アルプスの麓に広がる安曇野平は今、稲穂が頭を少し重そうにもたげながら、緑色から黄金色へと田園風景を変えています。そんななかバッタリ出くわす道祖神は、こちらまで微笑ましい気持ちにさせてくれるやさしいお顔をしていました。
この安曇野では、北アルプスからの湧水を利用したワサビの栽培が盛んですが、なかでも日本一の規模が「大王わさび農場」です。
ここで食べられるのは「本ワサビのソフトクリーム」。売り場周辺では大勢の人がこのソフトクリームを頬張っていましたが、辛くはないのでしょうか!?
まさしくワサビ色、そしてクリームに混じる緑色の粒々。口にすると、後からほのかにワサビとわかる程度の余韻。ツ〜ンとした辛さはありません。これなら子供でも安心して食べられますね。ちなみにこちらではオリジナルのワサビ漬けをつくることが出来ますから、旅の記念にいかがでしょうか。また、ワサビの根は一年中食べられますが、茎や花でつくったお浸しは、春ならではのおいしさです。
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色と香りに癒される
ハーブ(ラベンダー&ミント)のソフトクリーム
信州ご当地ソフトクリームの旅、前篇の最後にやってきたのは、安曇野市のお隣り池田町。
道の駅「池田」にある「池田町ハーブセンター」で食べられるのが、「ハーブ(ラベンダー&ミント)のソフトクリーム」。やわらかなラベンダー色で、香りもほのかにハーブの香り。ハーブの里として知られる池田町で、日頃の疲れを癒してください。
また、この敷地内にある農家レストランでは、地元でとれたハーブや野菜を使ったフレンチ料理がお楽しみいただけます。
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みなさんは、どのソフトクリームを食べてみたいですか?
いつか食べたあのソフトクリームの記憶を思い出した方もいらっしゃったでしょうか?
さて来週は、県北部・東部(北信・東信)篇をお送りします。お楽しみに〜!