人々の想いが灯る長和町の「おたや祭り」

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「八日堂(注)が晴れなら古町のおたやさんは雪。古町のおたやさんが雪の年は豊作。」と言われているのは、長野県中東部に位置する、小県郡長和町古町の「古町豊受大神宮」で、毎年1月14日〜15日に行われる例祭、通称「おたや祭」です。
地元の皆さんが、「この冬一番の大雪」「ここ10年、いや20年でこんなに降ったのは見たことがない」と驚きの声を発した、2013年1月14日の小正月の灯ともし頃。今日はあの日までちょっと時間を巻き戻してみましょう。では、古町のおたやさんまでご一緒にっ♪

注)八日堂:上田市信濃国分寺で1月7日〜8日に行われる年中行事の八日堂縁日のこと。
おたやさん:田屋(たや)=開墾のための田んぼの小屋とも、旅屋(たや)=神宮の布教やお札を配る御師(おし)の宿泊場所とも言われている。


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厳かな中にあたたかな雰囲気
一年の平安と五穀豊穣を願う

おたや祭が行われる豊受大神宮のある長和町古町は、依田窪南部地方とも呼ばれ、長窪古町から長門町に合併後、さらに2005年の和田町の合併で誕生した長和町の一地区です。
前夜から重く降り積もった雪をザクザク踏み、境内の階段をのぼると、お参りの人々であふれる「おたやさん」の古町豊受大神宮です。すぐに目に飛び込んでくるのは、木曽義仲・巴御前とあるきらびやかな衣装をまとう人形達(この話はのちほど)。さらに階段を進み、まずは、お参りですよね。神社の作法に則って、二礼二拍手一礼。

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社務所内では今まさに、神主の立岩尊夫さんの柔らかな声による本日3回目の神事が、厳かな中にもあたたかな雰囲気で始まったところでした。昨年の恵みに感謝しつつ、今年一年の平安と五穀豊穣を願います。無類の祭り好きの編集部員も、穀物・食物を司る豊受姫大神をまつる豊受大神宮に、「今年も天候に恵まれ豊かな実りとなりますように」と一心に祈りました。

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今年は第33回式年遷宮の年
「社伝によると、1200年近く前の平安時代、承和元(834)年、世の乱れを憂い平安を祈るため、伊勢の神宮の外宮より奉り、その後、鎌倉時代の仁治2(1241)年に20年ごとに本殿などを新しく建て替える遷宮式を始めた、と歴史に現れています。そして歴史上、何度か遷宮の行えない年こそあれ、今年(2013年)が、第33回式年遷宮の年で、伊勢の皇大神宮に準じて神無月(10月)に行われるんですよ」と立岩神主。
神社総代長の桜井理男さんや、総代でもあり地元長門牧場社長の小林久雄さんは、揃いの青い法被に身を包み、「この大雪でね〜、人出が......」と心配しつつも、「今年の総代は当たり年で大忙しだよ」と笑いながら、神事やお札、おみくじの準備で大忙しでした。「10月20日にまたおいで」と遷宮式のポスターも持ってきてくれました。
お祭りの慌ただしさの中、突然だったにもかかわらず、丁寧に教えて下さって本当にありがとうございました!

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中学2年生の巫女さん
息の合った二人舞に感動

一方、隣の部屋からは、シャリーン、シャリーン......。鈴の音と共に「い〜ち、に〜の、次は......」と何やら声が聞こえてきます。しばらくすると巫女さん数人が現れて。「おおっ〜、巫女さん! やっぱり素敵」と編集部員の心の声が思わず出そうになったその時、巫女の皆さんがとってもかわいらしいことに気づきました。ぜひともお話を伺わねばっ!
すると、なっ、なんと全員中学2年生!
「おたや祭では、ここ古町の女子中学2年生が『浦安の舞(注1)』を奉納するのが伝統なんです」と話してくれたサイトウさん。昨年は4人でしたが、今年は10人でグループに分かれて6回巫女舞を舞うのだそうです。「鈴を持つ手の動きがムズカシイ。夏休みも一週間練習してたんです」とウチダさん。先ほどの鈴の音は......。今も練習してたんですね。
注1)浦安の舞:「浦」とは心を表すとも国を表すとも言われ、その年の平穏と平安を祈って舞う。

今回奉納するのは「扇の舞」「鈴の舞」の二人舞。「寒いし、緊張してる」と言いながらも、いよいよ本番です。思わず、こちらまで緊張してしまいました。

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「扇の舞」
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「鈴の舞」

お参りに来た人々や家族、幼馴染み、そして同窓生の巫女さん達が見守る中、二人の息もぴったりと一生懸命舞う姿に感動しました。伝統の舞は、こうして代々、確かに受け継がれていくのですね。

町内会ごとにつくる5つの山車
素朴さを越えた美しさは必見

すっかり暗くなった境内では、先ほどの木曽義仲&巴御前がライトアップされています。

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下町・藤見町第4場「木曽義仲 出陣の場」

こちら、実は山車(だし)注2なんです。山車と言えば、街を引き歩く屋台式の山車や御神輿などを思い浮かべた方も多いと思いますが、据え置き型の山車もあるんですね。
注2)山車:標山(しめやま)とも呼ばれ、神様の依り代(よりしろ)として神様をお迎えするために奉納するもの。また祭りを盛り上げる飾りものという意味もある。

珍しいのは、この山車が町内5カ所の路地にも奉納されていることです。町内会ごとに保存会の皆さんが、それぞれ今年のテーマを決めて趣向を凝らしてつくり上げる人形たちは圧巻。テーマは歴史上の人物や日本昔話から、今年の干支や世相を表すものなど毎年様々で、それが決まるまでが一番大変だそうです。
正月三が日が過ぎるや否や、毎日5〜6人体制で公民館などで一気に制作にとりかかるとのこと。木組みの型をベースに等身大ほどのわら人形を作り、和紙などで色鮮やかな飾りをつけたり、女性陣が衣装を縫ったりするそうですo(*^ー^*)o 「毎年正月を2回やるもんだよ」と笑って話して下さった女性も、出来栄えには大満足のご様子でした。

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上中町第2場
「大阪夏の陣 家康を追い詰めた乱世の英雄 真田幸村」

じっくり見てみると、その細部にわたって凝ったつくりに驚きです。人形の顔や衣装はもちろん、躍動感あふれる馬の足の動きをはじめ、背景の岩山や桜の木にも力が入っています。まるで舞台の一幕を見ているような幻想的な気分にひたることができました。大雪のため人形が壊れないようにとの手直しが大変そうでしたが、源義経の壇ノ浦の海戦の場面では、雪の演出が効果的で、見事な白波が表現されていました。素朴な農民芸術と言われているそうですが、数人で数日間の即興でつくり上げたとは思えないほどの美しさは、神様はもちろん、大勢の人の心を楽しませたことでしょう。

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中町第3場
「源義経 壇ノ浦八艘(はっそう)跳びの場」


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桜町第5場
「『八重の桜』戊辰戦争 会津鶴ヶ城の戦いの場」

今年のテーマは、
・上宿第1場「八岐大蛇(ヤマタノオロチ)戦いの場」
・上中町第2場「大阪夏の陣 家康を追い詰めた乱世の英雄 真田幸村」
・中町第3場「源義経 壇ノ浦八艘(はっそう)跳びの場」
・下町・藤見町第4場「木曽義仲 出陣の場」
・桜町第5場「『八重の桜』戊辰戦争 会津鶴ヶ城の戦いの場」

ちなみにこの山車、16日にはほとんど解体してしまうとのこと。もったいないと思ったのは編集部員だけではないはずです。

心と身体にしんしんしみる
地酒と地粉手打ちそば

山車を鑑賞した後はもちろん、屋台散策 o(´∇`*o)(o*´∇`)o
「お神酒を召さない神は無し」とも言いますし、冷え切った身体を温めなければっ! と言うわけで、地元の皆さん&参拝に訪れた皆さんと一緒に、あったかい地酒と、地元麺打ち職人による美味しい地粉手打ちそばをいただきました。 沁みました〜。

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長和町のおたや祭りのレポートはいかがでしたか? 伝統の技と心を感じる長和町古町を訪ねてみたいと思っていただければ幸いです。

追伸:
もう一つのお楽しみとして、この日の夜に予定されていた花火は、雪のため、翌15日に延期となってしまいましたΣ( ̄ロ ̄lll)
でも、これで今年の豊作は間違いなし! ですね。冬の花火は来年に期待しましょう♪ その際は暖かい服装でお越し下さいね。

◇関連リンク
長和町「おたや祭り」
さわやか信州旅.net「豊受大神宮 おたや祭り」

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