南信州の高原に、毎年この時期に人々を魅了して止まない花があります。メコノプシスという品種のケシの花なんですが、「ヒマラヤの青いケシ」の異名を持つ大変珍しい花です。なんでも栽培がとても難しく、「幻の花」とも呼ばれているといいます。
その幻の花がちょうど見頃を迎えているという情報を得た編集部。梅雨の晴れ間を見つけて、ヒマラヤの青いケシに会いに、下伊那郡大鹿村へ行ってきました。
南信州の美しい村、美しい花
下伊那郡大鹿村は、南アルプスと伊那山地に挟まれた山あいの村。「日本で最も美しい村」連合にも加盟しており、古き良き日本の原風景が残っています。また、民衆の歌舞伎として300余年前から続く地芝居「大鹿村歌舞伎」も有名です。
大鹿村役場から車で40分ほど登ったところに、幻の花を見ることができる農園がありました。
中村農園は、標高1,500mの大池高原にある切り花専門農園です。園内では様々な種類の花が育てられていますが、この季節(6月)には、青いケシを一目見ようとたくさんの観光客でにぎわっていました。県外からもたくさん来ていましたよ!
暑さに弱く手間がかかる高山植物
この青いケシは、「メコノプシス・グランディス」という品種で、原産地がヒマラヤやチベット、ネパール、ブータンなどの高山地帯であることから、「ヒマラヤの青いケシ」とも呼ばれています。つまり青いケシは高山植物であり、生育条件が厳しく、栽培がとても難しいということなのです。
「とにかく暑さに弱いからね。地面に藁を敷いたり、水やりをしたり、手間がかかるよ」と、農園主の中村元夫さんは話します。平成7(1995)年に200株ほどから栽培をはじめ、こつこつと増やすこと17年。今ではなんと5,000株以上の青いケシを栽培しており、この規模は日本一を誇ります!!w(*゚o゚*)w
標高1,500mに位置する大池高原は、年間を通して気温が25度を超えることがなく、適度に雨が降るので、青いケシの栽培に適した環境なのですね。確かに梅雨の晴れ間のこの日も、大池高原は涼しくとても快適に過ごせました。青いケシはきれいなだけあって、なかなかわがままなんですね...。
冷涼な気候で育つ可憐な花々
最初は切り花として出荷するために生産しはじめた青いケシでしたが、大変珍しくきれいなことから評判が評判を呼び、見学に訪れる人が増えたことで、平成10(1998)年より一部を観光農園として開業したそうです。中村農園ではこの日、青いケシのほかにも、九輪草(下左)やオダマキ(上右)、ケマンソウ(タイツリソウ)(上左)などを楽しむことができました。
親切な看板に沿ってくねくね道を進もう
山の中にある中村農園へ至る道は、もともと観光客が来ることをあまり想定していなかったため細く曲がりくねった道です。林道の運転に慣れていない方にはなかなか根気がいる道かもしれません。
青いケシの栽培を始めたころは、訪れる人が増えるにつれて道に迷う人も増え、地元の方たちに道を尋ねられる方がとても多かったのだとか。現在はちゃんと看板が要所要所に立てられ、迷わずにたどり着けますので、ご安心を。
青いケシ鑑賞後のお楽しみ
中村農園の近くには、神秘的な雰囲気をもつ大池や湖畔を散策できる遊歩道、大池高原キャンプ場、雄大な景色が楽しめるレストハウス、パラグライダー場などがあります。この日は雲が出ていましたが、雲のない日は伊那山地の向こうに伊那谷を挟んで中央アルプスを眺めることができるそうです。
青いケシは、7月上旬まで楽しめるということなので、今年の青いケシが見られるのもあと少しです。蒸し暑い梅雨のシーズンに、幻の花と涼を求めて、大鹿村に足を運んでみてはいかがでしょうか。
●中村農園
入園料:高校生以上 500円・中学生以下無料
開園時間:8:00〜17:00
青いケシ開花時期:6月〜7月上旬
●大鹿村