平成の大祭風景を後世に−武井神社大絵馬奉納

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毎年、正月三が日だけで40万人を超える初詣客でにぎわう善光寺の門前に、武井神社という由緒ある社があります。この神社でこのほど実に24年ぶりという出来事がありました。それは横幅3.6メートルにも及ぶ大絵馬の奉納で、江戸、大正、昭和の各時代の大絵馬に続く4枚目の絵馬奉納ということになります。
平成23年の年の瀬も押し迫った12月30日に武井神社を訪れ、一般にも公開された奉納式に参加してまいりました。

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若者たちが守った大絵馬奉納の伝統
武井神社は善光寺の鎮守ともいえる「善光寺三社」のひとつで、御柱大祭が24年に1回行われています。この大祭の様子が大絵馬に描かれて奉納された事が過去に三度あり、昨年9月に同神社で行われた御柱大祭の際も、なんとか平成の大絵馬を作り奉納することができないだろうか、という声が上がりました。
そんな声を受けて作られたのが、「平成の武井神社御柱祭大絵馬奉納プロジェクト」です。といっても、絵師もスタッフも資金も何もない状態からのスタートで、プロジェクト結成の中心となった一人である宮本圭さんは「御柱祭の行列に自分も参加してみて、これが絵馬となって後世に残ればいいな。資金がないなら広く寄付を募るなどすれば出来るのではないか」と考えたといいます。また、やはり中心メンバーの小林玲子さんは「もともと私一人ででも」絵馬奉納に漕ぎつけようとは思っていたが、どうしたら出来るだろうと考えあぐねていたとのこと。
呼びかけに応じて集まったメンバーのほとんどは、神社の直接の関係者ではない地域の若者たちでした。そして絵師は地元長野市出身で東京在住のOZ/尾頭さん(本名、山口佳祐)が引き受ける事になりました。


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未来に伝える平成のタイムカプセル
この日はおごそかに奉納式が執り行われた後、除幕された平成の大絵馬が参加者に公開されました。描かれているのは昨年の御柱行列の様子なのですが、実は総勢1000人近くにもなる行列参加者や見物人が一人ひとり描き分けられているのです。御柱祭に居合わせた方々が大絵馬ににじり寄って、自分や知人がどこに描かれているのか探す一幕もあり、それはそれで本当の意味で地域に結び付いた出来事だったんだな、と感じさせられる光景でありました。


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平成の大絵馬を描き上げたOZ/尾頭さん


描かれている光景は、近代的なビルも背景にあり、たくさんの樽酒を荷台に積んだ軽トラックや見物人のファッションなどは現代をそのまま映しています。絵師の尾頭さんは、絵馬を描いていく過程で「奉納し後世に残す、という事の意味」を重く感じとり、描き手としての意識が変わってきたと言います。「平成らしさ」をあえて出した図柄もそういった考えに基づいてのことでした。50年後、100年後にこの絵馬を見た人たちが、平成という時代をどう振り返るのかを考えると、このプロジェクトがワクワクさせるような魅力に満ちたものであることが分かって来ました。

さらに驚くなかれ、御柱祭や絵馬制作の様子や関わった皆さんのインタビューなどがデータ化され、32メガバイトのメモリーとしてこの絵馬に埋め込まれるのだそうです。このアイデアそのものが現代を反映していて、まさに平成のタイムカプセルと言える大絵馬ですね。


大絵馬を見に行こう、そしてあなたの協力も待っています
ema-6.jpg伝統を単に盲目的に継承するのではなく、受け継がれてきた伝統に、その時代、その地域の人々(特に若い皆さん)が力を合わせ、自分たちの文化を織り交ぜて後世に伝えていこうというスタイルがとても心地よく感じる奉納式でありました。

さて、この大絵馬はいずれ拝殿内に高く掲げられる予定ですが、しばらくの間は拝観者が絵をつぶさに観察できるよう床面に立てかけたままにしておくのだそうです。ぜひ訪問して見てください。
また、プロジェクト資金は実のところまだ目標に達しておらず、この活動に賛同される方はぜひ寄付をお願いしたいとのことでありました。(寄付のお申し込みは平成の武井神社御柱祭大絵馬奉納プロジェクト(026-262-1175、担当:宮本)まで)

関連サイト

絵馬プロジェクト

小林玲子の善光寺表参道日記


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