風はまだ冷たいですが、トラクターで春の田起こしをする人の姿を見かけるようになりました。水仙の花も一斉に咲き誇っています。朝の冷え込みも小さくなり、昼間の太陽の暖かさが一段とうれしく、気分も軽やかになる春を迎えたと感じる今日この頃です。
さて、冬の寒さを利用して作った凍りもちができあがりました。
家庭での凍りもち作り。以前は多くの家で行っていましたが、最近はあまり見かけなくなってしまいました。凍りもちは、中信の松本地区では最も寒い1月下旬から2月上旬にかけて、これにとりかかります。
松本市野溝東の窪田勝衛さん宅では、今年の1月26日に3.8キロのもち米を蒸かしてもちをつき、凍りもち作りをしました。
もちをついてのばして冷ます
ついたもちをのし板の上で1.5センチくらいの厚さに延ばして冷まします。しっかり冷まさないともちが包丁にくっついてしまい、なかなかうまく切れません。
冷めたらもちを切りわけて紙に包む
冷めたところでこれを10センチ×5センチ四方くらいの長方形に切りわけます。
次にそのもちを適当な大きさに切った新聞紙で包みます。商店などでの販売されるものでは、和紙などの紙を使って包んでいますが、家庭では新聞紙や冊子の紙を使って包むのが一般的でした。
わらに編みいれたものを二晩ほど水に浸けて
包んだものを7〜8個ほどずつわらで編みます。その年のわらの長さで、編む個数が異なります。
風の通る日陰に乾してじゅうぶん乾燥させる
そのようにして編んだもの2つをひとつ−−これで1連、今回は10連作りました−−にし、その後2、3日水に漬けて、水分を十分に含ませてから引き上げました。これが1月29日の夕方でした。そのまま今度は風の通る日陰の場所に干して、じゅうぶんに乾燥させたら完成です。
かくして凍りもちができあがるまでには1カ月以上の時間が流れていました。
おやつとして食べる凍りもちの思い出
凍りもちは保存食として作りましたが、そのまま食べてもほんのりとした甘味がありますし、お湯に漬けて柔らかくし砂糖と混ぜて食べても、また、両面を網の上でこんがり焼いて、砂糖じょうゆをつけて食べても香ばしく、しかもおいしくいただけて、子供のころはよくおやつに食べました。
包んだ新聞紙を取り除いて食べるのですが、乾燥させる段階で新聞紙がもちにくっついてしまい、うまく取り除くことができない場合もあります。そんなときには、水やお湯に漬けて新聞紙を取り除きますが、活字は凍りもちの表面にかすかに残ってしまって、そのように文字が読める状態でも、あまり気にせず食べた記憶があります。
スナック菓子をはじめ、いろいろな菓子類などがあふれていて、いつでも好きなときに食べられるようになった今は、凍りもちを家庭で作る機会はほとんどなくなってしまいましたし、窪田勝衛さんも
「以前はどの家でも作っていたが、最近は近所で作っている人はほとんどいないんではないか」
と話していました。最近はJAの直売所などでも製造し予約販売や店頭販売されていますが、珍しさや懐かしさも手伝ってか結構人気のようです。
温暖化の影響なのか、以前のようにマイナス10度を下回る厳しい冬の夜の寒さが少なくなっており、凍りもち作りには厳しい環境となりつつあります。
しかしながら、古くから伝わる手づくりで、作り手のぬくもりを感じる食べ物が、いつまでも作り続けられるよう願うものです。