新型コロナ感染症のまん延で非常事態宣言が出てから間もなく2年がたとうとしています。感染の波は上下を繰り返しながら、今なお私たちの行動を制約しています。
人と自然と食をつなぐ取り組み
「総合地球環境学研究所」という大学共同利用の研究機関が京都市にあって、そこで准教授を務めていたスティーブン・マックグリービーさんは、大量生産・大量消費に支えられた現在の食料システムに疑問を持ち、持続可能な食の消費と生産を目指す「FEASTプロジェクト」を立ち上げました。
スティーブンさんの家族が暮らしていた縁で、長野市もフィールドワークの対象になっており、氏が2018年秋に長野市で講演した様子を以前ご紹介しました(過去記事「「食」を起点に地域経済の再生を」参照)。
その後が気になっていましたが、プロジェクトは2021年3月に終了し、主要メンバーはその実践に向けて一般社団法人「FEAST」を立ち上げた、とホームページにありました。
「みんなでつくる『いただきます』」(2021年4月刊、昭和堂)の題で一般向けに報告書も出ています。同書ではフィールドを長野市の東隣に位置する小布施町に代えて取り組んだ様子が紹介されています。
中心となって受け入れたのが「OBUSE 食と農の未来会議」でした。
同会議は、農業者はもとより消費者や飲食店関係者らを交え、食と農を中心にまちづくりを考えようと、同町まちづくり委員会の「環境を考える部会」のメンバーらを中心に2018年にスタートしたそうです。
共同代表を務めるのが、竹内淳子さん(上)と工藤陽輔さんです。
竹内さんは現在、小布施町議会議員でもあります。
工藤さんは減農薬でリンゴや桃、プルーンを栽培し、野菜は農薬、化学肥料を使わずに育てている農家です(OBUSE Meguru Lab. )。
「FEASTプロジェクト」関連で2019年秋に「30年後の学校給食」をテーマに、それぞれの夢を語り合うワークショップを開いたそうです。成果の一端は同会を紹介するしおりにまとめられています。
直後にコロナ禍が襲い、活動は止まってしまいました。
小布施町では町内の社会福祉法人が平飼い養鶏と自然循環農法に力を入れており、実際に学校給食向けに食材を入れているそうです。
同会では、この動きをさらに加速させることで、夢を現実に近づける一助にしたいと考えています。
スティーブンさんがプロジェクトの終了を機にオランダの大学に移ったことから、2月24日には現地の食と農を巡る情勢をオンラインで聞く勉強会も開かれました。
在来種・固定種を守るために
「OBUSE食と農の未来会議」は、農作物の基本となるタネに関心を寄せ、在来種などを持ち寄り、交換する「タネの図書館」を小布施町でも始めようと考えています。
手本となったタネの図書館は、長野県内では池田町の臼井健二さん、朋子さん夫妻が2012年ころから始めています(安曇野のたねカフェ)。現在、約200種の在来種、固定種の種子を集めているそうです。
「この種バンクは土地と気候にあったタネを自家採取して海外からの種を買うことをやめようという啓蒙活動でもあります。地元の在来種がもっと集まるといいなと思っています」と、朋子さんはエールを送っています。
コロナ禍で活動が制約されるなかでも、新たな活動は確かに芽吹いているようです。