片桐さんの農事録
[片桐さんの農事録]

みなみ信州発☆羊と暮らすゆきさんの農事録 第71回

ゆきさん農事録

ゆずとうり

こんにちは!^^*
厳しい冬の予報が出されていた割には暖かい毎日だなぁと感謝していたら、突然の冬将軍到来。各地で積雪量がニュースになっていましたが、私が住んでいる辺りもちらほらと雪が舞い、12月としては久々の冷え込みです><; 大掃除を決行する時節柄に、ついつい二の足を踏んでしまう私ですが、皆様いかがお過ごしですか?

 

手術成功!

ゆきさん農事録

 

写真は、農事録を始めて3例目の第4胃変位の手術準備をしている所です。
2019年3月の記事で6、7年ぶりに変位の手術があり詳しく書いていたのですが、半年後の9月の2例目と比べても、今回はちょっと写真の感じが違いますよね。
先の2例は「保定枠」という牛を固定しておける枠まで移動しての手術でしたが、今回の子は術中死もあるかも・・・と言う獣医さんの言葉に、普段居る牛床でそのまま手術が行えるようにセッティングしました。

2月の記事の子は「95%が手術により改善する左方変位」でしたが、実はこの牛もー、助かることが少ない「右方変位」になっていたのです><; 手術をせずに淘汰を選ぶレベルの衰弱っぷりだったのですが、週末だったので食肉処理場が稼働して居らず緊急出荷が叶わなかったため、「手術しても助からないかもしれないけれど、しなければ確実に苦しんで死なせてしまう」という状況に、手術することを選択しました。

結果!
助かったんですよね~^▽^*

最初の診断は「第4胃変位」でしたが、開腹してみたら「砂や砂利が胃に溜まりガチガチに固まった結果胃が動かなくなってしまった事を起因とする、第3胃食滞による第4胃変位」というめちゃんこ珍しい症例だったそうです。
道理で! 写真の牛もー、いくらお産の直後とは言え、餌をもらってなかったんじゃないかと思う位に痩せて体の幅が薄くなっていますもんね><; 通常は砂や砂利を食べても糞で出てくることが多いそうなのですが、体質によっては今回の子の様なケースにもなるようなので、備忘録として書かせて頂きました^^

 

牛もーのうんちを完熟堆肥に

ゆきさん農事録

 

農事録初回を書いたその時から、一番最後の記事は「牛もーのうんち」の話にしようと決めていました^皿^b

仕事をしていると、牛もーの糞尿と格闘するシーンが沢山出てきます。ペットの様にしつけである程度コントロール出来たら楽なのになぁ・・・ってずっと思って居るのですが(笑) それでも、先の話題の変位や腸閉塞になってしまうと、その糞が出ずに牛がダメになってしまい大損失になるので、「出ないより出る方がマシ!」と言い聞かせながら毎日の作業をしています(笑)

上の写真は、牛もーの糞尿を処理する堆肥舎です。
長い直線部分を攪拌機が定期的に動くことで水分を飛ばし乾かします。その後、屋根の下で数ヶ月かけ空気をいれるために「切り返し」という上下を反転させる作業を何度も行い、発酵させることで牛もーのうんちは「堆肥」になっていきます。発酵中は寒い日など湯気が見えるほど温度が高くなり(およそ80℃と言われています)、それにより病原菌や、未消化で排出される雑草の種が死滅するんです。

 

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最初は臭いし、とても触る気になれない(笑) 牛もーのうんちですが、何度も切り返しを行うことで、臭いもなくなるし、手で触ってもモトが牛もーのうんちだったなんて分からないくらいの「完熟堆肥」になっていきます^^*

牛糞堆肥の成分は、鶏や豚の糞から作られる堆肥と異なり、いわゆる「肥料」としての成分が少ないのが特徴です。・・・え? それじゃぁ役にたたないの? と思われるかもしれませんが、大丈夫^^b 牛糞は有機物を多く含んでいるのでゆっくりと分解され、土壌の空気循環や水の通りをよくするので、即効性の栄養としての肥料というより、秋から冬にかけて土壌に混ぜ込みなじませ、土壌改良や地力の維持のために力を発揮する、と考えるといいのかもしれません。

ゆきさん農事録

 

牛もーが出してくれる牛乳は、様々な効能や可能性があることが徐々にわかってきましたが、同じ様に牛もーが毎日する糞尿は、酪農家にとっては牛もーの健康をチェックするためのバロメーターだし、堆肥となれば植物を育てる農家さんにはもちろん、家庭菜園やガーデニングなどでも大活躍なんですね^▽^ ・・・こう考えると、出ないより出た方が断然いい! ですね(笑) 家庭菜園などを趣味にされている方はぜひ、牛糞堆肥をうまく使ってみて下さい♪

 

まだまだ酪農頑張るぞ!

ゆきさん農事録

 

さて。
そんなワケで、私の農事録は今回で最後です^^*
6年間、マイペースに私自身の言葉で農事録を書かせて下さった編集部の皆様には感謝してもしきれません。初回からずっと読んで下さっている方、いつもコメントを下さる方、それから、私に言われて読み始めてくれた友人達(笑)と、常日頃農事録原稿のためのネタ探しにつきあってくれた家族に、あらためて感謝すると同時に、私自身が「酪農」や「牛乳」の可能性について学ぶ6年間でもありました。

ゆきさん農事録

 

ここ数年は毎年600~700戸のペースで廃業が続く酪農家数は、2020年の今年、ついに1万4400戸となってしまいました(データによると2001年頃には3万戸あったようです)。以前の農事録では我が家も廃業を視野に~なんて書いていましたが、実は私、このコロナ禍の大変な年ではありましたが、良縁に恵まれ先月結婚したんです^▽^* パートナーが一緒に酪農をすると言ってくれているので、名字も仕事も変わらず今後も続けていくことになりました。最後に来て突然の報告で、えーーー!? って感じですね(笑)

ゆきさん農事録

 

で、農事録は終了しますが、まだまだ酪農頑張るぞ! と言う気持ちと、春先3月分の記事、Twitterでの「#牛乳消費チャレンジ」の消費者生産者一体の盛り上がりが忘れられず、つい先日、私自身も仕事用のTwitterアカウントを開設しました^^ 消費と生産の現場は遠いのが現実かもしれませんが、消費者と生産者の知識や気持ちの距離を近づけられる手段があるのが、今の時代ですもんね!

アカウントIDは「@u4mou」です。
長野県のおいしい食べ方のTwitterアカウントからもフォローして頂いたので、縁がありましたら今度は、交流の出来るTwitterで仲良くして頂けたら嬉しいなと思いますし、牛もーや猫たちのその後が気になっちゃうな~と言う方は、たま~に覗いて写真や動画を楽しんで頂けたら、それもまた嬉しいな、と思います^▽^*

ゆきさん農事録

 

ゆきさん農事録

 

今年も残す所あと数日。年が明ければ干支は愛すべき牛もーです。まだまだコロナ禍の影響は大きそうですが、牛の歩みも千里。今後待っているだろう新しい形の日常も、お互いに健康第一で(笑)、一歩一歩確実に進んでいきたいですね!^^*

では、6年間、本当にありがとうございました♪

ゆきさん農事録

 

 

この記事を書いた人

片桐由貴さん

伊那谷をまっすぐ南に向かって流れる天竜川流域の牛舎で、仕事と趣味、どちらも楽しむという片桐由貴さん。大学卒業後「やっぱり牛が好き!」と、家族の営む酪農に就農して12年。80頭ほどの牛たちと、ペットの羊2匹、猫5匹と過ごす日々を綴ります。

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