片桐さんの農事録
[片桐さんの農事録]

みなみ信州発☆羊と暮らすゆきさんの農事録 第46回

ゆきさん農事録

 

こんにちは!^^*
いつの間にか、ほのかに香りだしていた金木犀の匂いも薄れ、夏の間にぎやかにしていたツバメ達の姿も見かけなくなりました。日中は作業をしているとまだまだ汗ばむ陽気なのに、朝晩はプラス1枚が必須になってきましたね。ちょっと早いかな?と思いつつ、シーツを冬用もこもこに替えて大満足の私ですが、皆様いかがお過ごしですか?

ゆきさん農事録

 

 

長雨の影響があちこちに

忙しくなるぞ~><; と覚悟していた今月ですが、結論から言うと予定していたことではあまり忙しくはならず、後回しになっていた物事に手を付けたりしていました。
と言うのも、10月半ばまで予定されていたブドウ園のお手伝いが、続く長雨の影響で新聞にまで載るほどの開園以来の不作になり、観光バスの受け入れを停止したからなんです。成長期に雨が降らず全体的にちょっと小粒かな?という印象もうけましたが、味は変わらないだけに、収穫期になってからの雨で実が弾けたり、そのため甘い果汁でカビ被害が広がってしまうのは本当に残念でした;皿;

ゆきさん農事録

 

また、トウモロコシの刈り取りも、畑の土が雨で柔らかく、ハーベスタ用の大型機械が入ることが出来ず。2015年10月の農事録にハーベスタの写真があるのですが、その時と比べてみて下さい、下の写真の無残なトウモロコシ^^; 猛暑の間は水不足で大きくなりきれず、その後の台風で折れたり倒れたり。堆肥処理が主な目的で、サイレージに飼料としての重きを置いていない我が家では、もうトラクターで踏みつぶした方が早いんじゃないかと言いつつ、10月中旬になってから漸く手を付けました><;
先月、私個人としてはカラッカラに干からびていたので雨は全然悲しくなかったのですが、各方面影響ありまくりで複雑な気分です。今年は全然、ちょうど良いお天気っていうのがないですね・・・。

ゆきさん農事録

 

そして一番は牛もーです。数日置きに計11頭生まれるはずの子牛、まさかの2頭連続胎盤剥離による死産、二度あることは三度・・・と恐れている所へ、予定日よりも3週間も早い早産が重なったり(ちなみに、早産の割にこの子は生きていて、以前飼っていたラブラドールより小さい子牛が生まれました。トップ写真、向かって右の子)、ある意味では慌ただしかったのですが、継続して世話をする子牛の数が減ったので、幸か不幸か親牛のケアと毎日の作業には多少の余裕が生まれました。ただ、その後続いたお産も死産なんじゃないかという恐怖がつきまとって、精神的には大分ダメージをくらいましたが・・・><;

先月自分でもブログに書きました。搾乳頭数を減らした事で、その搾乳をしている牛もー達の体調管理に集中出来ると。でも本当は、暑さを乗り切ったそのすぐ後にお産をする牛もーにも、同じだけ注意しなくちゃいけなかったんですね><; 来年はクールダー、乾乳牛の分も購入したいです。

 

双子の子牛の悲しい話

さて。折角なのでお産にまつわる話を一つ。
トップ写真のちびっ子、仲良く並んでまるで双子のようじゃないですか?^^* 実際には別々の牛もーから生まれては居るのですが、種付け(人工授精)の時期が近いと、同じ雄牛の精液を使うので、何頭か連続して似たような雰囲気の子牛が生まれることもあるんです。

牛もーは基本的に1度のお産で1頭ですが、我が家でも時々双子が生まれます。聞いた話では、三つ子も生まれたことがあるとか。双子とか三つ子とか、なんとなく特別な感じがするかもしれませんが、「繁殖」と「牛乳生産」を目的としたこのホルスタインの、しかも「雌雄」の双子には「フリーマーチン」という呼び名があり、ちょっと悲しい歴史があります。

ホルスタインの雌雄の双子が生まれたとき、我が家では長い間「雌の子牛」だけは薬殺をしてきました。
折角無事に生まれて、大きくなったら同じように赤ちゃんを産んで牛乳を搾れるのにどうして?って思いますよね。理由は、雌雄の双子の場合、雌は雄のホルモンの影響を受け、大きくなっても雌としての生殖器が成熟せず、子供を産めないからなのです。

初めてその話を聞いたときはまだ学生で、「じゃぁ最初からお肉にして貰うために肥育農家に買って育てて貰えばいいんじゃないの?」と、当時お世話になっていた獣医さんに問うたことがあります。
「世の中には悪い人がおるもんでな。子供を産めないフリーマーチンの雌を、普通の雌だって嘘をついて売ってな、買った酪農家はいつまでも種の付かない(妊娠しない=子供を産んで牛乳を搾ることの出来ない)牛をずっと飼うことになる。そう言う被害を無くすために、俺は、可哀想だけど、生まれたらすぐに殺すようにしている」
その頃は牛を1頭1頭耳標管理する「トレーサビリティー」もなく、個体識別は白黒の斑紋のみ。おそらく、別の牛を母牛にして双子でなくすことは、今よりもずっと簡単だったと思います。

この農事録を書いていても泣けてきます。人間は、なんて傲慢なんだろうと。でも、この獣医さんの言うことはすごく納得できて、雌雄の双子が生まれないことを祈るばかりでした。
ちなみに現在は、牛の絶対数の減少やトレーサビリティーで親牛の追跡調査がネットワークで簡単に出来る様になったお陰か、フリーマーチンの双子も、(格安で子供のお小遣いでも買えそうな値段ですが/笑) 肥育子牛として買っていってくれるようになりました^^*

・・・と言う話を、実際に双子が生まれたら農事録で書こう!って思って居たのに、結局生まれず(笑) このままだとずっと書けない気がして今月の話題にしてみました。
トレーサビリティーが開始され、生まれたばかりの子牛の耳に大きな耳標を付けるのは痛そうで可哀想だし、出生台帳とかいちいち10桁の番号を書くのはめんどくさいなぁと感じる時もあったのですが、その都度、この話を思い出して「まぁ、しょうがないか」となります^^

ゆきさん農事録

 

人のために生まれ、人のために生き、人のために死ぬ。
人間が長い歴史の中、長期的な経済活動をする上で、安定した食料の生産や確保を目的に生まれた「家畜・経済動物」という生き物。だからといって、むやみやたらにその命を奪っていいものではないです。こんな風に思うこと自体も、傲慢さやエゴがあるのかもしれませんが、ちゃんと最期まで、その命に価値を付けてあげたい。
この話を、農事録で書く機会があって良かったです^^

 

秋時間を楽しんでます

ゆきさん農事録

 

長雨で元気なのは勝手に生えてきている植物ばかり(笑) 気が付いたらツタに覆われていて、なんかこう・・・文明の荒廃を感じる1枚ですね>v<;
白い花は、牛の飼料に含まれている綿実が育って花を咲かせました。綿取れるかも!と思って居たのに、他の雑草と一緒に草刈りされてしまって残念(笑)

ゆきさん農事録

 

詰め物が取れてしまった切っ掛けで歯医者に通ったり、引っ越し以来手付かずだった本の整理をして、ちょっと家の中もスッキリしてきました^^ いつもは食欲の秋を猛プッシュしていますが、今年は懐かしい本を引っ張り出してお産や歯医者の待ち時間に読んだりしています^^* 普段何気ない空き時間ってついついスマホをいじってしまうのですが、本にしてみたら、意外とペースよく読めるものですね^v^ クリスティやコロンボが好きな母の影響か、思いっきりミステリーものが好きな私の読書傾向は偏り気味なのですが(笑) 読書の秋にふさわしい、オススメ&お気に入りの1冊があったら、ぜひ教えて下さいね!

では、また♪

ゆきさん農事録

 

 

この記事を書いた人

片桐由貴さん

伊那谷をまっすぐ南に向かって流れる天竜川流域の牛舎で、仕事と趣味、どちらも楽しむという片桐由貴さん。大学卒業後「やっぱり牛が好き!」と、家族の営む酪農に就農して12年。80頭ほどの牛たちと、ペットの羊2匹、猫5匹と過ごす日々を綴ります。

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