片桐さんの農事録
[片桐さんの農事録]

みなみ信州発☆羊と暮らすゆきさんの農事録 第18回

こんにちは!

「ここ数年急に耳にし始めた『熱中症』。その熱中症対策に実は牛乳って効果的な飲み物なんですよ!」・・・なんて、今月のブログの書き始めを考えていたのですが、気付けば6月1日更新分で同じような記事が書かれていましたね!(笑)
「やっぱ牛乳でしょ!」だなんて嬉しい内容だけれど、さ~て、どうしようかな? とPCを開いたまま悩んでいる私は牛乳のお陰か熱中症知らずですが、皆様いかがお過ごしですか?

 

これが、牛乳出荷の現場です!

ゆきさん農事録

 

さて、話題が被るのもなんなので、このブログを始めた昨年の2月「酪農家がお乳を搾る作業」の続き、今回は「牛乳の出荷ショット」をお届けします^^*
先月仕事ブログをサボったので、今月はちょっと長めに小難しい話をしますが、お付き合い下さいね♪

写真は、11トンのタンクローリー。近くで見るととても大きいです!^0^*
1日平均1000キロ前後の乳量がある我が家は隔日集乳で、このローリーさんのお世話になっています^^

我が家の集乳ラインが流通の効率化など様々な要因で、松本にある信州ミルクランドへと変更される前は、もっと小さなローリーで雪印やグリコに集乳・出荷されていました。その当時はなんとなく、縁のあるメーカーを贔屓にしていましたが(笑)今は全部混ざってしまっているので「うち、〇〇へ出してるんだよ、よろしくね!」と言う感じがないのは、ちょっとだけ寂しいです。

ゆきさん農事録

 

次の写真は、牛乳を一定温度に冷やし保存しておくバルククーラーです。
一昨年の夏に壊れて新しくしたので、まだまだ新品ぴかぴかの部類です!
隔日集乳のため、容量は最大2500キロ分。
この写真を撮った日は2000キロを少し下回っていますが、開口部より見るとなみなみと牛乳が! 普段から見慣れてはいても牛乳瓶や1Lパックの方が分量認識的には馴染みがあるので、「迫力だなぁ!Σ@◇@」なんて思ってしまいます(笑)

ちなみに、下が空っぽの写真。
真ん中にあるハネを回転させ牛乳を撹拌し、冷却をしています。
おチビの頃から飲んでいるゆずちゃんとうりちゃんは、成分的には猫の栄養にはならないと言われていますが、それでも牛乳大好きにゃんこです^▽^*

ゆきさん農事録

猫も牛乳大好き! 空っぽのバルク(右)

 

「集乳」にもドラマがあります。

集乳の際には、ローリーさんによる最低限だけど最大のチェック項目がいくつかあります。
「目視による異常確認」「臭気確認」「温度確認」と「アルコール検査」です。

ゆきさん農事録

温度確認とアルコール検査

「目視」では、乳房炎軟膏で治療中の乳房炎乳(軟膏の鮮やかな青色が出る)や血乳の混入を見、「臭気」では明らかな異臭がないかをチェックされます。
「温度確認」では、搾乳直後でまだ冷却が十分でないとローリーさんは規定温度まで下がるのを待たなければなりません。が、幸いにして新しいバルクは冷却能力が素晴らしいので、朝仕事の遅い我が家でもなんとか集乳時間にほぼほぼ待たせず持って行って貰えます(笑)

そして、「アルコール検査(アルコールテスト)」。
こちらは皆さんあまり耳慣れない言葉かと思います。
簡単に説明すると、アルコールと牛乳を規定の割合で混ぜ、何回か振って30秒待ち、牛乳の凝固分離の程度を調べる検査で、これにより「集乳出来る」「集乳出来ない」がその場で判断されるのです。(勿論、異物の混入や異臭も集乳拒否の対象です)
このアルコール検査で強い陽性反応が出ると「飲用向けとしては集乳拒否」と言うことになり、程度によってはそのまま廃棄、受け入れ先が見つかれば加工用として別のローリーが派遣され、出荷が可能となります。

アルコール検査で陽性反応の出るお乳を「アルコール不安定乳」と言います。
ネットで検索して頂くとかなり詳しく書かれていますが、このアルコール不安定乳のうち、とってもやっかいなのが「低酸度二等乳」というお乳の存在です。
分娩直後のどろりと濃い初乳や、乳房炎軟膏の混入など目に見えて出荷に向かないお乳、搾乳後の冷却不足(バルクの冷却スイッチを入れ忘れる等人為的要因)が原因で細菌数が増加し、結果アルコールに強い反応を示す高酸度乳と異なり、低酸度乳はコレ! と言った絶対的な原因が分かっていないのです。

環境、発情周期等によるホルモンバランスの崩れ、疾病併発や飼料給仕による影響など、様々な要因が挙げられていますが、牛乳がアルコールに反応を示して初めて、その数値的異常に気付ける、という感じです。
何故こんなに詳しく書くのかと言えば、「酷暑」と言う言葉を頻繁に聞くようになった数年前に一度、アルコール不安定乳と言うことで指導を受けた苦い記憶があるからです。

いつものように集乳車を見送り暫くしたら、我が家の牛乳がアルコール不安定乳で工場での受け入れを拒否されたので、そのローリー1台分(11トン車です。満タンではないとしても、我が家の11日分の乳量です)の罰金を払え、と言う連絡を受けました。
恥ずかしながら、私はそのとき初めて「アルコール不安定乳」による集乳拒否があると言うことを知りましたが、それと同時に、我が家に来てくれていたローリーの運転手さん達には絶対の信頼を置いていました。規定は牛乳とアルコールを1:2で検査しますが、:3、:4比率でのダブルチェックで集乳を行って下さる皆さんです。

集乳の拒否権を持つローリーさんがチェックをし、バルブをひねって集荷したその瞬間から牛乳は酪農家の手を離れる・・・と言うのが我が家の考えです。もし本当に異常乳であったなら、その場で集乳拒否をしてくれていれば、そのまま廃棄処分して11トンものローリー1台分の牛乳を無駄にすることだってなかったハズです。

常日頃から乳成分的にもキレイなお乳を出荷し続けているプライドと自負があった事もあり、本当に腹立たしくてその旨を抗議し、再検査の結果、全量廃棄処分程の重大な問題はなく、別の加工場へと運ばれていったそうですが、ローリーさんの持つ絶対的な集乳の拒否権は、回り回って酪農家が損害を最小限にとどめるためでもあるんですよね。
(この時、即全頭アルコール検査を実施しましたが、1000キロの乳量に悪影響を与えるほどのアルコール不安定乳の牛もーは居ませんでした。ただ、例年にない酷暑で全体的に乳質が低下している可能性を考え、ビタミンや重曹を添加し給仕する対応を取り、翌年からも夏には同様の対策を行っています^^)

ゆきさん農事録

 

酪農家から牛乳を集める。
我が家の乳量で僅か十数分の作業ですが、言葉にしてみたらなんだか、責任と意地のぶつかり合ったプロの仕事で、ドラマだなぁ・・・なんて思ってしまいました(笑)

ちなみに。 沢山の酪農家から集められて合乳された中で、何故我が家の牛乳だと特定されたのか、と言えば下の写真。ローリーさんは追跡調査を可能とするため、必ずサンプル採取を行うからです。
集乳の度にサンプリングされたこれで、月に3回、酪農家は不定期の乳質検査を受け、それにより奨励金が支払われたり、罰金を払ったりするのです。コレについては、今月は既に沢山書いてしまったので、また次の機会に^^

ゆきさん農事録

サンプルボックス

 

感動!ツアー・オブ・ジャパン 南信州ステージ

ゆきさん農事録

 

さて、もう充分長くなっているけれど、書いておきたいのが今年も観戦してきた国内最大の自転車レース、ツアー・オブ・ジャパン!>▽<*

今年は中盤からずっと日本人選手がトップを独走し、レースを引っ張る展開で、ニコニコ動画の配信を追いかけながらの観戦にも本当に熱が入りました。
ただ、このレースはチーム戦。一人で走る選手がそのままゴールは出来ない事を、漫画を読んだ知識で知っているので(笑)3分半近くあったタイム差がみるみる縮んでいくのは、分かっていてもホントに苦しくて、最後のゴールスプリント僅か10秒ほどで集団に吸収されていく様は見ていて叫ばずには居られませんでした>///<;; おしい~~~!

ドラマティックな国際的レースを、今年も風圧を感じられるほど間近で見られて、本当に最高でした^▽^*

ゆきさん農事録

 

 

ブログが公開される頃には梅雨入りでしょうか? この先の3ヶ月予報では、5月よりも気温の低い日があるとかないとか・・・。熱中症予防の牛乳はまだちょっと出番がないかもしれないし、牛乳飲むとお腹がごろごろ言うんだよね、と言う方も多いかもしれません。そんな時は、ヨーグルトで置き換えて、お腹の中からキレイになる夏を目指してみませんか?^v^*

では、また^^*

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この記事を書いた人

片桐由貴さん

伊那谷をまっすぐ南に向かって流れる天竜川流域の牛舎で、仕事と趣味、どちらも楽しむという片桐由貴さん。大学卒業後「やっぱり牛が好き!」と、家族の営む酪農に就農して12年。80頭ほどの牛たちと、ペットの羊2匹、猫5匹と過ごす日々を綴ります。

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