ひたむきに頑張る人は、理屈抜きに男前!
信州の農業を担う次世代のリーダーとして歩み始めた若者たちのライフスタイルとは!?
志を持って農業に情熱を注ぐ、『若手男前農家』のオンとオフのありのままの姿をシリーズでご紹介します。
"人のつながりを大切に。
若手がもっともっと参入しやすいようにネットワークを広げ、
ブランドもこの地域も盛り上げていきたい!"
SEASON2を迎えた男前百科のトップを飾るのは、長野県南東部に位置する諏訪郡富士見町で、セルリー・水稲(あきたこまち)を生産している植松高浩さん(30歳)。今まさに最盛期を迎えたJA信州諏訪オリジナルセルリー『諏訪3号』*1の畑にお邪魔しました。
夏の高い空に八ヶ岳がくっきり映える
アルプス(北岳・奥穂岳)に富士山まで見渡せる抜群の見晴らしと真っ青な夏空、広々とした田園のまっすぐな一本道。標高1,100mのここは八ヶ岳エコーラインの走る富士見町立沢。町内には、縄文時代にはめずらしい農耕文化を持つ井戸尻遺跡があるように、古くより人々が暮らし、耕してきた肥沃な高原です。
植松さんのセルリー畑を訪ねると、そこは一面の若草色! 出荷を待ちかねたように涼やかな風に葉をなびかせた『諏訪3号』がなんと6,500本!! しゃがみこんで近づくと、その肉厚の茎、極太の株に圧倒されます。
マルチと藁で水分・温度調節を。雑草・泥はね除けの効果も
収穫は一つ一つ手作業で
手早く外葉を落とす
抱えるのも大変そうな株の根元を、思いのほか小ぶりの包丁でザクッザクッとカット。「ポイントは、根元深く差し込んで素早く」。そう言うなりセルリーをくるりと回し、株の根元を包丁で美しく仕上げていきます。重さ2㎏近くもある2Lサイズを丁寧ながら軽々と扱う植松さん。男前な瞬間を発見♪
収穫直後のセルリー。2Lサイズ
まずは、この太さと厚さをご覧あれ! かぶりついたとたん「パキッ、シャキッ」♪ 繊維感(スジ感)はほとんどなく、何ともジューシー。さらに「独特のあの香りがね・・・」と言う方にも自信を持ってオススメできるほど香りがマイルド(控えめ)。セルリーの香り、実は編集部員も子供の頃は苦手だったんです。それが、大人になるにつれて病みつきに。優しい諏訪3号の香りと味を知ればなおさらです!!
採れたてをガブリッ。肉厚でもやわらか
出荷前チェックにも余念なく
少し山手の畑に愛車のトラクターで基肥「らくセル」施用
露地栽培のセルリーの出荷時期は6月下旬から10月中旬まで。植松さんもこの畑の他に12カ所の畑があり、リレー栽培しています。暑さに弱く、水分が不可欠なセルリーの収穫は、深夜2時頃から早朝までが勝負。それをすべて手作業で1日に1000〜1200株、約200箱分を収穫するとのこと。しかも2Lサイズは1.8kg以上にもなり、収穫や袋詰めなど重労働です。「いや~、大変ですね~」と声をかけると、「そうでもないですよ」と余裕の笑顔でサラリ。プロを本気で目指したと言うスノーボードで鍛えた「体力に覚え有り」の様子がうかがえます。「それに地元の仲間が、出勤前に手伝ってもくれるんですよ」とも。さすが、全国で9割の生産量を誇るセルリー王国ならでは、地域で支えるブランドですね。
家庭菜園にセルリーがなかなか見られないのは、5カ月という栽培期間の長さと繊細な作業の多さにあります。さらに乾燥や虫(アブラムシ・ナメクジ等)、病気にも弱くデリケートなため、毎日の灌水と、マルチシートや藁で水分や温度を一定に保ちながら雑草や泥はねを防ぐことが必須なんです。
■植松さんのセロリー栽培の一年
時期 | 作業 | ポイント |
2月中旬 | 育苗ハウスで育苗開始 | 温度管理 |
3~4月 | 2回の仮植 | 生長に合わせた植替え |
4月下旬 | 定植(畑に植える) | 水分・温度管理、芽かき、追肥 |
6月下旬 | 初出荷。それ以降は、定植、圃場管理、出荷が続く | 呼吸を抑える鮮度保持袋の使用。徹底した温度管理で迅速流通 |
10月中旬 | 収穫終了 | ライ麦などの緑肥や専用肥料*2で土づくり |
夏場は毎日圃場を歩きまわり、絶えず観察し続ける植松さん。「どんな小さな変化も見逃さず、何かあった場合には素早い対応が必要」だとか。まるでお姫様を見守る騎士(ナイト)のよう☆
ただ、どんなに気候を読み、工夫を凝らしても、自然相手の農業には厳しい現実も。「昨年(2014年)の雪害ではハウスが壊れ、半月以上作業ができなかった。でも地域の人達に助けてもらった」と植松さん。人と人とのつながりの大切さを改めて実感したと話してくれました。
「生産者の高齢化が進んでいる。若手が参入しやすいよう、この地域を盛り上げたい」と近隣市町村との合同セミナーにも積極的に参加。市場評価も高い諏訪産セルリーのブランド力を守り高めています。「セミナーでは20代のパワーと発想から大いに刺激を受けてます。スゴイっすよ、20代(笑)」と意味深なほほ笑みも。若い力とネットワークで農業ビジネスに新風を巻き起こす日に期待が高まります。そして、植松さんは今日も圃場を巡ります。セルリーの息遣いまで見逃さないように。
そんな植松さんちのセルリーは、北は東北、南は沖縄まで出荷され、さらには香港やシンガポールと、多くの皆様の食卓を彩っています。ちなみに、今年の生育は順調とのことで味もイチオシですよ。
オススメの食べ方は、生を味噌マヨネーズ+砂糖に付けて。以前から聞いていましたが、諏訪地域では砂糖をちょい足しするのが一般的だそうですよ。他には、みじん切りの葉をおかか醤油で炒ったふりかけ。栄養満点の手作りふりかけで、香りが苦手なお子さんにもピッタリですね☆ 今夏は諏訪のセルリーにご注目!
*1 『諏訪3号』:JA信州諏訪オリジナル品種のセルリー(セロリ)。色味よく株にボリュームがあり、茎は肉厚ながらスジが少なくみずみずしい。特有の香りが敬遠される理由でもあることから、一般的なコーネル種から独自の品種改良を重ね、香りを抑えた品種に。
*2 専用肥料:諏訪地域の土壌成分とセルリーの特性を分析して、JA信州諏訪が開発したオリジナルのセルリー専用肥料。セルリーはホウ素が欠乏することで障害が起きやすいため、ホウ素を微量に含んでいるのが特徴。肥料の効きを調整して散布量を減らし、コスト削減に。
MAKING THE ROAD
氏 名 | 植松 高浩(うえまつ・たかひろ)さん |
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年 齢 | 30歳 |
血液型 | O型 |
経 歴 | 長野県諏訪郡富士見町出身、在住。高校卒業後、建築関係の専門学校から建築の仕事に就くが、スノーボードに魅了され退職。プロスノーボーダーを目指し、県内外の山々でインストラクターや競技生活を送る。数年後、地元で農業に励む両親の姿が浮かび、2010年、25歳で家業を継ぐことを決意。高品質なブランドセルリーの増産に情熱を傾ける。冬季は地元富士見パノラマスキー場で、キッカーなどゲレンデアイテムの整備にも携わるほど、スノーボード愛も健在。 |
生産内容 | セルリー2.5ha、水稲(あきたこまち)1.8ha |
趣味・特技 | スノーボード |
好きな食べ物 | 米(自家栽培のあきたこまち) |
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