豊作を祈り、豊作に感謝しつつ食べるもの
長野県の木曽地方や伊那地方で作られている郷土料理に五平もちがあります。この地方と境を接する岐阜県や愛知県三河地方にも、同じように五平もちがあります。「もち」と言っても餅米ではなく、うるち米を押しつぶして串に挿し、タレをつけて香ばしく焼いたもの。豊作の祈りや収穫の感謝を込めて、毎年春と秋に神前に供えられたと言われています。
焼きたてがおいしい
特に秋は、もみすりの臼をひく手伝いをしてくれた親戚や近所の人を招いて、小箸祝いという収穫のお祝いをしました。小箸とは稲の穂をはさんで、穂からもみを外す脱穀用の道具の名前で、この日は家族総出でたくさんの五平もちをつくりました。焼きたては格別においしく、何本でもいけるので、「五平五合」と言って、一人五合も食べたと言われています。
それは特別な食べもの
五平もちは家によって形やタレの作り方に違いがあります。かつては庶民にとって貴重品だった米から作るこの五平もちは、もてなしやお祝いに欠かせない晴れの食べ物でした。
形は、円形のものを竹串に団子状に2個または3個さしたものと、楕円形のものを薄い板状の串にさしたものがあります。楕円形のものは「板五平」などと呼び、串にもヒノキやサワラなどの割板を使って、香りも一緒にいただきます。
五平もちの名前の由来でも、この楕円形の形が昔のお金(御弊)に似ていたという説や、山屋五平という宮大工の棟梁が弁当の握り飯に味噌をつけて、たき火であぶって食べたという諸説があります。
タレは、くるみをすりつぶした味噌ダレや、くるみとゴマをすりつぶした醤油ダレ、柚や山椒を入れて風味を出したものなど、さまざまです。
由緒正しき五平もち
中仙道の通っていた木曽地方は、現在も各地で町並み保存運動が続けられ、宿場町の面影を残しています。今も宿場町のいたるところで、五平もちの看板を見つけることができます。なかでも南木曽町妻籠(つまご)宿は、重要伝統的建造物群保存地区として、江戸時代の宿場の姿を色濃く残しています。
そしてこの妻籠宿の「やまぎり食堂」では、五平もちをすべて自家製造しています。このやまぎり食堂の五平もちは、軍配のような変形楕円型で、タレはくるみとゴマをすりつぶしたところに、醤油・砂糖・みりんなどで甘く仕上げたものです。
焼きたての五平もちは、とても香ばしくて、素朴な味わい。やまぎり食堂では、料理の材料も既成品ではなく手作りにこだわっていて、厨房には作業をする地元のお母さんたちの明るい声が響き、元気も一緒にもらえます。
そうそう、やまぎり食堂の五平もちはお取り寄せもできますよ。
妻籠宿のWebサイト
その中山道妻籠宿の様子がNHK「新日本紀行・ふたたび」で紹介されます。
放送日時 関東・甲信越 10月 7日 11:00〜
関西 10月14日 10:05〜
東海 10月21日 10:50〜
五平もちを家で作ろう
五平もちは、家でも簡単に作れます。ごはんを固めに炊き、八割まですりこ木でついてつぶします。つぶつぶ感を残す場合は五割くらいまでにしておきましょう。それを串につけて、レンジで軽く網焼きをして、タレをつけてまた焼きます。タレをつけると、すぐに泡立つように焼けて来ますので、軽く焦げ目がつくくらいで、またタレをつけて二度焼きしてください。
タレは、くるみ、ゴマをすりつぶしたものに醤油・砂糖・みりんを加え、軽く熱を加えながら、味を調えます。味噌を入れたり、柚や山椒を入れたり、いろいろ工夫すると良いでしょう。タレは作り過ぎても、さまざまな料理に使えます。親子で作っても楽しいですよ。