地域それぞれに、その土地特有の農作物が育ち、また、その土地を形成する野山、川、海が、自然の恵みをもたらしてくれます。そしてまた、食べ物や気候風土も、そこに住む人たちの体質や気質と深く結びついています。
野山からの旬のものに感謝し、さまざまな料理を工夫し、端境期に備えて加工、保存し、大切に食べる・・・。南相木村で、そんな「あたりまえのくらし」を実践している"仙人"に倣う「野山の旬をいただく」の4回目は、秋。冬の備え、身体と心を温めてくれる身近な草花と木の実の登場です。
姿も香り、名前も可憐
「泡小金菊の和ハーブティー」
晩秋の南相木村の山々と仙人の野菜ハウス
高い山から始まった紅葉も終盤を迎え、木枯らしの吹き始める晩秋。そんな中、野山で心と体を癒してくれる野草を見つけました。それは「泡小金菊(アワコガネギク)」。径1.5センチほどの黄花が密集して開くようすを泡に見立てた和名で、別名「キタタニギク」とも呼ばれます。
初霜も降り、枯れ草も目立つようになった野原で、「アワコガネギク」が可憐な黄花を咲かせていました。さっそく「アワコガネギク」を摘み、それをティーカップに入れる仙人。熱湯を注ぐとほのかな菊の香りが立ちのぼります。2~3分ほど置くとお茶の色は淡い黄色に変わり飲みごろ。
「和ハーブティーよ」と言いながらすすめてくれる仙人は、「アワコガネギクのかわいさとやさしい香りにホッとするの」とお茶を楽しみます。カップに浮かぶ黄花とやさしい味にほっこり。
漢方では、解熱や疲れ目などの解消・軽減に菊花のお茶が使われ、昔から中国では菊には、延命効果があるとされています。
「アワコガネギク」は道端などに何気なく咲いています。もし見つけたらお茶やお風呂の入浴剤としてみませんか。やさしい菊の香りが心と身体を癒してくれます。
庭木の棗(ナツメ)の実、活用しましょ
庭木として「棗(ナツメ)」が植えられている家も多いのでは。日本ではあまり食用にされていないようですが、成熟した果実を乾燥させた「干しナツメ(大棗)」は、漢方の生薬として利用され、冷え・むくみ・貧血・便秘・下痢の解消や強壮剤などに用いられています。
和名は「夏芽(ナツメ)」、夏に入って芽が出ることに由来します。中国には、「一日食三棗、終生不顕老(ナツメを一日3つ食べると老いない)」という言葉があり、老化防止として古くから用いられています。
晩秋のこの時期になっても暗赤に色づいた実が、収穫されずに木になっている風景を見ると「もったいない、多くの人に食べ方を伝えたいな」と思う仙人は、子どもの頃からナツメの実が大好きで、いろいろな方法で食しています。「ナツメ」の活用方法を教えてもらいました。
果実が半分ほど色づき、粒の大きいものは、シロップ煮にして保存する仙人に作り方を教えてもらいました。
ナツメのシロップ煮
材料 |
ナツメ(大粒)1kg 水1リットル 砂糖250~300g(お好みで調整) しょうゆ60cc 塩小さじ1 酢20cc |
作り方 |
(1) 鍋にナツメと水、調味料(酢を除く)を入れて火にかけ、おとしブタをする。沸騰したら弱火にする。 |
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(2) 火を止め、冷めたらまた火を入れる、を2~3回繰りかえし、最後に酢を加える。 |
「アワコガネギク」のお茶と一緒にいただきました。ぷっくらした果肉のやさしいナツメの味が、口の中に広がりました。
「ナツメのシロップ煮」は、ビン詰めにすれば長い期間楽しめます。
ナツメ酒
干しナツメ
この他、大粒のナツメを「ナツメ酒」に。小粒なものは、葉と共に干してお茶にして活用しています。仙人曰く「生で食べるのが一番! おいしい!」とのこと。庭木にナツメの木がある方は、ぜひ、食べてみてください。