ホップを収穫して味わう「志賀高原ビール」のおいしさ

20140827beer01.jpg

志賀高原ビール醸造責任者の佐藤栄吾専務(中央)とスタッフのみなさん(一部)

一度も見たことがなくても、どのように栽培されているか知らなくても、ある一定の人たちにとっては憧れの農産物。それは「ホップ」です。

ある一定の人たちとは、言うまでもなくビール好きのみなさんのこと。日本でホップが栽培されているところは限られており、長野県においてもホップ畑にお目にかかることはほとんどありません。

そんななか「地ビール会社が自家栽培しているホップの収穫をお手伝いできる」との話を聞きつけました。ここは世のビール好きを代表して参加するしかありません!

神様からビール好きに贈られた、限りなくやわらかで軽い緑の実

20140827beer02.jpg

 

向かったのは志賀高原のふもとにある「志賀高原ビール」の醸造所(ブルワリー)。ここは、玉村本店という文化2年(1805年)から続く老舗の造り酒屋で、地ビールを造り始めて今年で10周年になります。

朝7時に集合し、早速スタッフのみなさんとともに近くのホップ畑に向かいました。

20140827beer03.jpg

かつてホップ作りに携わっていた地元の達人たちの手を借り、アスパラ畑だった休耕地をホップ畑によみがえらせた

畑では4mもの高さにホップの蔓(つる)が育っています。8月中旬の台風の影響で蔓が下に落ちてしまい、ほとんどが例年より早く収穫されていました。この日は最後に残った「信州早生」という品種の収穫です。

20140827beer05.jpg

長く伸びた蔓から、ホップの実をつけたままの横蔓を刈り取り、ホップを一か所に集めると、車座になって親指大のホップの実を摘み取っていきます。

初めて見るホップの実は松ぼっくりに似た形で、色は薄緑色、指で挟むとぺちゃんこになるほどやわらかいものでした。大量のホップで独特の苦みを持ったさわやかな香りがツーン。これは確かに、志賀高原ビールの香りです。

20140827beer04.jpg

ホップを囲んでおしゃべりしながらの摘み取り作業

造り手の明るさ・楽しさから、おいしいビールが生まれる!?

20140827beer06.jpg

「ゆっくり楽しく、自分たちの飲みたい酒を造りたい」と佐藤専務(手前)

自らホップ栽培をするブルワリーは全国でもごく少数派。「なぜここまでして…」とブルワリーを取り仕切る佐藤栄吾専務にたずねてみると。「楽しいから」。拍子抜けするほどシンプルです。

このひと言にビールの、そしてこのブルワリーのおいしさの秘密が込められているのかもしれません。

どんなお酒の造り手にも、ある種の情熱を感じます。ただ、ここで感じたのは、ストイックで生真面目なそれとちがって、陽気で、周りの人を明るくさせる開放的な情熱でした。造り手のみなさんが持っている楽しい感じ。これはビールの味に間違いなく影響しているだろうと思わずにはいられません。

実際、この日もブルワリーにはさまざまな人が「勝手に」集まってきて、お手伝いをしていまし。先述の台風の直後は、収穫が完了して収穫すべきホップがないにも関わらず、たくさんの人がお手伝いに馳せ参じたとのこと。みんな、この「楽しさ」につられて来るんですよね、きっと。

20140827beer08.jpg

雨にあたって一部が茶色くなってしまったホップも。見た目がいまいちでも大切に使う
 

20140827beer12.jpg

 

摘んだホップは醸造所に運び、手で揉んで細かくします。

ビールの性格の決め手となるホップの香りと苦みの成分は、実の芯に存在する黄色いつぶつぶ「ルプリン」に含まれています。ルプリンの効果をビールに取り込むため、この手揉み作業は欠かせない工程なのです。

20140827beer07.jpg

苦みや香りのもととなるルプリンを揉み出す
 

ホップの下処理作業と並行して、同じ屋根の下でタンクによる造りも行われているのですが、佐藤専務はじめとするスタッフのみなさんは、ひとたび造りモードになると一転して引き締まった表情に。

温度や量、味覚に関する単語が飛び交い、緊張感が張りつめて、話しかけるのもはばかられる雰囲気。さすがです。

20140827beer09.jpg

生ホップを自由に使い、ここだけの味を醸す

さて、佐藤専務が「楽しいから」と答えたホップの自家栽培ですが、じつはほかにも理由があります。収穫したてのホップを生のまま使って仕込む限定ビールを造っているのです。これぞホップを自家栽培するブルワリーならではのビール! この日に収穫した生ホップ版ビールが出荷されるのは10月頃。楽しみです。

さらに栽培している5種類のホップを自由に使える点も見逃せません。たとえば「信州早生」は大手メーカーなら香りづけくらいにしか使わないところ、ここではこの品種の特性を積極的に活かした銘柄を製品化しています。こういった独創的な試みができるのも自家農園のメリットと言ってよいでしょう。

自家栽培されているのはホップだけではありません。ビールの仕込みの際に出る麦芽粕を利用した自家製堆肥で、酒米「美山錦」を減農薬栽培し、純米酒のほか、「Miyama Blonde(ミヤマブロンド)」というビールも造っています。

20140827beer13.jpg

定番の「ペールエール」「IPA」のほか、年間を通してさまざまな銘柄が登場。自家栽培ブルーベリーや地元産アンズを原料に長期発酵、樽熟成させた「山伏」シリーズ(右)も人気
 

とっても生きいきと働いていた女性スタッフの松木さんは「たとえば料理の楽しさって、食べた人に『おいしい』って言ってもらえることですよね。それと同じような醍醐味があります。この仕事につけてよかったです」と話してくれました。

20140827beer15.jpg

クラフトビール造りに憧れて千葉から移住した松木さん

20140827beer14.jpg

ブルーベリーを収穫するのは杜氏の山本司さん

 

 

 

 



「楽しいからやる」ことを大切に、自然とともに、真剣に、そして楽しく取り組んでいる姿が印象的なブルワリー。「こんなビールなら、飲んだ私たちも笑顔になれるよね」。そんなふうに思ったホップ収穫体験でした。(やすのり)

■参考サイト
ゆるブル(ブログ)
(株)玉村本店

1409065200000

関連記事

北八ヶ岳の森でつくられる軽やかなビール

北八ヶ岳の森でつくられる軽やかなビール

幻のお米の里に伝わる「上原鳥追い祭り」
伝統行事・イベント

幻のお米の里に伝わる「上原鳥追い祭り」

編集後記:私がお酒の記事をがんばる理由(わけ)
グルメ・カフェ

編集後記:私がお酒の記事をがんばる理由(わけ)

夏休みに親子で行こう!安曇野のおいしい美術館
お出かけスポット

夏休みに親子で行こう!安曇野のおいしい美術館

新着記事