現在開催中の「愛・地球博」。そのパビリオンのひとつ「中部千年共生村」で、いよいよ長野県のワークショップがはじまりました! この「中部千年共生村」では、中部地方にある9つの県が「千年の冒険 中部の発見と創造?千年持続社会を考える」を共通テーマに、地域の特色を生かした出展を行っているのです。さっそくわが長野県ワークショップに足を運んで、会場を見まわしてみると、なにやら他県とは違う優雅なキュイジーヌのごとき雰囲気がそこかしこに漂っているではありませんか。クロスのかかったテーブルには、ナイフ、フォーク、ワイングラスなどがセッティングされているのです。いったい、これはなにを出展しているのでしょう?
長野県の掲げるテーマは、「信州丸かじり・・・信州の逸品を飲んで食べて」。信州の食材を使ったフランス料理のミニコースと、長野県原産地呼称管理委員会で認定されたワインや日本酒を味わって、豊かな信州の風景を感じてもらおうというもので、かなり粋なブースですぞ。料理担当は、蓼科高原のフランス料理店・エスポワールの藤木徳彦さん。日ごろから地産地消を提唱し、地元の食材や食文化を大切にしているシェフです。そんな彼が腕を振るう今回の料理とは?
- アミューズ
鹿肉の自家製サラミ 信州りんごの香り
- オードブル
・信州サーモンの茶巾包み
・信州ポークの生ハムと山羊のチーズのクロケットのショーフロア
- メインディッシュ
・信州ジビエ(鹿・山鳩)のテリーヌと野草・香草のメリメロサラダ
- 自家製パン
・シラネ小麦のプチパン
・シラネ小麦のふすま粉カンパーニュ
アミューズの鹿肉サラミは、冷涼で乾燥した蓼科の気候を生かして作ったもの。地元で獲れた鹿を使うので、血液も入れて豊かな風味に仕上げることができます。背ロースやモモ肉以外は硬くて使いものにならないと言われる鹿肉ですが、これなら筋の多い首肉や前足の肉なども立派な料理の材料です。藤木さんがこのサラミを毎冬仕込んでいるのは、食材として頂いた命を少しでも無駄にしないように、という思いがあるからだとか。
次にオードブル。これにも信州らしさが溢れています。茶巾包みに使った信州サーモンは、長野県の水産試験場で開発されたもの。病気に強く、約3年で2.5kgほどに成長します。茶巾の外側に使えないしっぽの部分などはすり身にし、生クリームとともに中身のムースに仕上げてあります。サーモンの淡い紅色と真っ白なムースの対比が印象的な藤木さんらしい料理です。
また信州ポークは、最近知名度上昇中の食材ですね。これも蓼科らしく冬のうちに生ハムに仕立ててあります。今回使われているポークは違いますが、蓼科高原にある藤木さんのお店では信州産のSPF子豚が料理として登場しています! なんとか地元の子豚を使いたい、という藤木シェフの熱意を受けて、全農長野が提供をはじめている食材なのです。今までは輸入品に頼るしかなかったものですが、信州産の子豚は地産地消の観点からも非常に魅力的な逸品です。
とことんこだわる信州の豚肉
その生ハムに包まれた山羊のチーズ。目からうろこが落ちる食材です。このチーズを作られる上土井良弘(じょうどい よしひろ)さんは、「お金をかけずとも、農業はできる」という強い信念の持ち主で、なんとお客の途絶える夏のスキー場の斜面に山羊を放牧して育てている人物です。
スキー場が営業をしている冬の間は、山羊の子育ても終わっているので搾乳もチーズ作りも休業。なんとも理に叶っている仕組みではありませんか。グリーンシーズンに白馬の岩岳スキー場に出掛ければ、農業の革命家・上土井さんとかわいい山羊たちに出会えますよ。上土井さん自慢のフレッシュタイプのこのチーズは、くせがなく、爽やかな酸味が特徴。これに東御市で栽培される白土馬鈴薯(はくどばれいしょ)のマッシュポテトを混ぜたものが、クロケット(コロッケ)の中身になつています。白土馬鈴薯は火山灰土で育ち、ねっとりとしたきめ細かな舌触りとふくよかな甘さがあり、一度食べたら虜になること請け合いです。
食材の素晴らしさをご確認ください
さて、いよいよメインディッシュ。ジビエのテリーヌですが、これにも山深い信州の天然の食材が生かされているのです。鹿は現在増えに増え、生態系のバランスが大きく崩れていることから、やむなく害獣として駆除されています。駆除後は山に埋められてしまうことも多いのですが、それを食材として十二分に利用し、美味なる料理に仕上げたのがこのテリーヌ。山鳩は高遠のハンターが藤木シェフのために毎シーズン300羽ほど仕留めているものだそうです。
それから各料理に添えられる香ばしいパンのことにもふれておかなくてはなりません。それらはエスポワールで毎日手作りされているのです。小麦粉はもちろん長野県産で、シラネという品種を使っています。
どうですか? これほどに魅力的なフランス料理。想像しただけでうっとりしてしまいませんか。長野県にはかくも素晴らしい食材がたくさんそろっていることが、あらためてこのワークショップのメニューからもおわかりいただけると思います。
ところで、地球博会場で実際に長野県産食材を使ったフランス料理を食べた方々の反応はどうだったのでしょう? 「このひと皿を通して信州の風景が見えた気がします。今度はぜひ長野県に行ってみたい」「ひとつひとつの食材の生産者がわかる食卓とはすごい。究極のスローフードですね」と皆さん一様に信州を感じてくれた模様。料理にマリアージュされた原産地呼称管理委員会認定のワインや日本酒も好評で、長野県の農産物の実力が充分発揮された内容でした。
自然豊かな山々でずっと命を繋いできた野生鳥獣の肉、自然の摂理を利用したチーズ作り。聖書の創世記の頃には、すでにあのノアも作っていたブドウとワイン。これらはまさに「千年持続可能」な食文化ではないでしょうか。わたしたちも自然と共生できる素晴らしい食材を大切にし、次代に伝え続けていきたいものです。
長野県ワークショップ今後の予定
第2回長野県ワークショップ
(6月24日?6月28日)
◎メニュー
- オードブル
ラパンと地鶏のガランティーヌとキャベツのシュークルート
グリーンアスパラガスとビーツのサラダ
- メインディッシュ
諏訪湖のザリガニと安曇野のニジマス・ほうれん草のミルフィーユ
信州味噌を使ったオランデーズ風温製ソース
第3回長野県ワークショップ
(9月2日?9月6日)
◎メニュー
- オードブル
信州きのこのキッシュパイと野菜のグレッグとトマトコンフィ添え
- メインディッシュ
信州牛の県内産赤ワイン煮込みとじゃがいものピュレ、凍み大根を添えて