ひたむきに頑張る人は、理屈抜きに男前!
信州の農業を担う次世代のリーダーとして歩み始めた若者たちのライフスタイルとは!?
志を持って農業に情熱を注ぐ、『若手男前農家』のオンとオフのありのままの姿をシリーズでご紹介します。
「男前百科 SEASON2 vol.4」の今回は、県北部、千曲川中流域に位置する千曲市で、ぶなしめじを年間150t(約30万本)栽培する中村真哉さん(34歳)をご紹介します。
棚田と名月「田毎の月」で古くから名所として知られる姨捨の里山。中村さんは、ここでぶなしめじのプライベートブランド、その名も「田毎の月」を生産販売しています。
中村さんが生産販売する「田毎の月」
まず、中村さんに案内されたのは9室に分かれた生育室。15.5℃のひんやりとした冷気を感じながら一歩進むと、白い光と立ち込めた水蒸気の中に浮かび上がるのは、お月様のようにまん丸でぷりっとしたしめじ・しめじ・しめじ・・・。通路を挟んだ両側4段ずつにみっしり、ぶなしめじたちのお出迎えです。
成育室で収穫直前のぶなしめじを持つ中村真哉さん。
9つの部屋ごとに成長段階の異なるぶなしめじを生育し、収穫時期を調整している。
ちょうど収穫時の部屋でしたので、早速、拝見♪ 中村さんは、可動式台の上にコンテナを置くと、少し大きめのマイナスドライバーのような収穫棒を石づきの下に差し込み、テコの原理でぽろっと、いとも簡単に収穫していきます。愛用の道具について尋ねると、「『収穫棒』と呼んでいますが、正式には??? どこに売っているかも???」と笑います。もう10年以上使い続けており、今ではすっかり「ぶなしめじを傷つけずに収穫できる相棒」だそうです。
キノコの軸下に収穫棒を差し込んで収穫
収穫後のビンの中身
品質の良いぶなしめじを生育するために重要なことは、温度・湿度と光の管理。自動調節される室温と超音波加湿装置で噴霧される水蒸気によって、室内にまんべんなく水分を行き渡らせます。また光に向かって育つ性質を生かすため、2010年に蛍光灯からLEDライトへ、県内でいち早く導入したのが中村さんでした。大きな設備投資だったそう、でもそのメリットは大きいと言います。
LEDの白い光に向かって成長する
【LEDライトのメリット】
(1) 安定生産
生育期にあわせ光管理が行えるよう、光量の無段階調整機能を付けたため、一定の光で照射でき、サイズのそろったぶなしめじの安定的な生育が可能に。
(2) リスク軽減
防弾ガラスの素材ともなる強力素材(ポリカーボネート素材)で割れにくいため、破損による異物混入リスクが軽減。
(3) 省エネ
電気料金は蛍光灯の1/3以下。また、寿命が長いため生産コストの削減や交換作業の省力化に。
LEDライトの特徴について教えてくれる中村さん
人の目と手でチェックし、重量を量る
続いて、パッケージ室へ。こちらでは、手早く重量をはかり揃えると同時に、目視で傷や異物などがないか厳密にチェックし、パック詰めを行います。パック詰めのポイントは、少し空気を入れてふわっと包むこと。ぶなしめじ自体の呼吸ができるようにするのだそう。オートマ設定ですが、確認しながらの作業となります。その後、JAちくまを通じて大阪や京都、東京などへ出荷されます。
パック詰めは機械で。少し空気を入れることがポイント
・・・と、ここまで見ていると、なんだか意外と簡単!? でも、すぐ出来るものと思わないでくださいね。全体作業の一部なんですよ。収穫までには長い時間と手間暇かかっていますから!
【ぶなしめじの栽培方法】
(1) 培地作り: 松・杉などオガクズ(オガコ)に、栄養分となるコヌカ、大豆の皮、とうきび、フスマ、コーンコブ、綿の実を搾ったものなどを絶妙な配合でブレンドし、水を加える。
ポイントは、水でアクを抜くこと。このひと手間が高い品質につながる。
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(2) 瓶詰
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(3) 殺菌
殺菌施設
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(4) 植菌
↓
(5) 培養(約40日)
温度管理された培養室
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(6) 熟成(約60日)
↓
(7) 菌掻き: 一番上の古い菌をはぎ落とし、菌を刺激することで生育促進させる
ここまで約100日! その後、冒頭の生育室へ続き、小さな菌糸が丸い傘をつけ、成長し、約120日で収穫となります。
(右の写真は、あと1週間程で収穫できるぶなしめじ)
栽培ビンの前で、座右の銘を掲げる中村さん
もともと、祖父の代では養蚕農家だった中村家。その後、りんごからぶなしめじ栽培に転向しました。時代の流れや自然相手の農業の厳しさなどの経験から、父親の安正さんの代で通年可能な施設栽培を決意したそう。今では1本230gの収量が、当初は100gほどだったなど、始めた頃の苦労も聞いている真哉さんは、「自分の代で潰さない」とお茶目に話しながらも、「より高品質なぶなしめじの安定生産を目指すことが使命」と将来を見据える目は真剣そのもの。
休日もゴルフで楽しく!(中村さん提供)
実は、高校卒業と同時に就農を決意していたものの、リトルリーグ時代から鍛えた抜群の運動神経も相まって、ニュージーランドへ2年間のゴルフ留学を果たします。「やるなら楽しく! どうせやるなら人生も農業も楽しみたい」と、今ではゴルフは最大の趣味に。休日は仲間とのラウンドを満喫しています。
JAちくまの年間総生産高、約20億円という主力品目のぶなしめじ。中村さんは、管内16軒の生産者さんの中で最年少です。この主力品目を支える若き担い手は、まん丸笑顔の朗らかな男前さんなのでした。
■関連リンク
JAちくま
中村さんに聞いちゃいました!
"ぶなしめじの耳より情報!"
【耳より情報1】
Q:傘の大きさや色の違い(淡い薄茶色や濃い茶色)などがありますが、どのような違いがあるのですか?
A:よく傘が大きいものは大味と言われますが、栽培されているサイズの範囲内なら大きいものも美味しいですよ。でも、お料理の用途で大きさを選んでいただくのが一番ですね。色については、味の違いはありません。オガクズやコヌカ、大豆の皮などの栄養剤のバランスによるものなので、皆様のお好みで選んでくださいね。
【耳より情報2】
Q:まとめて買った場合や余ってしまったときの保存法は?
A:石づきをカットして、株をバラバラにわけて冷凍しておくといいですよ。冷凍することで旨みが凝縮されるんです。もちろん凍ったまま調理に使えて便利ですしね。
やるなら楽しく! 消防団の先輩に言われた言葉。どうせやるなら人生も農業も楽しみたい。
氏 名 | 中村 真哉(なかむら・しんや)さん |
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年 齢 | 34歳 |
血液型 | A型 |
経 歴 | 千曲市出身。地元の高校卒業後、父の後を継ぎ就農。父や友人の勧めで始めたゴルフにすっかり夢中に。リトルリーグ時代から鍛えた抜群の運動神経も相まって、ニュージーランドへ2年間のゴルフ留学を果たす。ベストスコアは68。 |
生産内容 | ぶなしめじ 年間140~150t |
趣味・特技 | ゴルフ・野球 |
好きな食べ物 | 肉、肉、肉・・・「お肉大好き!」 |
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