信州中野は、日陰や田畑などに少し雪が残っている程度で、日差しはなんとなく春めいてきた気がします。
私はもともと1年のなかで冬が一番好きだったのですが(長野にきてからは寒すぎてちょっと...笑)、ほとんどの農家のおかあさん達は「春が好き!」と即答されます。雪かきに追われる寒く辛い冬を乗り越えた春、の訪れに一番幸せを感じられるそうです。私も今ならその気持ちが少しわかります。早く桜が見たいですねー!
1年間の農業研修を終えて
さて、この3月をもって"研修生"という立場を卒業し、4月からは"一農家"としての生活が始まります。
農業に全く興味のなかった私が、大阪から長野県中野市に単身で移住して、地域おこし協力隊の活動を通してたくさんの農家さん達とのご縁のなかで農家を志すようになり、同じ目標をもつ先輩研修生の夫と出会い結婚し、里親農家さんのもとで2人で学んだこの1年間。
あまりにも色々ありすぎて、大阪で暮らしていたのが何十年も前のことのようです(笑)
春
剪定の"せ"の字も知らなかった私なので、ついて回ることに必死で、りんごの深すぎる魅力に頭を混乱させながらひたすら勉強の毎日。剪定が終わると桃やりんごの花が咲き、かわいくて仕方なかったことを思い出します(´I`)
夏
日の出とともに起き、日が暮れて手元が見えなくなるまで畑仕事の日々。炎天下の作業はもちろん辛かったですが、それよりも、カエルやヘビに遭遇する度に「こんなに小さいものを怖がってて、これで農家になれるんだろうか...」と毎回落ち込んでました。
それでも、桃の収穫を迎え、自分が手を掛けた果物の美味しさに感動した初めての気持ちは、今でも忘れてません。
秋
夏の間にひたすらりんごの摘果作業を行い、りんごの実を落とすことに「もったいない」の感情が薄れてきた頃にいよいよ収穫。立派に育ったりんごを、自分のミスで落としてしまったり傷をつけてしまった時の落ち込みは、涙がでそうなほどでした。1年間手を掛け続けるということの大変さを改めて考え、収穫できる本当の喜びを知りました。
冬
雪が降りだすギリギリまで続いた収穫作業。朝のりんごは本当に冷たくて、手が痛くて感覚がなくなる中でなんとか落とさないように、ひとつひとつ大事にカゴにとった日々が、つい先日のことのように思い出されます。
「農家は一人じゃできないよ」
これは、私が夫と出会う前、独り身で農家になりたいと言い出した頃に地域の農家さんによく言われたことです。 今は結婚し夫婦2人でやっていくことになりましたが、この1年を通して感じたのは、「一人じゃできない」というのは決して人手的なことだけではない、ということ。農業がいかに地域と密接した生業か、地域の方々との繋がりあっての生業か、ということに気づかされました。
この場をお借りして、いつも声を掛けてくださり気に掛けてくださる地域の皆さん、いつも本当にありがとうございます (˘◡˘)
第二の人生
まだ31歳で「第二の」なんて早すぎるかもしれませんが、これから生きていく"農家"としての暮らしは、私にとっては第二の人生です。
大学卒業後、ものづくりに興味があり「自分の会社で作ったものを多くの人が使い、街で見かけることをやりがいに働きたい」と就職した大手電子機器メーカー。大手にこだわったのはそれだけではなくて、早くに父を亡くし女手一つで兄弟4人を育ててくれた母へのせめてもの恩返しの気持ちもありました。
でも、やっぱり大手であれば大手であるほど、"直接誰かの役に立つ""誰かの生活の一部になる"ということができなくて、もどかしい想いも正直ありました。
農業は、自分の手でつくり、それを自分の手で直接販売してお金にして、それでまたつくる。
自分のつくったものを誰かが食べてくれて美味しいと思ってくれる、その人の体の一部になる。そう思うと、私が本当にやりたいのはこれなのかな、と今はやっぱり思います。
両親が好きだったこの北信州の地で、暑い日も寒い日も、晴れの日も、雨の日も、大空の下で全身で働いて、誰かに食べてもらえることを想いながら全力で農業を営むこと。
もし、この先くじけてしまいそうなことがあったら、この農事録を読み返そうと思います(笑)
農園の名にかけて
開業準備のなかで、意外にもすんなりと決まった農園名。
苗字:松野をただつけるだけでは印象に残らないかな、と。
(「まつののうえん」だと「の」が並んでちょっと言いにくい、というのも)
どんなものを作りたいか? と考えた時に「味はもちろん見た目も良いもの、目で楽しんで食べて幸せになってもらえるもの」ということで、松竹梅で言うと松だね! 松野だし! という流れで『まつじるし農園』と付けさせて頂くことにいたしました。
名に恥じぬよう、生活の中でひと時の幸せを感じてもらえる果物づくりに励んでいきたいと思います。
最終回、長くなってしまいすみません。
1年間という短い間でしたが、このような機会を頂けたことに本当に感謝しています。
これからも ひとつひとつ丁寧に、感謝の気持ちを忘れず頑張っていきたいと思います(Ü)/
読んでくださった皆さま本当にありがとうございました!!