大樹の農事録
[大樹の農事録]

大樹の、安曇野うまい米づくり農事録 第17回

北アルプスをのぞむ安曇野市は、1等米比率日本トップクラスの長野県を支える米どころ。25歳でお米農家を継いだ安田大樹さんは、おいしいお米を作り続けることが「ふるさと安曇野の景観を守り、地域を楽しくしていくことにつながる」と考えました。

山はごきげん♪

安田さん農事録

 

『やま』
ゆうべの あめが すっきり はれて
やまは ごきげん
あかい きいろい もみじ きて
くもを だっこして すわってる

ある日、ミニバスケットボールクラブの練習が終わり、帰りの車内で子供が山を見て「やま」みたいと言いました。
私は「そりゃ山だからねぇ」と思いましたが、国語の音読で上に書いた『やま』という文章を読んでいることを思い出し、あらためて山を見ると、確かに前日雨だったし、おしゃれしてるみたいだし、雲も低い位置にあって抱っこしてるみたいだわ。と気付きました。(写真は別の日のもの)
子供は日々学び、小さい変化にも気付いて感性豊かに過ごしているんだんぁ。毎日変わって見える世界はキラキラして見えているんだろうなぁ。と思い、少し子供の頃を思い出して童心に帰りました。
年を追うごとに感性が鈍くなっていきますが、いつまでも豊かな感性で世界を眺められるようになりたいものです。

そんな素敵な気付きをくれたご機嫌な山に感謝しつつ。農作業もご機嫌で進めていきます。

 

皆さんこのような田んぼを見たことありますか?

安田さん農事録

 

稲刈りが終わった田んぼをそのままにしておくと、刈り後の株から緑の芽が出始めます。9月頭に刈った切り株からは茎がどんどん伸びてきて、なんともう一度穂をつけるものまであります!
この切り株から出た稲のことをここら辺では「蘖(ひこばえ)」と呼びます。調べてみると地域によって呼び方が異なるようです。
長野県では寒いので蘖が大きくなることはあまりありませんが、蘖が大きく育つ温かい地方では、刈り取って動物の飼料にしているところもあるようです。
もし私が稲だったら、せっかく穂を実らせたタイミングで株本から切られたら心折れるでしょうね。でも稲は諦めず、どんなに小さくても未来に命をつなげようとするのです。
毎年蘖を見ると、必死に子孫を残そうとする植物の強さに驚かされます。

 

過去最高の黒光り

稲刈りが終わるとすぐに麦播きの準備に移ります。今年は週間天気予報で晴天続きを見計らったのに突然の大雨が。一度耕起してしまった圃場は雨に降られると中々乾きません。乾かないと麦が播けないので麦蒔きは中断せざるを得なくなりました。
そうこうしていると隣の黒豆の田んぼから「パチッ!パチッ!」という音が。黒豆がはぜる音です。「はぜる」とは鞘が割れて弾けて、中の豆が飛んでいくことを言います。

安田さん農事録

 

写真の様に鞘がはぜて豆が下に落ちているのが分かります。
黒豆は特にはぜやすいので収穫期を逃すと豆のほとんどが地面に落ちてしまします。落ちた豆は収穫できないのでロスになってしまいます。

黒豆作付け1年目は、成熟期が早いことに加え、このはぜやすい特性を知らず、気付いた時には豆の大半を収穫できませんでした。

よし、来年は注意して見ていて、はぜる前に刈り取るぞ!

2年目は葉っぱがまだ青いうちに鞘がはぜてしまい、機械で無理やり刈り取りましたが収量も少なく、豆も汚れてしまいました。(基本的に豆の収穫機械は、葉が落ちて茎の水分がなくなってからでないと刈り取ることができません。)

ん~、黒豆は倒伏に強いから摘芯しなかったけど、試しに摘芯してみた圃場は葉っぱがきれいに落ちていたし、来年は全部摘芯しよう!

3年目。9月の干ばつの時に大豆圃場に水がかけられませんでした。そのため極端な生育ムラが発生してしまいました。

くそ! 来年は全圃場摘芯。開花期から2週間は水が水稲並みに必要な時期だから、葉が裏返り始めたら早めに潅水。茎に少し水分が残っていても葉が落ちていれば刈り取れる。生育遅れの茎は混ぜると品質を落とすので刈り取らないように手で予め抜いておこう。

そんなわけで4年目の今年。播種時期に長雨。無理やり播いたけど播種後の除草剤が流されてしまい、一部草だらけに。「なかなか上手くいかないなぁ~。」と嘆いてみてもしょうがないので、今までの反省を活かし、先手先手で管理作業を進めてきました。8月の干ばつも潅水で乗り越え、気付けば今年の黒豆は今までで一番の仕上がりになりました。

安田さん農事録

 

今年の播種後の湿害を乗り越えられたのは直前で決断した「種子コーティング」を施したことも大きいです。この種子コーティングはとにかくコストがかかるので倦厭しがちですが、初期成育の病気や湿害リスクを低減することができます。本当にやっておいて良かったー。

安田さん農事録

 

病気の防除も適期に行うことができたのでピカピカに黒光りしています!

安田さん農事録

 

黒豆を刈り取るのは汎用コンバインです。前方にロールが回っていて豆をかき込んでいきます。このロールで軽く触れただけでも鞘がはぜてしまうので刈り取りはかなり慎重になります。

安田さん農事録

 

刈り取られた豆はメッシュの袋に入れて自然乾燥させ、冬場の落ち着いた時に選粒するというわけです。
今年良くてもまだまだ改善の余地はあります。来年は元肥と追肥の施用も検討してみたいですね。コロナの影響で米の需要は減っていますが、国産豆の需要は安定してあるようなので、来年は豆の作付けを増やそうかな。

 

紅葉=焼き芋

安田さん農事録

 

割りばしでくるくるとしたらふわっふわの綿あめになりそうな雲。冬の気配も感じられる空になってきました。最低気温も0℃近くになると平野でも紅葉が一気に進みます。

紅葉といえば落ち葉。落ち葉といえば落ち葉掃き。落ち葉掃きといえば焼き芋!
ということで、庭木の紅葉が始まると子供たちが「いつ焼き芋できるかな♪」とそわそわ。
ちなみに今年の我が家の初焼き芋は10月25日でした。みんなで落ち葉掃きをしていたら近所の友達もやってきて一緒に焼き芋をやりました。
なんせ子供は火が大好き。火のつけ方も勉強なので親の監視の下で子供にやらせます。
そういえば「火遊びするとおねしょするぞ!」って誰が言い始めたんでしょうね。

安田さん農事録

 

どの葉っぱに火が付きやすいのか、風上と風下のどちらから点けた方がいいのか。すべて自分で体験するのが一番の勉強。

安田さん農事録

 

最近は、さつま芋よりもジャガイモ派の私。ほくほくのジャガイモにバターかマヨネーズを付けて頂くのが至高です。マヨネーズのかけ方が映えませんね(笑)

 

頑張れ!信州ブレイブウォリアーズ

収穫の秋、食欲の秋、からの、スポーツの秋。実は我が家は夫婦そろってバスケットボール経験者です。
昨年から信州のバスケットボールチーム「信州ブレイブウォリアーズ」の試合観戦に親子共々すっかりハマってしまいました。
前節にB2リーグを圧倒的勝率で優勝し、B1に昇格したウォリアーズ。今年は昨年以上に応援に行くという心意気で、私と長男の誕生日プレゼントはウォリアーズのゴールド会員カードでした。

安田さん農事録

 

コロナ禍でどうなるかと心配していた今シーズンですが、感染対策をしっかりした上で観戦することができました。
応援で声も出せないし、タオルも回せないし、ハイタッチも出来ないけど、やっぱり生で見るのはいいですね。
迫力もあり、ミニバスをやっている子供からすれば間近でプロの動きを見られるまたとないチャンスです。

でもB1の舞台はやはり甘くない。開幕当初、外国人選手が入国できず、なかなかベストメンバーが揃わないウォリアーズ。あと一歩のところで勝利に手が届きません。
「B1で初勝利したら乾杯しよう」と購入した限定のウォリアーズワインは10月23日にやっと開栓できました。

安田さん農事録

 

初勝利祝いは信州野菜のチーズフォンデュとステーキ。美味しく頂戴しました!
まだまだシーズンは始まったばかり。今年もバスケ観戦を楽しみに仕事頑張るぞー!

スポーツは地域を元気にします。「日々成長」が合言葉の信州ブレイブウォリアーズ。
私も同じ思いで地域を元気にしていきたいと思います!

書きたいことがありすぎる秋ですが今回はこの辺で。
食べすぎ飲みすぎに注意して、また来月お会いしましょう。

この記事を書いた人

安田大樹さん

北アルプスをのぞむ安曇野市は、1等米比率日本トップクラスの長野県を支える米どころ。25歳でお米農家を継いだ安田大樹さんは、おいしいお米を作り続けることが「ふるさと安曇野の景観を守り、地域を楽しくしていくことにつながる」と考えました。

記事一覧へ
1604415600000

関連記事

大樹の、安曇野うまい米づくり農事録 第18回
大樹の農事録

大樹の、安曇野うまい米づくり農事録 第18回

大樹の、安曇野うまい米づくり農事録 第3回
大樹の農事録

大樹の、安曇野うまい米づくり農事録 第3回

仲間と楽しく、農業を。飯島さんの農事録 第8回
飯島さんの農事録

仲間と楽しく、農業を。飯島さんの農事録 第8回

仲間と楽しく、農業を。飯島さんの農事録 第5回
飯島さんの農事録

仲間と楽しく、農業を。飯島さんの農事録 第5回

新着記事