「市田柿農家が肉そば屋を始めた!」という話をききつけて、「農家がそば屋? しかも、肉そばって!?」。
疑問を解決するべく、さっそく取材に行ってきました。
市田柿の里で「農家以外の可能性」
「市田柿」というのは、現在の下伊那郡高森町の市田地域で栽培されていたことから名前のついた渋柿の品種名です。その栽培の歴史は500年以上といわれ、これを干し柿にしたものも「市田柿」と呼びます。干し柿は一口大で食べやすく、鮮やかなあめ色の果肉をきめ細かな白い粉が覆い、もっちりとした食感と上品な甘味があるのが特徴です。
柿の木の手入れをする手塚勇さん
花農家だった父の後を継いで就農した、手塚勇さん(41)。昔からやっていた市田柿を増やし、花栽培に使用していたビニールハウスの後利用をして親から独立。市田柿メインで営んでいました。市田柿のオフシーズンとなる夏場には、野菜などを生産する方も多いそうですが、手塚さんは「農家以外でも可能性があることを始めたかった」といいます。
柿の倉庫をにぎやかな大衆食堂に
そばをゆでる「麺業農家」の手塚さん
東京で飲食業を営む幼なじみの友人に、以前から民家食堂を勧められていた手塚さん。その友人が作る「肉そば」が大好きで、親戚や友人からの評判もよかったため、自分でもやってみたいという気持ちがあったそうです。2年前に香川のさぬきうどんを見に行ったとき、ビニールハウスや製麺所など、看板もないお店でうどん屋を営む様子を目の当たりにしたことで起業を決意した、といいます。市田柿農場を法人化して人に任せられる体制をつくり、高森町「アントレプレナー支援相談室」の支援を利用して実現させました。
店内は昔の大衆食堂をイメージ
こうして、2017年4月14日にオープンした「肉そば こまつ屋」は、柿を干していた倉庫を移築して造りました。昔の大衆食堂をイメージした明るくて気取らずに入店できる雰囲気です。サラリーマン、土木系の人、女性グループなど、老若男女問わず近所の方で賑わっていました。
隠し味に市田柿!香味ラー油がおいしい「肉そば」
冷たい肉そば(中)
「肉そば」はのどごしで食べる手打ちそばとは違い、もっちりとした強いコシがあります。そばの上には市田柿を隠し味に使用したお肉がたっぷり、さらにネギ、白ゴマ、刻み海苔がドカッと盛られていて、通常のそばとの違いは一目瞭然です。つゆには香味ラー油が効いてピリ辛ですが、辛さが苦手な方にはお好みでラー油の量を調整してもらえます。つけ麺のようなガッツリ感はありますが、食べてみると意外とさっぱり。ペロリと食べられます。
市田柿を入れて甘さとコクを増した牛肉
強いコシのある機械製麺の太麺そば
そばの上に肉が大盛り
肉の上に、ねぎ、白ごま、きざみ海苔がたっぷり
今回ご紹介したのは「冷たい肉そば」ですが、「温かい鶏そば」には香味ラー油とブラックペッパーが加わり、一味違う辛さが楽しめるそうです。
訪れるたびに新しい展開が!?
お店前の柿の木には、子ども用の手作りブランコがありました
お店の横にはお父様が趣味で植えた花などがきれいに生い茂り、今後はテラス席でコーヒーなどを提供したり、ジビエカレーつけそばなど、信州らしい新メニューも開発したい、と今後の展望を教えてくれました。
「信州そば」といえば、天ぷらやとろろと合せるのがやはり定番。そばを食べたいけれど、お肉もしっかり食べたいときにもうれしいメニューですね。東京でも人気があり、味はお墨付きの肉そば、食べてみてはいかがでしょうか。
肉そば こまつ家
- 長野県下伊那郡高森町下市田513
- TEL 0265-53-5028
- 営業時間 11:00~14:00、17:30~21:00
- 定休日 火曜