新信州暦　露地ぶどうの出荷もはじまるころ

今朝の長野はこれまでが嘘のような上天気です。そして最近では一番涼しく感じました。この１週間、自転車とほぼ同じ速度の時速約１０キロで移動する大型の台風１２号が日本列島に上陸し、紀伊半島を中心にとてつもなく膨大な被害をもたらしました。４０名を超える方々が犠牲となり、想定外の災害をあらかじめ考えておくことの必要性を感じるところです。またしても人間は自然の力に勝てないことをまざまざと見せ付けられました。長野県内では、大雨や洪水警報など出された地域もありましたが、少し強い風と雨が降った程度でした。台風がきていたこともあり、県内は雲に覆われた一週間となり、朝晩は比較的涼しい日が続きました。戸を開けたまま寝てしまって風邪をひいてしまった人もいらっしゃるのではないでしょうか？　そろそろ、露地もののナガノ・パープルなどのぶどうが出荷になる予定です。魅力多い秋がいよいよ訪れますので、満喫できるよう体調管理を十分にしたいところです。

長野気象台から、６月から８月の天候まとめが発表されましたが、平均気温は１度程度上回る暑い夏となりましたが、気温が前年より下回る時期もあり、変動が大きかったと発表されています。３５度以上の猛暑日も平年より多い状況となりました。降水雨量は飯田市で平年比１３２％など、全国的に節電に励む夏は雨も多かったようです。

県内では、引き続き放射性物質の測定を行っていますが、２日には、稲わらの検査が行われ、伊那市、佐久市、信濃町いずれも不検出でした。５日には、県中部の塩尻市産の米から、６日には佐久市、小海町、小川村など１市４町４村より放射性物質が検出されなかったことが県農政部から発表されています。また、県内で飼育されてと畜上へ出荷されたすべての肉牛を対象に全頭検査を行っておりますが、３日現在の検査結果では３０１検体を検査し、放射性物質は検出されていません。４日には、長野市内で「放射線の健康への影響を学ぶ研修会が開かれました。原発事故を受けて放射線が子供に及ぼす影響に関心が高まっていることから、専門家による説明などが行われました。説明では、長野県産の食べ物を食べている程度ならば過度に心配する必要がないことや帰宅後のうがいや手洗いに被爆を防ぐ効果があることなどが説明されたそうです。過敏な反応をするのではなく、正しい情報や状況を把握して対応することが大切ですね。

３日の夜には、諏訪市の諏訪湖畔で、「第２９回全国新作花火競技大会」が行われました。台風１２号の接近で雨が降っていましたが、約１７，０００発の花火が打ち上げられ、約２０万人の観客を楽しませました。

農業の話題。いよいよ秋を迎え、果物の出荷もにぎやかになってきています。「川中島白桃」の発祥の地、ＪＡグリーン長野では、ＪＡ中野市ではプラム「太陽」の出荷が最盛期を迎えました。今年は８月の降水量が多かったなどで生産者は苦労しましたが、食味・着色・玉張りのそろった高品質なものが出荷されているそうです。ＪＡ上伊那やＪＡながのでも、梨の「幸水」の出荷が始まっています。おいしい信州の秋の果物をお試しあれ！

＊巻頭のカバー写真。夏も終わりに近づき、真夏に咲いていた花々も徐々に見られなくなってきた信州。それでもまだ、鮮やかなオレンジ色のノウゼンカズラは私たちの目を楽しませてくれています。

●８日は二十四節気のひとつ「白露（はくろ）」。江戸時代の「暦便覧」に「陰気ようやく重なりて露にごりて白色となれば也」とあります。秋が本格的に到来し草花に朝露がつくようになるという意味です。太陽が離れていくため、空もだんだんと高くなってきます。最近、陽の沈むのが早くなった夕方に西の空を見ると、宵の明星である金星がだいぶ高度を下げてきていることに気がつきましたか。もうじき宵の明星も見納めになります。白露の前後には、信州の農家は秋の農作業にとりかかっています。秋の空の下、白菜や大根や野沢菜やカブなど漬物の菜のまきつけなどが本格化するからです。日中は陽射しが強く暑くなるものの、朝晩の涼しさはすっかり秋のもの。日が暮れればそこかしこで「リーン、リーン」と鈴虫たちの合唱が聞こえます。「秋の日はつるべ落とし」という言葉がありますが、日が暮れるのもずいぶんと早くなりました。ほんの１カ月前まで７時を過ぎても明るかったのですが、今では６時を過ぎると夜のとばりが降りはじめます。昼夜の温度差が激しいので、体調管理に十分気をつけないといけないのもこの頃です。

１０日（土）、乗鞍高原で「BANFF Mountain Film Festival in Japan 2011」が開催されます。世界最高のアウトドア映画祭と言われるバンフ・マウンテンフィルムフェスティバルは、今年で３６年目を迎えます。毎年１１月にカナダ・アルバータ州で開催され、世界中から応募された２５０本以上の作品の中からグランプリをはじめ受賞作品を選出。その中から更に厳選されたとっておきの作品が、ワールドツアーとして世界６大陸３２ヵ国で上映されます。日本では、乗鞍高原を皮切りに、９月から１１月にかけて全国９ヵ所（乗鞍高原、東京、大阪、仙台、名古屋、松本、新潟県妙高市、札幌、福岡）を巡ります。乗鞍高原でしか観られない作品もあるようで、アウトドアファンにはたまらないイベントではないでしょうか。世界各国から集められた山岳をはじめとした様々なアウトドアスポーツの楽しさ、厳しさ、美しさ、そして知られざる秘境に住む人々の生活や文化。とりわけこの映画祭は乗鞍高原の大自然に囲まれた野外スクリーンで楽しんでみるのがいいかもしれません。

２５日まで佐久市の国道２５４号沿線のコスモス街道では（土）には佐久市のコスモス街道近くの園城寺では「第24回 佐久高原コスモスまつり」が行われています。今週末の１０日にはお話朗読会、１１日には、座禅体験やコスモス染め体験などが行われます。

１１日は二百二十日。立春から２２０日目。二百十日同様、嵐の襲来する時期として恐れられた日でもあります。またこの日はアメリカだけでなく世界を震えあがらせた９１１の日です。日本国の３１１とアメリカの９１１は世界に穴が空いた日として記憶され続けることでしょう。

来週の月曜日の１２日が満月。旧暦八月十五日。この日の月を中秋の名月・芋名月などと呼び、月見をする風習があります。月の一周が実際は１５日より少し短く、楕円軌道などの要因もあって、実際は８月１５日が必ず満月ジャストであるとは限りません。ところが今年の中秋の名月ですが、６年ぶりに満月の当日と重なっているのです。満月の瞬間は午後６時２７分。普通、秋分の日に一番近い満月を収穫月と呼ぶ理由は、今が芋の収穫時期に当たるので、収穫祭を兼ねて「芋名月(いもめいげつ)」と呼ばれたり、「望月(もちづき)」と呼ばれたりもします。

　　　　名月や
　　　　畳の上に
　　　　松の影

　　　　　　　−−宝井其角(1661-1707)

この夜に月見をする風習が日本全国にあります。旧暦八月十五日と九月十三日の両日に月見をする風習もあります。さて信州で「お月見」といえば、さらしなの月を忘れることはできません。宝井其角の師匠にあたる松尾芭蕉をはじめ多くの文人・墨客の訪れた地として知られる、さらしな・おばすての地。名月の里として知られる千曲川西岸のそこは、現在長野県北部の千曲市にふくまれます。

　「さらしなの里、
　　おばすて山の月見ん事、
　　しきりにすすむる秋風の
　　心に吹きさわぎて・・・」

これは松尾芭蕉の『更級紀行』の書き出しの部分。山も、川も、月も、秋風も、芭蕉の当時と変わることのないさらしな・おばすてでは、月が満月に近づく今週末金曜日の９日から、月齢１５日十五夜の１２日まで第28回信州さらしな・おばすて観月祭がおこなわれ、俳句大会をはじめ、農道道しるべ(ライトアップ)、棚田ボランティアガイド、地物野菜や果物・おやき・地酒などが並ぶ市、月見汁の２００食無料配布、棚田米おにぎり無料配布、コンサートなどが準備されます。ぜひ一度いらっしゃいませんか？

また満月を間にはさんで宵月８日から十六夜（いざよい）の１３日まで松本市にある松本城でも「第１２回　国宝松本城月見の宴」が開かれます。お城の中に入ったことがある方はご存知かもしれませんが、天守閣の南東側に組み込まれるように『月見櫓（つきみやぐら）』があり、江戸時代にはそこで江戸から将軍を迎えて月見の宴を行ったとされています。今年もそこで、雅楽の演奏が行われるそうです。お茶席や、体あたたまる豚汁も用意されているそうですので、歴史を感じながら風情を楽しむのはいかが。

３２３年前の貞享５年旧暦八月十五日に、おばすてで中秋の名月を見た翌日、松尾芭蕉は「しなのの国さかきといふ所」現在の坂城町（埴科郡）の十六夜山で、さらに十六夜の月を鑑賞しています。現在では十六夜観月堂の北側には芭蕉の句碑が建てられています。「いざよひもまた更級の郡かな」と。１３日火曜日の月は十六夜（いざよい）の月、この月はまた不知夜月（いざよいづき）などとも書かれます。この日、月は午後６時２分に上り、翌朝の６時５８分に沈む（長野市の場合）ため、一晩中月が出ているので、夜を知らないことから名づけられたともいいます。この日芭蕉は坂城で名産のねずみ大根を食べたことが次の句からわかります。

　　身にしみて　大根からし　秋の風
　　　　　　　　　　　　　−−芭蕉

日本列島の各地で、よいお月見ができますように。

　長野県の秋の気象の特徴
　長野県の気候　　　　　　　長野地方気象台のウェブサイトより