新信州暦 直売所の店先を秋ナスが独り占め

inekari2.jpg黄緑色と、場所によってはさらに黄色味が進んだ田園風景が、現在県内の至る所で広がっています。そして夕方になると、その光景は夕日に照らされて一層鮮やかで眩しいほどになります。南信エリアの飯田、下伊那地域、また中部の松本市でも、いよいよ稲刈りがはじまり、ふさふさな稲が広がる広大な土地を大型コンバインに乗って颯爽と稲刈りをする光景や、既にはぜ掛けされた状態が、所々で見られるようになりました。

リンゴ「つがる」が先週から今週にかけて出荷のピークを迎えている県内ですが、県南部の飯田、下伊那地方では梨「幸水(こうすい)」が出荷のピークを迎えています。高温干ばつの影響で小玉傾向ではありますが、抜群の甘さを携えた仕上がりだそうです。また単位JAとして全国一の「巨峰」の出荷量を誇る県北部のJA須高では、露地栽培の巨峰の出荷がはじまりました。梅雨明からの高温で着色は遅れ気味だということですが、糖度は18度以上。厳しい気象条件となった今年ですが良い仕上がりで、今月中下旬をピークとして10月末まで出荷は続きます。さらに春先の低温などの影響を受け育成が遅れた地域でも、昨年より時期を数日遅らせて出荷を迎えています。nasu.jpg野菜では、ナスが直売所の売り場の大部分を占領するほどに並ぶなど、秋を代表するものたちが次々と登場していいます。「暑い暑い、一向に涼しさがやってこない」と思っていても、果物や野菜たちはきちんと時季になると作物の実りをもたらせ、季節の移り変わりを教えてくれます。

十分な雨が降らず高温が続く県内では、農作物の被害が懸念されています。そんな状態を受けてJAでは対策本部を設置して農家へ技術指導を行なったり、対策を新聞の折り込みチラシで全戸に配布するなどの策を講じているところもあります。今年のこの天候で、リンゴやブドウの表面には日焼けや着色の遅れが見られるものや、また生育が早まっている稲は、刈り取りが遅れると米粒にヒビが入る「同割れ」が生じる恐れがあるとして、前倒しで刈り取りを行う場所もでています。hojyoutyousa.jpgさらに日中の高温と朝晩の冷え込みによる温度差によって糖度がありみずみずしく美味しい仕上がりとなる信州の農産物ですが、平年ですと夜間15度以下に落ち込む気温も今年はそれ程までに下がらず夜温が高いことも影響し、レタスやキャベツなどの葉物は上手く葉が巻かずにまとまらなかったり、また芯だけ伸びて出てきてしまうなどの障害が出ている場所もある状況で、全体では小玉の傾向となっています。

sunflower.1.jpg台風前の昨日までの県内は、日中は依然として日差しが強く、外は耐えがたいほどの暑さでした。もう9月だというのに週末には統計開始以来の最高気温を打ちだすなど、この手の施しようの無い程の参ってしまう暑さに、大きな頭をもたげるヒマワリとなんだか気分が重なるのですが、まだまだ外ではセミの声が騒がしく、今年の夏はあまりにも長いです。しかしようやく朝方は、それほど暑くもなくしのぎ易いこの頃で、日中はお世話になりっぱなしの冷房も、通勤ラッシュ前の朝方少し早めの時間にはこの朝の爽やかな風を浴びながら、窓を開けて運転している車を何台も見かけます。

sundown.jpgしかし今週もこの暑さ、平年より4〜5度高くなる見通しで、9月の半ばまでは残暑が以前厳しくなりそうということ。引き続き熱中症対策や農作物、家畜の管理に注意が必要ですが、しかし日が沈んでから朝方まで外ではコオロギや鈴虫などの虫の音が涼やかに聴こえ、日中の暑さを一時忘れさせてくれます。

winery.jpg県中部の塩尻ではもうそろそろでワイン用のブドウの仕込みがはじまるところですが、このワインの原料となるナイアガラやデラウェアといったアメリカ系のブドウからは、同じブドウでも巨峰にはない甘くフルーティーな香りが漂って、空気を甘くにおわせ、これからの時季この土地では味覚ばかりでなく香りでも楽しむことが出来ます。

soba.jpgそば処の長野県ですが、ちょうど今はこのソバの白い花が咲いている様子が各地で楽しめます。田んぼに稲が実るその隣に同じように白いソバの花畑が広がり、黄緑色と白が広がる畑のコントラストはなかなか見事。県東部の小諸市のソバ畑では「あなたのそばが好き絶叫大会」としてソバ畑の中で愛を叫ぶ催しが行なわれました。200名の観客の前で県内外から30名程の人が愛を叫んだそうですが、これは信州こもろそば振興会が、ソバと側(そば)をかけて昨年からはじめたものです。

長野市内から車で20分ほど行った少し標高の高い場所、そこはすでにススキの穂とそしてコスモスが風に揺られて涼しそうな様子でした。また標高1,200メートルほどにある県中部の開田高原ではおよそ3キロにもおよぶコスモス街道となっていて、こちらは早くも8月下旬には散りはじめたコスモスの花びらもありましたが、9月中旬まで楽しめそうだということです。cosmos.jpgそしてこれからは県北部の黒姫高原コスモス園が、3.8ヘクタールに植えられた約100万本のコスモスをリフトに乗りながら眺めることが出来ます。園内には40種ものコスモスが栽培され、今月中旬には満開になります。さらに18、19日、23〜25日には夜9時まで開園時間を延長し、ライトアップされたコスモスを楽しむことが出来ます。入園料は大人500円。お問い合わせは同園電話:026−255−3171。

sakunofuna.jpg県東部の佐久市、JA佐久浅間管内では、この地方の季節の風物詩であるフナの販売が開始です。甘露煮などの郷土食に欠かせない食材として地元でも人気のフナ。この地域では田植え後に親ブナを放して産卵させ、稲刈りの時期まで大きくさせるのですが、水田を泳ぐフナは雑草を抑制し、また排出する糞は稲の栄養に役立てられます。そうして稲刈り前の9月初旬およそ5センチ前後に生長したフナは、水田の水揚げ後1枚の田んぼで2〜3日がかりで捕まえられ、それは生きたまま出荷されるのですが、毎年このフナを楽しみにしているお客も多く、スーパーや小売店では即完売となるそうです。

dc_arukuma.gif今年10月から本格的に展開を始める「信州デスティネーションキャンペーン(信州DC)」これは全国のJR6社と長野県の観光関係者や市町村等が一体となって誘客活動を行うものですが、県内ではすでに9月より様々なキャンペーンが行なわれています(図はイメージキャラクターの「アルクマ」)。そのひとつが「信州ぐるっと食の祭典キャンペーン」。道の駅や農産物直売所などの対象施設で、パンフレット掲載のメニューを食べたり、直売所で買い物をしてスタンプを集め、それを郵送することによって抽選で長野県内の温泉旅館宿泊券や信州の特産品が当たるというもので、パンフレットは長野県内のJRの主な駅や道の駅、高速道路SA・PA、農産物直売所などに置いてあります。さらには宿泊キャンペーンとして長野県内の宿・旅館・ホテル約1300軒が「ココロとカラダに効く信州」として対象宿泊施設で、信州の健康・長寿体験を気軽に楽しんでもらえる企画を用意。さらに抽選で信州の農産物や無料宿泊券もプレゼント。dc_logo.gif景色の移り変わりと同時に秋ならではの様々な味覚が楽しめるこの時期、どうぞこの信州にへ遊びにおいでください。

0908_top_small_fix.jpg*巻頭のカバー写真を入れ替えました。県南部の伊那市で撮影したソバの花です。暦にもありますが、いま信州ではソバの白い花のじゅうたんが各地に広がっています。そうしてこれからどんどんとソバの茎が赤くなっていきます。ソバの花の多さに、今年はソバの収量も多くなるのではといやがうえにも期待が高まります


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1009-00.png残暑のなかまだ勢いの衰えない雑草と格闘していた農家も、昨日からは大忙しで台風への備えにとりかかっています。新月の今日、やや勢力を落としつつある台風9号が、速度を速め雷をひきつれて雨をたくさん降らせながら北陸地方を通り、その後足早に信州を抜けようとしているからです。もともと日本列島ではこの時期は強い雨風の吹く季節。暦では今日が旧暦の8月1日新月、つまり八朔(はっさく)にあたり、昔から二百十日、二百二十日(11日)と並んで、三大悪日、台風の襲来日として農家には恐れられていた日です。はたせるかなその悪い日に台風が信州をまたいで通り抜けようとしているのです。台風情報によれば9号はどちらかと言えば雨台風だと言われていますし、暑さから農家はどこも水を求めてはいましたが、ここに至っての風だけは大変に困りものです。とにかく被害が最小であることを祈ります。〔平成22年9月8日15時40分、台風第9号は熱帯低気圧に変わりました。〕

sir_francisbeaufort.jpgこの機会ですから風の話しをしておきましょう。風の強さの目安としては、風速の違いにより、0から12まで13階級であらわした風力階級が有名です。1805年にイギリス海軍のビューフォート提督(図)が提唱したため、ビューフォート風力階級と世界中で呼ばれています。海軍の提督が考えただけあって海上の記述の方がより細かいですが、陸上についての気象庁の風力階級もこれに従っています。ラジオの気象通報で流れる「南東の風、風力4」の風力は、まさしくこの風力階級値をあらわしています。

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カラー図版は風力1から12までを図解したものですが、風速がマイル表示になっています。モノクロのものは風速が毎秒なんメートルかに換算したものです。カラーの図版の方が見てすぐにわかりやすいかとも思いますが、両方掲載したのは、風の名称が日本語で書き込まれていたためです。平穏(へいおん)、至軽風(しけいふう)、軽風(けいふう)、軟風(なんぷう)、和風(わふう)、疾風(しっぷう)、雄風(ゆうふう)、強風(きょうふう)、疾強風(しっきょうふう)、大強風(だいきょうふう)、全強風(ぜんきょうふう)、暴風(ぼうふう)、颶風(ぐふう)。日本語の図版には風力12以上が「台風」と書かれていますが、これは「颱風(たいふう)」と「颶風(ぐふう)」の似ている文字の勘違いによるもので、気象学的には「颶風(ぐふう)」が正しいのだそうです。ただ吹いてくる風にもこれほどの違いがあるのです。

typhoon.gifまさに今やってきている台風を「台風9号」とわたしたちは数字で呼んでいますが、気象庁の「台風の番号と名前」というサイトに「北西太平洋または南シナ海で発生する台風防災に関する各国の政府間組織である台風委員会(日本ほか14カ国等が加盟)は、平成12年(2000年)から,北西太平洋または南シナ海の領域で発生する台風には同領域内で用いられている固有の名前(加盟国などが提案した名前)をつけることになりました」と記されています。今、日本の屋根、日本アルプスを越えようとしている台風9号は、国際的には「マーロウ(Malou)」という名前で呼ばれていて、これはマカオが命名したもので「瑪瑙(めのう)」という意味です。(図版は過去にスペースシャトルから撮影された大きな台風です。マーロウはすでに台風の形が壊れていてこれほどきれいには見えません。それでもたくさんの雨を降らせて強い風も吹くので心が休みません)

autumn_night_sky.jpg今日8日はまた二十四節気のひとつ「白露(はくろ)」。江戸時代の「暦便覧」に「陰気ようやく重なりて露にごりて白色となれば也」とあります。秋が本格的に到来し草花に朝露がつくようになるという意味です。太陽が離れていくため、空もだんだんと高くなってきます。最近、陽の沈むのが早くなった夕方に西の空を見ると、宵の明星である金星がだいぶ高度を下げてきていることに気がつきましたか。もうじき宵の明星も見納めになります。月が新月からしばらくの間は、晴れれば夜空を見るのにうってつけの季節です。よく晴れた夜、周囲に明かりのないところでは、一説ではわたしたちは2500の星を数えることが出来るそうです。きっと数えた人がいるのでしょう。

indexarrow.gif 長野県の夏の特徴 長野地方気象台のウェブサイトより
indexarrow.gif 長野県の秋の特徴 長野地方気象台のウェブサイトより

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農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

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