日照不足と低温障害に悩まされた先月までの天候がまるでウソのように、GWからのほぼ10日間は天候にも恵まれて、また真夏日にもなるほどの暑い日もありましたけれど、清々しくさわやかな気候のおかげで、読者のみなさんも心身のリフレッシュをされたことと思います。
連休はいかが過ごされましたか? 連休中のある日、善光寺へと続く道を歩いている人たちに出身地を訊ねたテレビ中継では、なんと37都道府県の人が長野県を訪れていることがわかりました。ありがたいことです。5月に入って信州は花の季節。つつじ、ミズバショウ、シバザクラ、菜の花、ボタンなどが各地で見ごろを迎えています。長野市街地の通りでは「善光寺花回廊ながの花フェスタ2010」という花の祭りが開催され、チューリップの花びらなどで路上を描いた花キャンバス(写真)や、須坂市の須坂園芸高校の生徒50人が制作した1万3千株のペチュニアの花を使っての花の庭園などで、街は華やかに彩られました。
太陽の光をたっぷりと浴びて、街路樹の青葉がいつの間にか青々と、そしてうっそうと葉を繁らせ、葉の一枚一枚がまるで光りを跳ね返す程の生命力溢れる色濃い緑色となっていることに驚きました。緑を増やした善光寺の参道には涼しげな木陰が出来て、爽やかに通り抜ける風に揺られる風鈴の音に、参道を歩く人は暑さも忘れます。周りの木や花も一気に満開となりました。数日前まではチューリップだけの庭が、いつの間にか蕾の固かったジャーマンアイリスがひと晩で花開き、さらには薄紫色のライラックや赤いハナミズキ、つつじの花も咲きはじめています。長野市街地では、至る場所でハナミズキの白と赤の街路樹が交互に咲き競い、きれいな並木道を作っています。
一気に夏になってしまったこの陽気に、しっかりと帽子を被り日傘を差す女性の姿を多く見かけました。また暑さが夕方まで残った先週末は、上着を着ていられないとばかりに、ブレザーを腕にかけて歩くサラリーマンの姿も。気持ちの良い陽気に促されるように、渋滞覚悟で行楽地に出掛けた方も多く、休み明け久々に顔をあわせた同僚にはくっきりと日焼けのあとを残した人も少なくなく、晴天に恵まれた連休は草取りをしたり畑を耕したり、心待ちにしていた野菜や花の苗を植えたりと、農作業に励んだ方も多かったようです。
通常はGW頃に行なうリンゴの摘花作業(写真)。しかし低温が続いた今年は、それも1週間遅れと見込んでいたところが多かったようですが、突然の天候回復によって、長野市の平野部やリンゴの産地として知られる安曇野ではあっという間に一斉に花が満開となり、急遽農家は作業に追われました。ブドウの産地である県北部の須坂市のブドウ農家では、ブドウの傘がけを行う人の姿もありました。さらに長野県では数少ないお茶の生産地として知られる県南部の下伊那郡天龍村でも、急峻(きゅうしゅん)な斜面に広がる茶畑で茶摘み(写真)がはじまりました。
天竜川の朝霧を浴びたお茶は、昔ながらの手摘みで収穫され、各農家ごとお茶の葉が混ざらないように製茶されます。米どころでもある中信地区・安曇野の長野自動車道から眼下に広がる田んぼでは、代かきをして田んぼに水を張り、準備も万端となった田んぼや、さらにもうすでに田植えが済んだところもあるのが景色良く眺められます。
農業機械の利用が多くなる時期ですが、農作業の事故にはくれぐれもご注意ください。事故の多くは、機械を扱う際の安全確認の不十分と、操作の誤りが原因です。また子どもたちを安易に農機具に近づけたり、トラクターに乗せたりしないようにしましょう。さらに草刈作業でも石の跳ね返りによるケガがあるため、作業はヘルメットや保護眼鏡の着用を忘れずに。
レタスの産地である県中心部・塩尻市洗馬では、今月3日より露地もののレタスの出荷がはじまりました。この間の気温の上昇によりようやく例年より1週間ほど遅れてのスタートです。今はまだ小玉ですが徐々に大きさも例年並みとなる見込みで、また価格も以前よりは落ち着いて、今後量が増えることによってみなさまにもたくさんの野菜が食べてもらえる値段に落ち着くことでしょう。洗馬のレタスは6月末まで収穫されます。洗馬のレタスが終わる頃、信州のレタスの産地は県東南部の南牧村や川上村の高原(写真)に移ります。すでにGW中この地域では苗の定植に精を出す人々の姿が見られましたが、こちらの地域では6月下旬から9月まで収穫が続きます。
山菜の美味しい時節。すでに食卓には様々な山菜の料理が並び、食卓を囲む人に喜ばれていることと思いますが、今県内の直売所でもまず人々が向かうのが山菜コーナー。ウドやのびろ、タラの芽にコシアブラ、ワラビにコゴミに、山ぶき、行者ニンニクなど、暖かい日差しに誘われて出かけた直売所には多くの種類の新鮮な山菜と人が溢れていて、どれを買おうかと品定めをする人々の目も真剣そのもの。県では山菜の誤食に注意を呼びかけています。県内では過去34年間に有毒植物による食中毒にあった人が47名にのぼり、よくわからない植物はむやみに獲らない、食べないように。
県北部の歴史と文化の町・小布施では、結婚式などに需要も高いライラックの出荷が最盛期を迎えています。ライラックは香水の原料としても使われるほどに香りの良いものですから、花束にそっと忍ばせるのもいいかもしれません。
残雪が筋となってうっすら残る程度となった県東部の浅間山では8日、浅間山開きが行なわれました。4月には噴火の警戒レベルが2から1の平常までに引き下げられ、火口から500メートルほどの前掛山まで登山できるようになり、この日は昨年の3倍の600名もの大勢の参加者で賑わいました。
景色が至る所で劇的に変化を遂げている今、周囲の山々も、GWはじめは山桜の淡いピンク色が目立っていましたが、後半には軟らかな色をした新緑も多くなり、そしてその色は目に心地良く、色とりどりの配色に山々は楽しげな様子です。さらに気がつけばもうこんなに日が延びていたことにも驚きます。夕方6時半を過ぎても外はまだ明るく、外での農作業の時間も長くなっていることでしょう。
しかしこれまでの気持ちの良かった天候も、今週は今夜からこの時期としては強い寒気が流れ込むため、一転して平年よりも気温は下がる予報。長野地方気象台は低温や遅霜などによる農作物の被害発生に注意を呼びかけており、農家はもちろん、作物の元気な生育を心待ちにするわたしたちも気を揉む週となりそうです。
*巻頭のカバー写真を入れ替えました。新緑の季節が信州にも到来です。ゴールデンウィーク真っ只中の5月3日の午前9時、佐久市前山で撮影しました。春の季節の到来を喜びあうかのように、周囲では鳥たちがさえずりあっていました。指先で軽く若芽に触れるとやわらかく、その姿はまるで生まれたばかりの赤ん坊のようでした。
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●明後日、14日は新月。4月に満月を迎えた月のサイクルがここで終わり、新しい月の旅がはじまります。次の上弦の月が1週間後の14日で、満月は2週間後の28日午前8時。14日金曜日と15日土曜日には、長野市の北西部にあり、神話時代に手力雄命(たぢからおのみこと)が天照大神の隠れていた天岩戸をこじ開けて投げ飛ばしたものが飛んできて御山になったとされる戸隠山に鎮座する戸隠神社の中社(ちゅうしゃ)と奥社(おくしゃ)で「お米を始めとする五穀や農産物の豊作をお祈りするお祭り」が行われます。14日は午前10時から中社で、15日は午前11時から奥社で。
16日から20日までの4日間が、二十四節気の「立夏」をさらに5日ずつ3つに分けた七十二侯の最後の、立春から数えて21番目となる「竹筍生づ(たけのこ しょうづ)」の日々。16日はまたあの信州とも縁の深い松尾芭蕉が、片雲の風に誘われるように、江戸から「奥の細道」(図)に旅立った日です。1689年の旧暦3月27日、太陽暦5月16日。この旅には信濃国下桑原村(現長野県諏訪市)生まれの河合曾良が隨行しました。
今週末日曜日16日は5月の第3日曜日で、本来は二十四節気のひとつ小満(しょうまん)の日に佐久地方に伝わる「お蚕の祭り」が、佐久市臼田の稲荷神社の小満祭(こまんさい)として行われます。同時にJA長野厚生連佐久総合病院として広く知られる佐久病院でも前日の土曜日15日から第64回佐久病院病院祭が行われます。病院が毎年お祭りを行うのも珍しいですが、そのお祭りに1万人を超える数の人が訪れるのも佐久病院が「農民とともにある病院」だからでしょう。今年は佐久病院の育ての親であり、農村医学を確立した地域医療の実践者として高名な外科医師若月俊一(わかつきとしかず)先生生誕100年にあたり、特別な企画も。もちろん商工会や地元JA等と連携した「特産物販売コーナー」もあります。
県南西部のひのきの里、木曽郡上松町の赤沢自然休養林が今年も開園となり、森林鉄道の運行もはじまりました。森林浴の聖地とされる赤沢自然休養林で、リラックス効果のあるヒノキ林の爽やかな香りに包まれながら散策をし、頭と心と体の洗濯をしませんか。今季の営業は11月7日まで。鉄道の運行日などは事前に「森林鉄道運行情報」でご確認を。
これから梅雨に入るまでのしばらくの間は、夕暮れから夜にかけて鮮やかに色の変化する空を見あげるには絶好のときが訪れます。最近は空を見あげていますか。夕方の西の空に明るく輝く一番星があるはずです。宵の明星の金星です。16日には宵の明星が三日月と大接近する美しい眺めが展開されます。そして夜の8時頃になると、南の天空に土星が見えています。望遠鏡がないと輪までは見えませんが。土星のそばには春の大三角が、北の空の高いところには北斗七星があります。いつまで見ていても見飽きません。信州は今、夜空の星を眺めるにもうってつけの季節。天気予報とよく相談してぜひいらしてください。
長野県の春の特徴 長野地方気象台のウェブサイトより
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