長野県では「桜がこんなに長い期間楽しませてくれる春は珍しい」という声が聞こえます。とりもなおさずそれは今年の春がいかに天候不順であるかをつたえているのです。とはいえ信濃路は今、文字通りの「春爛漫」で、どこでも花が目に止まります。善光寺平の桃の畑では桃の花が満開です。安曇野では菜の花が咲きそろい、青空の下常念岳の雪形が農作業のはじまるときの到来を告げています。木々が芽吹き、空気に甘い花の香りが混ざり、午前中は山に霞がかかり、菜の花畑には入り日、そしておぼろ月、夜の降りた空には北斗七星に連なる春の星たちと、自然のすべてが春を喜んでいます。だいぶ寒さもとけて夜に星を見るのにもいいシーズンがやってきました。信州が最も信州らしい美しさを見せているときです。写真は先週末の小諸懐古園。
このところ、朝目が覚めると「ホ〜、ホケキョ」というウグイスの声が聞こえています。春を感じる気持ちのよい目覚めです。この週末は天気に恵まれました。畑ではトラクターやクワで畑を耕す人、種を蒔く人の姿を見かけました。誰もが、気持ちよさそうに農作業をしていました。
ところが、この春は寒暖の差がことのほか激しく、夜がよく晴れて冷え込みが激しい日の信州では、霜害(そうがい)の被害が相次いでいます。霜害とは、主に天気の良い春の夜から早朝にかけて、放射冷却により気温が急激に下がることで生じるこの時期の霜が原因の被害です。都市においては車のガラスが凍りつくぐらいで、凍霜害(とうそうがい)は直接人命を脅かすことはないのですが、土とともに生きる農山村においては遅霜被害額は台風などの激しい現象を上回ることさえあります。長野県も例外ではなく、野菜類の生育不良や出荷時期の大幅な遅れなど、好ましくない影響が出ています。さらに寒暖の差が激しいのは信州だけでなく日本列島の広い範囲におよんでいます。現在の野菜価格の高騰の原因もそこにあります。
長野県の調べによると、今春の気候の冷え込みによる農作物の凍霜害は1000ヘクタール、1億3000万円にも上ることが今週月曜日の26日に判明しました。特に梨、アンズ、アスパラガスの被害が目立っています。果樹は花芽への影響がすぐには分からないため、今後も調査は続きますが、被害額は今後も拡大する見通しです。先週土曜日の未明には県内の果樹農家で一帯を暖めるために「ろう」を盛大に燃やし、赤い炎が夜空を焦がすような光景が各地で見られました。凍霜害は、農家の所得に大きな影響を与えます。例えばこの春、アスパラガスがようやく土から芽を出しはじめた際に霜を受け、アスパラガスの穂先などが凍り傷んで、その多くが出荷不可能となってしまいました。次の芽が伸びてくるまでには時間もかかりますので、消費地に出回る量も減少することが予想され、農家にとっては大きな損害となっています。また、モモやナシなど、果樹の開花時にも霜害があり、この秋の果実の収穫量への悪影響が心配されます。
このように、産地の農家は常に自然の厳しさと闘っています。当ブログをご覧いただいているみなさまにも、このような状況をご理解いただき、毎日の買い物の際にご支援をいただけたら誠に幸いです。春の農産作物被害に対してJA長野県グループは、気象予報と生育状況を見つつ、被害を最小限にするため、品目ごとの事前対策を指導し、また、被害があった場合は迅速に分析し、今後の対応策などを促しています。今後も晩霜(おそじも)の恐れがあるので、引き続き生産農家への助言を続けていきます。なお今後、天候の回復とともに生産量が安定すれば、みなさまの手に入る野菜類の価格も安定すると思われます。
県南部のJA上伊那からは「播種(はしゅ)」作業がピークを迎えているという便りが届いています。秋においしいお米がとれるよう、県内では黙々と米づくりの作業がはじまっています。また、県中心部のJA信州諏訪ではハーブ野菜であります「エンダイブ」の出荷もはじまりました。「エンダイブ」は冷涼な気候を好み、寒さに強い農産物ですが、さすがに今春の天候の狂いに例年より収穫開始が1週間〜10日遅れたそうです。「エンダイブ」の収穫は11月末まで続きます。
直売所では、野沢菜、菜の花、山菜、新タマネギなどの春野菜が並んでいます。アクが強い春野菜の苦味は、抗酸化作用のあるポリフェノールや、新陳代謝を促進する作用が含まれているようなのです。食べすぎもよくありませんが、みなさまも春にしか口に出来ないものを召しあがってください。
*巻頭のカバー写真を入れ替えました。先週の土曜日に長野市内で撮影した桃の花です。県内有数の桃の産地である長野市では今、桃の花があちらこちらで見ごろをむかえています。ここのところの遅霜が心配でしたが、ピンク色のかわいらしい花で、私たちの目を楽しませてくれています。
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●長野県は昨日の午後から雨雲に覆われていますが今日28日は満月。そして4月28日は日本で初めて缶ジュースが発売された日でもあります。昭和29年、1954年のことでした。56年前のことですが、缶入り飲料の普及には目を見張るものがあります。リサイクル100%を目指しましょう。明日29日にはゴールデンウイークがスタートします。つい先日の調査では今年のGWは昨年より近場で過ごす予定の人が多いとか。今の季節の信州は春の到来を祝福するのにうってつけの場所ですよ。
土曜日は、月がかわって5月1日。夜空にはほぼ満月が。5月の満月のことを自然のことをよく見ていた北米先住民などは「花の月(FULL FLOWER MOON)」と呼んでいます。まさしく信州も5月は花のときで、次々と花が開き、風にさまざまな花の匂いがしています。
2日日曜日は八十八夜。立春から数えて88日目になります。「八十八夜の別れ霜」という言い伝えがあるように農家にとってはひとつの区切りとなる日です。前述の通り農家にとって霜の害はおそろしい結果をもたらすので、この季節農業者は霜にはきわめて敏感になっています。今年のように天候が不順であればなおさらです。しかし信州は広く、高度もまちまちなマウンテンカントリーなので、どこでもこの日がくればもう安心というわけにはいきません。あくまでも目安に過ぎません。「九十九夜の涙霜」ということもあるからです。また「若葉冷え」といって、八十八夜前後にいきなり気温が下がることもあります。いずれにしてもまだしばらくは警戒が必要なので、農家はのんびりゴールデンウイークというわけにはいかないのです。
3日、憲法記念日のこの日は、南アルプスの麓の下伊那郡大鹿村で大鹿歌舞伎の定期公演が行われます。正午開演で午後四時頃まで。大磧(おおがわら)神社舞台が会場で、入場は無料。300年以上伝承されている伝統芸能です。県の文化使節としてヨーロッパ各国で公演など国内外で多くの公演をおこなっていて、国選択無形民俗文化財にも指定され、昔ながらの野外観劇スタイルと伝統の技を目当てに毎年この日には全国から多くのファンが訪れます。今年の演目は「奥州安達原 宗任物語の段」(おうしゅうあだちがはら むねとうものがたりのだん)と「六千両後日文章 重忠館の段」(ろくせんりょうごじつのぶんしょう しげただやかたのだん)です。
信州の人々の生命の道とされるのが千国街道でした。なぜ生命の道かといいますと、昔この街道で塩を運んだことに由来します。北アルプスの麓の小谷村、白馬村、大町市では、塩の道祭りとして、かつて塩が運ばれたその街道をみんなで楽しく歩こうという祭を毎年おこなっていて今年は31回目になります。予約不要で誰でも参加できます。3日小谷村、4日白馬村、5日大町市で、3日続けて北アルプスを見つめながら歩くのもよし、いずれか1日だけ歩くのも又よし。詳しくは「塩の道祭りの公式サイト」へ。
5日こどもの日は又二十四節気のひとつ「立夏(りっか)」。詳しくいうと5月5日の24時から暦のうえでは夏にはいります。暦便覧という江戸の暦には「夏の立つがゆへ也」とあり、この日から6月21日の夏至を間にはさんで立秋(今年は8月7日の24時)までが夏とされています。5月5日がこどもの日になるのは、太平洋戦争に負けて民主国家となってからのことでした。それ以前は「端午の節供」と呼ばれていました。「節句」ではなく「節供」です。昔の日本では田植えは女性の勤めとされていたことはみなさんもご存じかもしれません。今でも神社などのお田植えの神事では「早乙女(さおとめ)」と呼ばれる若い女性たちが田に入って田植えをしている光景が見られます。端午の節供の日は、女性たちが家にこもって田植えの前に身を清めるための儀式の日だったのです。邪気を払うために、菖蒲や蓬を軒に挿し、粽や柏餅を食べました。この日は、この長野県のおいしい食べ方ブログマガジンの発行更新の日ですが、田植えの季節でもあり、お休みをいただきます。次号は12日水曜日の発行になります。
6日は下弦の月。8日は浅間山開き。9日が母の日です。母の日そのものはアメリカにはじまりましたが、イギリスなどでは16世紀頃に「母親と過ごす日曜日」という風習がすでにあり、長男か長女のいずれかが「母親のためのケーキ」を焼いて持ちより、これを家族全員で楽しんだそうです。母親を祝福するのは、女性の力が強かった古代に起源があるといわれています。今の母の日は、1907年にフィラデルフィアに暮らしていたアメリカ人のアンナ・ジャービスという母親思いの女性の発案ではじまりました。彼女の思いつきはたちまち街の人たち、各地の都市の人たち、全米の州に広まり、
1914年の5月8日、アメリカの大統領だったウッドロー・ウィルソンが5月の第2週の日曜日を母の日にすることを決定し、これが数年もしないうちに全世界に広まり、世界中が同じ日に母の日を祝うようになりました。花がさまざまに咲く5月の日曜日に、花と食べ物をもって母親を訪ねて、家族がみなで食事をするというのは、なかなかのイベントではありませんか。
長野県の春の特徴 長野地方気象台のウェブサイトより
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