「一番は、本当においしいお米のパンを食べてもらいたいのです。地元で育てたものを、わたしたちの範囲で地元にかえしていくことが使命だと感じています。また、地域のみなさんから、おっ頑張ってるじゃないか、と思ってもらって、梓川地区が元気になればいいなと思います」
そのように語るのは長野県松本市梓川地区を想う女性農業者らでつくる加工組合「さくら」の事務長を務める倉科喜美子さん。(写真)
加工組合「さくら」では、長野県松本市にある農産加工施設「あずさ夢工房」を利用して、パンや菓子、餅、惣菜、漬物、ジャム、清涼飲料水などのあらゆるおいしい加工品を作っています。
米粉を使ったパンが口コミで人気に
なかでも、米粉(こめこ)のパンは、モチモチした食感が、多くの人を魅了し、その美味しさで、最近は口コミで人気が広がっています。
取材にうかがった先週のその日も、開店と同時にお客さんが入れ替わり立ち代りに訪れるにぎわいぶりでした。
なかでもやわらかみそパンはまことに秀逸
店頭に並べられた、2006年に第16回信州の味のコンクールで最優秀賞の県知事賞を受賞した発芽玄米粉を使った人気商品「やわらかみそパン」(写真)も、みるみるうちになくなっていきます。
妙に懐かしく優しい香りに包まれる工房のその暖かいパンや加工品に込められた思いをたずねてみることにしました。
パンやケーキににこめられたお母さんたちの思い
加工組合「さくら」は、2005年4月1日に、旧梓川村と松本市の合併を機に発足。現在は約50人の元気なお母さんたちが、それぞれ役割を担って活き活きと働いています。
店内に並ぶ、商品の8割は米粉(米を粉にしたもの)を使用する商品。代表の斉藤利恵さんは、
「わたしたちの活動には、米の消費拡大が基本にあります。ただ、米を食べるだけでは限界があるなと感じ、おいしいパンにするため試行錯誤を重ねました。ざっと数えて6年以上ですね」とニッコリ。
工房は発足して3年目が経とうとしていますが、この組合が数々の優れた加工品を生み出している背景には、工房ができる前の旧梓川村時代に、前身となる加工研究会が作られており、そこで熱心に様々な製品開発に取り組んできたことが挙げられます。
ものを作ることがとにかく楽しくて
「ものづくりが好きなお母さんが集まっているから楽しくてしょうがないんです。アイデアは尽きません。会話や旬の食材、話題などからポッと出ることもありますよ。ただ、商売はあまり考えていないでの、決してもうかるものではありませんけどね」
前述の倉科事務長さんも、そういうと、笑顔で今出来立てオススメの「豆乳ビスケット」を紹介してくれました。
商品の多くに使われる米は、もちろん長野県産。しかし、原料となる米は、パンやケーキ通常の小麦等に比べると約5倍の価格になります。しかしそれでも、おいしいものをみなさんに恩返ししたいから、という思いがあるので、特に値上げをすることはないのだそうです。
やわらかみそパンには脱帽しました
お母さんたちのこだわりと思いは、一品一品に込められていました。たとえば冒頭で紹介した人気商品の「やわらかみそパン」に使用している発芽玄米は、梓川でとれた餅米を使っています。
さっそくその「やわらかみそパン」をいただいてみると、モッチリ!! モチモチで、口に入れた食感がなんともたまりません。
まさしく、びっくりです。米粉だから固いのでは、との考えは、一瞬で消えてしまいました。また、後を引くみその香りがなんとも言えず、自分を抑えきれずにすぐほうばってしまったほどです。そしてこの味噌も、地域でとれた大豆を使用しつくった自家製の味噌なのだとか。
他にも「こめこのロールケーキ」などさまざまな創造力豊かな米粉を使った商品は、どれもオススメに値するおいしさなのです。
丸ごとりんごを今年の末にはぜひ食べてみたい
たとえば、地元の厳選リンゴ「ふじ」をまるまる使い、これを米粉生地でやさしく包んで焼き上げた期間限定の「丸ごとリンゴ」は、とにかくリピーターが多く全国から注文が寄せられる人気商品。リンゴの甘さと生地の食感、また、カスタードが至福を運んでくれるのです。
なおこの「丸ごとリンゴ」は、リンゴ「ふじ」が出始める12月〜冬季間のみの販売ですので、時期をみてぜひことしの暮れに再び紹介をするつもりです。(取材にうかがった日は、最後の予約販売のものをこうして写真撮影することができました)
「3年目に入り、ようやくここまで走り抜けた感じです。経営や商売が分からないわたしたちだから、出来たのかも知れません。でも、地域の地産地消を進め、梓川地区だから味わえるそんな商品をみなさんに提供し続けたいです」と代表の斉藤さんは、話してくれました。
夢がひとつひとつのパンやケーキに詰まってる
お母さんたちの夢を詰め込んだパンやケーキが、今日もひとつひとつ焼かれています。加工組合「さくら」のお母さんたちの活動は、現在、地域活性化の元として地元の期待を一身に集めています。
どうか食べに出かけてみてください
インターネットのホームページを開く予定もなく、しっかりした通信販売の体制もありませんが、多くの人たちがぜひとも足を運び、また旅の途中に足を伸ばして、工房を訪れ、米粉で作られるお母さんたちのパンやケーキを食べてほしいものであります。
なにしろ、その出来立てのモッチリ食感は、誰もが納得するぐらい保証つきの「ビックリ!」なのですから。
梓川水田農産物処理加工施設 あずさ夢工房
〒390−1701長野県松本市梓川倭4175−1
電話/FAX0263−78−6183
営業時間/午前8:30〜午後5:30
定休日/月曜日
※商品によっては、全国発送も行なっているそうです。
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