長野県にもときどき初夏のような暖かさがもたらされるようになりました。県内各地から、次々と桜の便りが届いています。先週末はいくつかの桜の名所が満開を迎えたので、お花見に出かけた方も多かったようです。土曜日は広い範囲であいにくの雨、肌寒い一日となりましたが、雨に濡れた桜並木もまた静かな風情があり、いつもとは違った一面を見せてくれました。水も滴るいい桜、といったところでしょうか。打って変わって日曜日は本当にいい天気。各地の桜の名所には多くの人が訪れ、お花見を楽しみました。はやくも散りはじめた所もありますが、場所によってはゴールデンウイークまで楽しめそうです。
信州の春を彩る花は、桜以外にもいろいろあります。桜が散ってしまう頃に見頃を迎える黄色い花と言えば、菜の花。県内には菜の花の名所と呼ばれる場所がいくつかあり、飯山市ではゴールデンウィーク中の5月3日から5日まで、第28回いいやま菜の花まつりが開かれます。飯山は唱歌「朧月夜」ゆかりの地。ここのの菜の花は野沢菜です。でも信州の菜の花畑が全部野沢菜ではないのです。
そういえば別の菜の花についての悲しいニュースもありました。今、松本・安曇野を舞台とする朝のNHK連続テレビ小説「おひさま」が放送されていますが、そこに登場するソバ畑のシーンのロケが行われた大町市美麻の中山高原も、菜の花の名所として有名なところです。ここの菜の花はアブラナの花で、当ブログマガジンでも昨年の5月に「ここでしか生まれない特別なバージンオイル」という記事で取りあげたように、特別な菜種油を生産しています。5月になれば、残雪の北アルプスと一面の菜の花との素晴らしいコントラストが楽しめる絶景スポットです。しかし今年はそこの菜の花がシカなどに食べられてしまい、全滅。地元の方の話では、2004年から菜の花の栽培を初めて以来、初めてとのことです。おりしも今年はNHKで「おひさま」が放送中ということもあり、例年以上に観光客が訪れるのではと期待していた矢先の出来事でした。
突然このような事が起こってしまい、管理生産している菜の花農業生産組合も頭を抱えています。組合では、これからソバの種を撒いて、6月にはソバの花を楽しんでもらい、7月下旬からは例年通りソバと菜の花を撒くことにするようです。菜の花畑が楽しめないことはもちろん、中山高原産の菜種油が作られないことも、生産者さんや楽しみにしていた方々にとって大変悲しい出来事となってしまいました。自然を相手にする農業ですから絶望ばかりをしているわけには行きません。前を向いて6月、8月末のソバ畑を楽しみに待ちましょう。
佐久市平賀のJA佐久浅間平賀味噌加工所では、みその仕込みが最盛期を迎えています。手作りにこだわり、昔ながらの味を大切にしているため、麹(こうじ)づくりから始まり、3日掛けて仕込むそうです。5月末までに約40トンを生産する予定で、10月には食べ頃を迎えるとのこと。JA佐久浅間は、この度の東日本大震災で被災した友好都市である岩手県大船渡市へ、支援物資として平賀味噌600キロを送りました。
4月22日のデータですが、長野県内の公立小・中・高等学校・特別支援学校では東日本大震災の被災地域から、139人の生徒を受け入れています。災害のショックも薄れない中、慣れない環境で頑張る新しい仲間たちが安心して暮らせる雰囲気を作り出す。これが私たち長野県民が頑張らないといけない、ずくを出さないといけないところです。連日ニュースで、福島県から避難してきた方々に対する差別やいじめが取り沙汰されています。「がんばろう、日本」という言葉は、被災者に向けて一方的に「がんばろう」と言っているのではなく、日本全体の人が今何が出来るかを考えて行動しよう、あきらめないぞ、あきらめてたまるか、という意味のはずです。
3月12日未明に発生した長野県北部地震で甚大な被害を受けた栄村では、雪解けが進むに連れて、徐々に田んぼなど農地の様子がはっきりしてきました。陥没やひび割れ、波打ちなどの被害によって、大々的な修復が必要な農地が広範囲にわたって見つかっています。そんな中、栄村では今年の稲作に向けてスジ蒔き(稲の種を蒔く作業)がはじまりました。たくさんの苗箱が積み上げられているのを見ると、村内の多くの田んぼ農家が、震災に負けずに今年も絶対田植えを行うぞという強い意志を持っていることが分かります。復興へ向けて、日本全国が力を合わせ、一歩ずつでも力強く進んで行きたいですね。
まだ少し肌寒い日もありますが、冒頭にも記したように暖かさを感じる日も増えてきました。先日、公園の脇でふと足元を見ると、春の陽気に誘われたのか、小さなトカゲが気持ちよさそうに日向ぼっこをしていました。動物や植物たちも暖かくなって嬉しそうです。季節の変わり目ですねえ。天気予報を毎日チェックするなど寒暖の差に気をつけて、風邪を引かないようにしたいものです。
*巻頭のカバー写真。気象の影響から生長が遅れている今年のアスパラガスですが、土の中でその根はしっかりとして大きく、そこから伸びる1本のアスパラガスはまっすぐ天を向き、とても気高く見えました。県北部のハウスの中で柔らかな萌え色をして育つアスパラガスは、遅い春の到来を告げています。
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●ご存じでしたか、28日は「象の日」なのです。「ぞうのひ」などという日があったのです。1729(享保14)年のこの日、交趾国(現在のベトナム)からの献上品として清の商人により初めて日本に渡来した象が、天皇の御前で披露されたとか。この時の象はその後一ヶ月かけて江戸の町まで連れてこられて将軍も見たようです。さて、まず長野県で象と言えば「ナウマン象」です。信濃町野尻潮、信濃町柏原、長野市、中野市、上田市、青木村、小諸市、佐久市、佐久穂町、南牧村、富士見町など、11カ所ほどでこの象の化石が発見されています。信州の地も2万年もまえには象がたくさん暮らすところだったのです。信濃町の野尻湖畔にある野尻湖ナウマンゾウ博物館の近く、国道18号線野尻バイパスの野尻湖入口交差点に、ナウマンゾウ親子のレプリカモニュメント(実物大復元像)が並んで建っているので一度はご覧になるといいかもしれません。ツーリストアトラクションとしてもなかなかの迫力ものです。上信越自動車道信濃町インターチェンジからだと5分ほどのところ。信濃路のドライブ途中で巨大な象の親子が視界に飛び込んできたときのみんなの顔は見物です。
今週の金曜日いよいよゴールデンウイークのはじまりです。29日が昭和の日。この日、千曲市雨宮にある「雨宮坐日吉神社(あめのみやにいますひよしじんじゃ)」では3年に1度「雨宮の御神事(あめのみやのごじんじ)」がおこなわれることになっていました。平安時代から続くとされる祭りです。クライマックスの「橋懸かり」の神事は、国の重要無形民俗文化財に指定されるもので、高さ約7mの橋上から4体の獅子に扮した男性が逆さ吊りにされ、水面に頭を打ちつけ水しぶきをあげて踊るという勇壮なもの。いつもたくさんの見物人を集めてきました。今年はその3年に一度の神事の時であったのですが、東日本大震災のため中止となりました。残念です。次回は2014年を予定しています。
30日、この日は八十八夜。立春から数えて88日目になります。「八十八夜の別れ霜」という言い伝えがあるように農家にとってはひとつの区切りとなる日です。その教えの通り農家にとって霜の害はおそろしい結果をもたらすので、この季節農業者は霜にはきわめて敏感になっています。最近のように天候が不順であればなおさらです。しかし信州は広く、高度もまちまちなマウンテンカントリーなので、どこでもこの日がくればもう安心というわけにはいきません。あくまでも目安に過ぎません。「九十九夜の涙霜」ということもあるからです。また「若葉冷え」といって、八十八夜前後にいきなり気温が下がることもあります。いずれにしてもまだしばらくは警戒が必要なので、農家はのんびりゴールデンウイークというわけにはいきそうもありません。
5月1日は日曜日。新月となる3日は憲法記念日。この日は、南アルプスの麓の下伊那郡大鹿村で大鹿歌舞伎の定期公演が行われます。正午開演で午後四時頃まで。大磧(おおがわら)神社舞台が会場で、入場は無料。300年以上伝承されている伝統芸能です。県の文化使節としてヨーロッパ各国で公演など国内外で多くの公演をおこなっていて、国選択無形民俗文化財にも指定され、昔ながらの野外観劇スタイルと伝統の技を目当てに毎年この日には全国から多くのファンが訪れます。4日、5日はそれぞれみどりの日、こどもの日で休日が続きます。4日は本来ならこの長野県のおいしい食べ方ブログマガジンの発行更新の日ですが、連休のまっただ中ゆえお休みをいただきます。次号は11日水曜日の発行になります。
5月5日がこどもの日になるのは、太平洋戦争に負けて民主国家となってからのことでした。それ以前は「端午の節供」と呼ばれていました。「節句」ではなく「節供」です。昔の日本では田植えは女性の勤めとされていたことはみなさんもご存じかもしれません。今でも神社などのお田植えの神事では「早乙女(さおとめ)」と呼ばれる若い女性たちが田に入って田植えをしている光景が見られます。端午の節供の日は、女性たちが家にこもって田植えの前に身を清めるための儀式の日だったのです。邪気を払うために、菖蒲やよもぎを軒に挿し、粽や柏餅を食べました。まず信州では、菖蒲もよもぎも熊笹も5月初めでは生長していませんので、ひと月遅れの夏間近におこなうところも多いようです。
6日は二十四節気のひとつ「立夏(りっか)」。詳しくいうと5月6日の朝5時から暦のうえでは夏にはいります。暦便覧という江戸の暦には「夏の立つがゆへ也」とあり、この日から6月21日の夏至を間にはさんで立秋(今年は8月8日の午前6時)までが公式では夏とされています。
5月8日が母の日です。母の日そのものはアメリカにはじまりましたが、イギリスなどでは16世紀頃に「母親と過ごす日曜日」という風習がすでにあり、長男か長女のいずれかが「母親のためのケーキ」を焼いて持ちより、これを家族全員で楽しんだそうです。母親を祝福するのは、女性の力が強かった古代に起源があるといわれています。母の日のカーネーションは、アメリカ人のアンナ・ジャービスという女性が、母の死後の1907年に亡き母の墓に白いカーネーションを飾って祝ったことに由来します。
母親が生きているときは赤いカーネーションを、すでに亡くなってしまった母親のためには白いカーネーションを捧げるのがならわしです。一人の女性の母への思いが世界中に広がっていき、母の日を日本でも祝うようになったのは昭和24年(1949)頃から。母の日をカーネーションで祝う風習は20世紀になってからのもので、比較的新しいのです。
10日は「鳥の日」「愛鳥の日」とされていて、バード・ウィーク(愛鳥週間)のはじまる週です。愛鳥週間に主体的に取り組んでいるのは環境省と日本鳥類保護連盟で、今年は第65回全国野鳥保護のつどいが、「都市部における人と野鳥の共存」をテーマに東京で開催されます。日本鳥類保護連盟はバードウオッチングに最適の長野県の探鳥地を「軽井沢野鳥の森(JR「軽井沢駅」・しなの鉄道「中軽井沢駅」→西武高原バス草津温泉方面「西区入口」下車→徒歩5分)」としていて、そこではアカゲラ、コゲラ、オオルリ、キビタキ、ノジコ、ミソサザイ、シジュウカラ、ゴジュウカラなどを見ることができます。もちろんわたしたちの信州では全域でたくさんの鳥たちを見ることができますけれど。そして今年がはじまってから131日目になる11日は上弦の月。今年の残りは234日です。
長野県の春の気象の特徴
長野県の夏の気象の特徴 長野地方気象台のウェブサイトより
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