バンク―バ冬季オリンピックは、さまざまな感動をわたしたちに残してくれました。一度見たきりでは飽き足らず何度も繰り返しテレビに釘付けになったオリンピックでした。そして暦はもう3月に。そして今日3月3日はひな祭り。各地のひな飾りの模様は一気に春がやってきたような華やぎで、女の子ばかりでなく大人までもが心ウキウキとします。そうしてこれから外の景色もだんだんと花で溢れる季節を迎えることとなります。3月は気候の変化といい、人の立場の変化といい、めまぐるしい変化の時期でありますが、暖かさへ向かう天と地の陽気にも後押しされて、なんだか希望の光に包まれているようです。
県内は先週、暖かすぎるほどの日が続きました。高気圧に見舞われた先週25日は、県東部の上田市で県内最高の20.9度まで気温が上昇したほか、他の各地区でも4月上旬から5月上旬並みの暖かさとなりました。県南部の下伊那郡天龍村では、竜峡小梅の花が咲き、辺り一面春の香りに包まれているといった便りが聞かれました。そんな花の便りを羨ましく、北上すること約200キロ、県北部の長野市でも春を探そうと近所をブラブラ歩いてみれば、畑のあぜ道には可愛らしい青色のオオイヌノフグリが。さらに庭の花壇にはスイセンも蕾を脹らませ、また顔を高く上げれば、モクレンの蕾がすでに中指ほどにぷっくりと脹らんでいるのがはっきりわかりました。
冬の間枯れたような状態にあったアジサイからは、新緑のやわらかな色の葉っぱが今はまだ蕾のように小さな固まりの状態で覗いていましたが、そこには確かに生命の灯火が見てとれました。そして垣根越しに眺めたあるお宅の庭には、小さな花弁をもった白梅の花びらがすでにほころびをはじめたのを見て、とても嬉しい気持ちになりました。
長野市街地ではコートが不要なほどのぽかぽか陽気で、ほんのひと月前まで寒さに凍えていたのがウソのようです。近年になく大量の雪と、そして寒さに悩まされた今シーズンではありましたが、もうここまでくればそんな雪と寒さともようやくおさらばできるとひと安心です。肌に当たる風がたとえヒンヤリとするものであっても心地良くすら感じますが、しかし夕方近くなる頃から、やはりまだまだ山国信州は、昼間とはだいぶ異なる表情の寒さをもって襲ってくるので、油断はできません。遊びに来られる方もしっかりと防寒対策をして来てください。
そしていよいよ、このところの気温の高さによって、県内でもスギ花粉の飛散が確認されたということです。日本気象協会長野支店(長野市)によると、今年の県内のスギ、ヒノキの花粉の飛散の量は、昨年夏の日照不足や低温多雨の影響で、非常に少ないとしていますが、花粉が多く飛ぶ、暖かく風の強い日には、くれぐれもご注意を。
しかしこのところの県内の天気は、先週の金曜日から月曜日までは毎日雨降り。そしてところどころ太陽が顔を覗かせながらも今週の予報には傘マークがちらほら。しかしそうしてひと雨毎に暖かくなり春に近づいていくのですね。
この時期県内各地の女性部グループを中心に、味噌作りが行われています。地元産の大豆を使用して手作りによって作られるこだわりの味噌づくりは、市販のものとは一味違い手作りが止められなくなる美味しさなのだとか。味噌を仕込むのにちょうど良い気温の今は、暖かくなるに従って発酵もうまく進むということで、およそ10ヵ月程の熟成期間を経て、手作りの信州味噌は食べ頃を迎えます。
県中部の松本市山形地区では、いよいよ春堀りの長芋の収穫がはじまります。地中深くで生長する長芋ですが、秋に収穫されなかったものは土の中で冬を越し、土の凍みが溶け出す頃から再び行われる長芋掘り。中には春掘りの方が甘味が貯まって美味しく感じるという人も。この長芋掘りは4月中旬まで行われる予定です。
春を感じる野菜のグリーンアスパラガスの姿が、少しずつ店頭に並ぶようになりました。気温35℃の真夏並みの暑さのビニールハウスの中では、たっぷりの肥料を栄養として、アスパラガスはすくすくと生長していました。今農家は甘くてやわらかくておいしいグリーンアスパラガスを一生懸命作っているところですので、たくさん食べれるようになるまで、その時をもう少しだけ楽しみに待っていてくださいね。
*巻頭のカバー写真を入れ替えました。先週末(2月27日)、千曲市森地区で撮影した小麦畑です。4月初めになるとあんずの花で楽しませてくれるところですが、粉食文化盛んな長野県内でも小麦の生産の盛んな地域でもあります。3〜4cmに成長した麦の青さが、いよいよやってくる信州の春を実感させてくれます。
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●暖かい風か吹いていた先月後半、2月20日に、安曇野の白鳥たちの北帰行がはじまったと安曇野市のホームページの白鳥飛来情報が伝えていました。全員が1度に帰ってしまったのではなく、準備が整ったりせっかちな白鳥から飛び立っているのです。3月1日には518羽がとどまっていました。もちろん北へ帰るといってもそのまままっすぐシベリアに向かうのではなく、とりあえずは中継地の北海道に向かっての旅になります。昨年の10月中旬に飛来しはじめ、5ヶ月間ほどの冬のあいだ安曇野に来ていた白鳥にとっては、南の安曇野と北のシベリアのどちらが家を感じているのか興味があります。そういえば縄文人は冬には南に移動し、夏には北に移動して生涯を送ったと言われていますが、白鳥も同じ気持ちなのかもしれません。
寒暖を繰り返しながら暖かさを増してゆく3月。西洋では、3月はしばしば「獅子」と「子羊」にたとえられます。「獅子」は「ライオン」ですね。「獅子のごとくやってきた3月は、子羊として去っていき、子羊のごとくやってきた3月は、獅子のごとく去っていく」という言い伝えがありました。3月と獅子にどんな関係があるかというと、3月になると星座のしし座が東からあがってくるからだとも言われています。しし座は北斗七星の柄杓の下の方にすでに現れています。また春は強風の吹く季節でもあり、天気がしばしば荒れるために、ライオンのように荒れ狂うと考えられたのです。ともするとおだやかな春のはじまりを連想しがちですが、春はもともと南から強い風が吹いて天気が荒れる季節ですし、「春の嵐」という言葉もあるぐらいで、注意が必要です。
信州には雪をあらわす独特の表現として「上雪(かみゆき)」と「下雪(しもゆき)」という言葉があります。気圧配置のうえで西高東低の冬型が強まり、日本海側が大雪になったりする時の雪を「下雪・北の雪」、本州の南岸沿いを低気圧が進み、信州南部、山梨、関東方面に降雪があったりする時の雪を「上雪・南の雪」といいます。そのふたつは雪質もまるで違い、上雪はボタン雪、下雪は粉雪です。信州からみると上京する東京(江戸)関東方面が「上」になり、地図上では南にあたるので、このような呼び方になっているわけです。同じ信州でも北部にどかどかと降る雪は「下雪」で、南部に降る雪は「上雪」と呼ばれます。
本日3日は桃の節供、そしてひな祭り。旧暦の3月3日が桃の花の咲く季節から桃の節句などと呼ばれています。信州では、旧暦に近づけるべく月遅れの4月3日にひな祭りをするところが多く、1カ月以上おひなさまを飾ったままにするところも珍しくありません。ひな祭りはもともと中国に端を発し、朝鮮半島を経由して古代に日本列島にもたらされた祭りのひとつです。もともとは旧暦3月上旬の巳の日に川で身を清め不浄を祓う習慣で、このおもむきを色濃く残していたのが東信州の村々でかつておこなわれていた「かなんばれ」という伝統行事です。「流し雛」といって、女の子たちが古くなったおひなさまや人形、それとお餅、おしる粉の材料などを持って川原に行き、蚕かごやむしろなどで簡単な小屋を作ってそこにひな人形を飾り、中に石でカマドをつくって、流木を燃やしてしるこを煮て、おひなさまに供えてからみんなで食べ、そのあとで楽しく遊んで、最後におひなさまをさんだわらにのせて川に流したといいます。この行事が最後まで残っていたのは南佐久郡北相木村でしたが、昭和20年代に途絶えてしまいました。「かなんばれ」は、漢字で書くと「家難祓」となり「家の難を祓う」となります。人のけがれやわずらいを、人形が身がわりになって払い流してくれるという考え方は、全国にあったようです。
5日には信州を含む関東から九州のあいだの桜の開花予想が発表になります。今年の3回目の予想です。前回は2月17日に予想が発表になり、長野県の開花傾向は早くて、平年より3日早い4月11日頃となっていました。
6日は二十四節気のひとつ「啓蟄(けいちつ)」です。「啓」は開くという意味、「蟄」は虫が土中に隠れること、閉じこもることという意味で、二つ組み合わさって土中に閉じこもっていた虫がその穴の口を開いて出てくるというイメージになります。暦便覧には「陽気地中にうごき、ちぢまる虫、穴をひらき出れば也」と記されています。冬眠をしていた虫が穴から出てくる頃という意味です。この日から春分の日までの間が啓蟄の期間とされていて、順調に推移すれば、冬蘢りの虫が出てきて、桃の花が咲きはじめ、青虫が羽化して紋白蝶になり、ウグイスたちが鳴きはじめるのです。8日は下弦の月。
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