日毎に寒さを感じるこの頃。早朝に吐く息は白く、手袋が欲しくなるときもあれば、車のフロントガラスが凍るときもあります。長野市街地から望める飯綱山(標高1,917メートル)の山頂は、明け方うっすらと綿帽子をかぶっていました。
本日7日は立冬。暦のうえでは冬の始まりとされる日で、いよいよこれから立春までの3カ月が冬になります。
紅葉の色付きも徐々に里へと降りてきて、庭の木の葉はカラフルな色合いをしている一方、落ち葉掃きにも忙しい日々です。庭木の剪定に追われる庭師さんたちの姿も冬の到来を感じさせてくれます。
皆様お待たせしました!リンゴの“ふじ(サンふじ)”が、今週からいよいよ出荷になりました。「いまだかつてこれを上回る美味しいリンゴはない」とまで言われるふじ。今年は天候の影響で生育は遅れていたものの、このところの朝晩の冷え込みによって色付きは良くなり、また糖度は高く、サイズは大き目ということ。
県内では今月23日の勤労感謝の日くらいまで、各地でリンゴ祭りが開催されます。また10日(土)〜11日(日)には長野市ビックハットで「長野まるごと秋祭り」が開催され、リンゴはもちろん、県下市町村の特産品や名産品、ご当地グルメの販売も行なわれます。さらにこの2日間は、東京の日比谷公園で催される農林水産祭でも、長野県のリンゴが販売されますから、都内にお住まいの方は、自宅用に、そしてお世話になったあの方へと、信州のリンゴを目当てに出掛けてみてはいかがでしょうか。
ちなみに、長野県のリンゴの生産量は青森県には及ばないものの、その消費量は県北部の長野市が全国1位で、リンゴがとっても大好きなのです。
これから訪れる本格的な冬を目前にして畑仕事も忙しい時期。玉ねぎの植付けや、キヌサヤ、野沢菜の種蒔きなど来春用に食べる野菜の準備も怠りないようにと、お天道様が顔を出し、日中はまだ温かなこの時期は、畑仕事がはかどる貴重な日々となります。
小松菜や春菊など畑で穫れる秋冬野菜が美味しい季節。畑によっては生長した野沢菜がもう1メートルほどに大きくなっています。野沢菜漬けの本場、下高井郡野沢温泉村では、この野沢菜の「蕪主(かぶぬし)」によって収穫体験が行われ、県内外から訪れた蕪主たちがその収穫を楽しんだようです。
白菜や大根が美味しい季節となりました。これらは鍋や汁ものなど体を温める料理の名脇役ですが、信州では漬け物の材料としても欠かせません。今では自分で漬け物を漬ける人も少なくなっているようですが、実家や自宅で漬けられた自家製のものは、長年慣れ親しんだ心安らぐ味。寒さが身にしみる今月中旬から下旬にかけて、白菜、そして大根の漬け物づくりも忙しくなります。
長芋の収穫が始まっています。県内で二大産地として知られるのは、県中部の東筑摩郡山形村と県北部の長野市松代。土地ごとに味わいも少し異なり、山形村の長芋は粘りが強い一方、松代町のものは、山形村のものよりもサラッとしているようです。お年取りにも欠かせない長芋はこれから春先まで収穫が行われます。
先人たちの知恵が創りだした天然スイーツの「市田柿」。名産地である県南部の飯田、下伊那地方では、その干し柿の原料になる柿の収穫が始まっています。地元JAみなみ信州管内では、およそ2,500名が生産・加工を行っていますが、今年の柿は糖度も高く質も良いということ。およそ20〜25日間ほど乾燥させたのち、11月下旬から東京、大阪、名古屋を中心に全国へと発送されます。
この干し柿、古くから砂糖の代用として煮物に利用され、また最近では細く切ってサラダに入れるなど、食べ方も時代とともに変わってきていますが、脳の栄養源ブドウ糖をそのまま摂取できる市田柿は、受験勉強や現代人の仕事のお供にも最適です。年末年始にはこれがないと寂しいと感じる人も県内には多いはず。ご贈答としてもご利用ください。
この時期、広い県内をぐるりと廻っていると目立つのが「新そば」ののぼり旗。うっすらと緑がかり、香り高いのが特徴の新そばですが、ひと口に「信州そば」といっても、そばに含まれるそば粉の割合や打ち方、食べ方、つゆの味など、土地や店によっても様々です。オヤマボクチ(ヤマゴボウ)の葉の繊維をつなぎに使った「富倉そば」や「須賀川そば」、昼夜の気温差が大きく朝霧が発生しやすい場所で栽培された「霧下そば」、その評判は江戸にまで届いていたという、5〜6束に分けて盛られる"ぼっち盛り"が特徴の「戸隠そば」、細く切ったそば切り発祥の地とされる「本山そば」、そして全国的にも珍しいとされる発酵食品の漬け物・すんき漬けを入れて食べる「すんきそば」、季節の野菜を入れた鍋に茹でたそばをさっと投じて湯がいて食べる「とうじそば」や「おにかけそば」、すりおろした辛み大根に焼き味噌を加えて辛つゆでいただく「高遠そば」、「高嶺ルビー」という赤い花の咲く蕎麦を使って作られた「赤ソバ」等々、県内にはたくさんのそばがあります。また今月25日まで戸隠のそば処約20店では、半ざる券5枚2,000円で食べ歩きができる「半ざる食べ歩きそば手形」を発行するなど、「戸隠そば祭り」が今年も行われています。
生産量では山梨県や北海道には及ばないものの、品質の高さではここ数年国内外のコンテストで数々の受賞を誇る長野県産のワイン。最近のワイン人気も手伝って、10月27・28日に行われた塩尻ワイナリーフェスタでは、県内外から2日間で5,000人もが訪れ、塩尻産ワインを楽しみました。
塩尻のワイン造りは、よりよい品質を求めて以前より手間を掛けた生育が行われる一方、ワイン用ブドウの価格が据え置かれていることや、生産者の高齢化の影響で、ブドウの生産量は減少傾向にあるようですが、これからも大勢の皆様に、県内産のワインの美味しさを味わっていただきたいものです。
総務省による家計調査では、昨年1世帯あたりのパンの購入金額が米を追い越す結果になりました。けれど10月に限ってみれば1世帯あたりの米の購入金額は他の月の2倍となっているように、多くの人が美味しい新米の登場を心待ちにしていたのではないでしょうか。また一年を通して美味しいお米を味わおうと、炊き込みご飯や混ぜご飯など美味しく食べる知恵をはたらかせてきた先人たちには感心させられるとともに、そうした食事を楽しむことができる日本はとても素敵だと思うのです。
場所によっては紅葉のピークを過ぎているところもありますが、まだまだ県内では今月下旬まで紅葉が楽しめるところが多くあります。美味しいだけじゃない、体にもいいリンゴと合わせて、どうぞ錦秋の信州をお楽しみください。
[巻頭のカバー写真]澄んだ秋の空気と冠雪した山々が美しい信州の朝を演出します。塩尻市片丘の高台から眺めた北アルプス。どっしりとした穂高連峰、常念岳の間に槍ヶ岳も望むことができました。

*コラムはしばらくの間お休みさせていただきます。