爽やかな5月の風が吹き抜ける陽射しの下、田植え作業に勤しむ姿が各地で見られています。田んぼにようやく根を下ろした稲は、風のあおりを受けてもびくともせず、か細いながらもたくましげ。いよいよ本格的に今年の農作業が始まることを感じさせる光景です。水を張った田んぼからはカエルの声が響き、この季節の訪れを喜んでいるかのように感じられます。
畑作業も本格化し、種苗の販売場所はキュウリやナス、トマトにピーマンなど苗を求める人で賑わっていました。例年であればゴールデンウィーク前後となる野菜の苗植えも、今年は寒さの影響で遅れ気味。しかし、周囲は木々の葉が日に日に濃さを増し、街路樹に並ぶハナミズキは白や赤の花びらを風にユラユラ揺らして気持ち良さげな様子です。また、ツツジやサツキ、カキツバタなどもこの時期らしい季節の彩りを添えています。少し山沿いへとドライブすれば、目に飛び込んでくるのは色鮮やかで柔らかな若葉。どこに目をやっても心地良く感じられます。
それにしても、春先からの天気の変化はどうしたことでしょう。4月の中下旬には長野市内で観測史上初の雪が降り、以降冷え込んで突入した5月頭でしたが、先週には一転し、この時期にしてはめずらしく、長野市内で真夏日とされる31度と、全国でも最も高い気温が観測され、寒暖の差が激しくなりました。そんな気温も今週はようやく落ち着き、過ごしやすい日々となっています。
豊富な雪解け水と冷涼な気候のもとで育まれた山の幸――コゴミにタラの芽、コシアブラに山ウド、ワラビなど、いま山菜が美味しい時期を迎えています。そして信州が誇る高原野菜も、県中部の塩尻市のレタスをはじめ各地で収穫が始まっています。
県内でもトップシェアを誇るセルリーは茅野市から。この時期のセルリーは加温ハウスで栽培されるために軟らかくてみずみずしいのが特徴で、セルリー嫌いな子どもでも、ここの採りたてはペロリと食べられるほどです。ハウス栽培は6月上旬までを最盛期として、下旬からは露地栽培も始まり、およそ11月上旬まで栽培が行われる予定です。
新茶の文字を目にする季節ですね。昨今ではコーヒー人気で、「緑茶はあまり……」という方も多いかもしれません。とはいえ、爽やかな香りは新茶ならでは。新茶はひと冬越えて蓄えられた栄養を含む、みずみずしい新芽を摘んだもので、渋みや苦味が少ないわりにうま味や甘み成分のアミノ酸が多い傾向にあります。長野県内では、いま県南部の下伊那郡天龍村で、そんな一番茶の収穫が行われています。
2月4日の立春から数えて88日目、今年は5月2日にあたりますが、この日を「八十八夜」といい、この日に摘み取られたお茶を飲むと一年間無業息災で過ごせると昔から言い伝えられています。とはいっても、産地や気象条件によってその年の収穫時期は異なるもの。ちなみにこの八十八夜、この頃は春から夏へ移る節目であり、さらに“八十八”という漢字を組み合わせれば“米”となることから、農業に携わる人にとっては特別重要な日とされています。
そんな新茶をおいしく召し上がる方法は3つ! 1つめは、いつもより葉の量を多めに入れること。2つめは、少し冷ました60度くらいのお湯で入れること。3つめは、茶葉が開くように1分ほど待つことです。以上を参考に、おいしい新茶を楽しんでみてください。
県南部のJAみなみ信州(本所:飯田市)では、いよいよ竜峡小梅の収穫が始まりました。6月上旬をピークとしてその後は北上し、6月を少し入れば県北部の長野市内でも収穫が始まります。これから梅漬け作業に忙しくなりますね。
“田毎(たごと)の月”で知られる、千曲市の姨捨(おばすて)の棚田。ここで田植え前後の新緑の棚田を楽しむイベントが開催されています。これはボランティアグループ「楽知会(らくちかい)」の案内によって、1〜1.5キロ、およそ1時間半を散策するというもの。子どもからお年寄りまで安心して楽しめるコースだそうです。開催は2013年6月16日まで。予約は不要で、参加費はひとり300円。詳しくは、電話:026-275-1326へお問い合わせください。
長野市鬼無里の裾花自然園では、ミズバショウが見頃を迎えています。およそ81万本のミズバショウが群生するこの規模は、日本一ともいわれるほど。また、周辺ではこの時期、ブナの木の柔らかな葉の芽吹きも楽しめます。一部ではまだ残雪がありますので、防水性のある靴での散策をお勧めします。自然の中に身を委ねリフレッシュしてください。自然園への入園料は5月末まで大人400円。ミズバショウは6月上旬まで楽しめそうです。
ビタミンB1が豊富に含まれ、スタミナ補給と疲労回復に効果が期待される豚肉。このたび、信州の大自然のなかで育てられた、その名も「信州Aポーク」が、グレードアップしてJA全農長野から発売となりました。
今まで以上に「信州SPF豚」の美味しさにこだわり、美味しさやうま味のカギを握るオレイン酸を高めるために、飼料に国産の飼料米を加えて育てられています。その味わいは、肉のキメが細やかで柔らかく、あっさりとした食べやすさ。さらに肉のうま味が味わえると、試食会でもとても好評の豚肉です。限定販売先のA・コープにちなんで名付けられた信州Aポーク。県内のA・コープ全30店舗で販売中ですのでお試しください。
農作業シーズンを迎え、プランターでの野菜づくりを始めた人も多いことでしょう。また各地では体験農業の話題を耳にすることも多くなりました。もし機会がありましたら、農業を通じた土との触れ合いにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。見ているのとやってみるのとでは大違い。翌日は筋肉痛……、なんてことにもなりそうですが、そこでかいた汗は爽快で、また農作業後の食事は格別においしいはず。さらに、土が持つ不思議なパワーに心もきっと癒されていることでしょう。
[巻頭のカバー写真]八ケ岳が望める野辺山高原にて、ユニークなものを見つけました。牛が描かれた置物は中に牧草が入ったもの。高原野菜ばかりでなく、冷涼な気候を利用して育てられる酪農が盛んなこの地域ならではの光景です。

*コラムはしばらくの間お休みさせていただきます。